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豆知識

2017.04.04

土壌汚染問題でどうなるの!? 豊洲の不動産投資事情

土壌汚染問題でどうなるの!? 豊洲の不動産投資事情
 築地市場の移転で一躍、不動産市場の主役に躍り出た豊洲エリアだが、ここにきて盛土や土壌汚染問題などの不安要素が次々と表面化している。マンションオーナーの声をもとに、豊洲エリアでの不動産投資リスクを検証した。

ファミリー層の賃貸需要に不安の声
土壌汚染で子育て世帯に不人気


外国人観光客の増加で警戒される地域治安維持

 「築地市場が移転してくること自体が、この地域の住民にとって最大のリスクです」と話すのは、地下鉄「豊洲駅」からほど近い場所に、総戸数20戸のファミリー向け賃貸マンションを所有する豊原健一さんだ。築地市場の移転が生み出す経済効果の大きさに期待を寄せる声が多い中、豊原さんが心配しているのは、豊洲が「観光地化」することで地域に多くの外国人観光客が流入し、治安が乱れることだ。
 築地市場は日本最大の市場というだけでなく、1日に6万人以上の人々が訪れる一大観光地でもある。外国人の間でも新鮮なお寿司が食べられる観光スポットしてよく知られており、ツアーの定番コースの一つにもなっている。観光は市場の中だけにとどまらず周辺地域にも及び、商店が立ち並ぶエリアを飛び出し、マンションなどが密集する地域でも外国人の姿を多く目にする。築地市場が移転してくれば、豊洲エリア一帯も同じような状況になることは想像に難くない。もちろん、ただ観光するだけなら何の問題もない。しかし、例えば昨今話題になっている民泊で、夜間に騒いだり、ゴミの集配日を守らないなどして、住民とトラブルを起こした事例が多々報告されているように、ルールを守らない外国人観光客によって地域の治安が乱される可能性は低くはないだろう。
 また、見知らぬ外国人が頻繁に出入りすること自体に不安を抱く人も少なくない。特に小さな子供いる家庭は、色々なリスクを考えざるを得ない。入居者のほとんどに幼稚園から小学生の子供がいるという豊原さんのマンションではこの2月に、建物内に勝手に立ち入ることができないように、オートロックを導入したという。
 「実は昨年末にある入居者から退去の申し出を受けました。事情を聞いたところ、築地市場移転以降の安全面を考えて、オートロック付きのマンションに引っ越すということでした。このままでは次の退去者が出てしまうかもしれないと思い、オートロックを導入しました」
土壌汚染問題でどうなるの!? 豊洲の不動産投資事情
共働き夫婦向けのマンションが狙い目
新築の大量供給で保育園不足が加速化


高い利便性も汚染の不安拭えず

 豊洲エリアが抱える最大のリスクは土壌汚染問題だ。これはかつてここで行われていた都市ガスの製造・供給の過程で生成された副産物によるもので、土壌及び地下水の汚染が確認されている。人体に影響のないレベルにまで改善されるように、専門家による対策が行われているが、完全に人々の不安を払しょくすることはできていない。再開発に伴い次々と新築マンションが供給されているが、今後の売れ行きや販売価格は、問題の解決具合に左右されざるをえないだろう。
 特に影響が心配されるのがファミリー向けのマンションだ。マンションそのものは安全であっても、子供たちが遊ぶ公園や周辺の施設などには汚染の可能性がある。いくら盛土や土の入れ替えを行ったところで、汚染物質を完全に消し去ることはできない。地中に汚染物質が残っていれば雨水などで浮き出てくる可能性があり、また、そこで育つ植物が汚染されてしまうことも考えられる。こうした公園であえて子供を遊ばせようという親はいないであろうから、子育て世帯のマンション需要が今後どれだけ伸びるのかは不透明だと言わざるを得ない。
 ただし、JR「有楽町」駅や地下鉄「豊洲」駅まで徒歩圏内と交通アクセスに優れているため、子供のいない世帯の人気は高い。この需要に期待し、豊洲エリアに絞って不動産投資を行う丸山健二さんは「共働きの夫婦に使いやすい2LDKのマンションに投資しています。この広さであれば、ある程度所得のある単身者層の需要も取り込めるため、空室のリスクは少ないと思います」と話す。だが、豊洲エリアで2LDKは他と比べて稀少で価格が高いため、中古であっても利回り7%を超えるようなものはなかなか出てこないという。
 ファミリー層にとってもう一つ懸念されるのが、保育園が不足していることだ。待機児童は今や全国的な問題であり、豊洲も例外ではない。仮にマンション供給がこのまま続いてファミリー層の人口が増えれば、この問題はさらに拍車がかかることになる。しかし現状、これを補えるほど保育施設の整備は進んでいない。利便性に優れ、生活に必要な店舗、施設は一通り揃っているものの、子育て世帯に最も大切な保育施設は足りていない。この課題の解決が明確に示されていない現段階では、子育て世帯の需要に期待したマンション投資は危険かもしれない。
土壌汚染問題でどうなるの!? 豊洲の不動産投資事情
マンション価格は10年で15%上昇

 豊洲エリアのマンション価格そのものは上昇傾向にある。築地市場の豊洲移転計画が発表された2001年以降、同地区のマンション価格はリーマンショック後の一時的な不況期を除き概ね値上がりを続けており、2005年に49万5231円だった平米単価は、昨年9月には66万137円を記録(マンションマーケット調べ)した。しかし一方で、今後の入居需要については慎重に分析する必要がある。外国人観光客の増加に伴う治安への不安や土壌汚染、保育園不足などの問題を考えると、ファミリー層の需要だけに期待したマンション投資にはリスクが高い。単身者、あるいは夫婦共働き世帯を対象にしたマンションを主軸にしながら、問題の解決状況を見て投資を進めていく必要がありそうだ。


物件探しは2LDK中心
値上がり傾向で今が買い時
川畑哲治氏


 豊洲エリアは家賃が高い割に、街灯が少ないため夜間は暗い場所が多く、それほど治安の良い地域だという印象はありませんが、築地市場の移転で人気が高まることは確実だと思います。しかし、土壌汚染の問題もあるので、特に小さなお子さんがいるようなファミリー層の需要は決して高くないと見ています。
 以上のような理由から、現在、今ある5戸のワンルームマンションの一部を売却して、豊洲エリアのマンションへの買い替えを検討していますが、ファミリー向けではなく、2人暮らしに適した2LDKくらいの広さのものを中心に探しています。中古マンションもこれからさらに値上がることが予想されるので、買うなら今だと考えています。