加熱するアパート融資が問題になっている。新築でも満室にすることが難しく、各地で家賃収入が入らないために返済に苦しむオーナーが現れ始めた。|空室対策|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.05.01

加熱するアパート融資が問題になっている。新築でも満室にすることが難しく、各地で家賃収入が入らないために返済に苦しむオーナーが現れ始めた。

加熱するアパート融資が問題になっている。新築でも満室にすることが難しく、各地で家賃収入が入らないために返済に苦しむオーナーが現れ始めた。
金融機関による2016年の不動産向け融資は、過去最高だったバブル期の1989年を上回り、12兆円2806億円と過去最高を記録した。背景にあるのは相続対策によるアパート建設と、日銀によるマイナス金利だ。
 不動産向け融資のうち、アパートローンは前年対比21%増の3兆760億円で、統計が始まった2007年以降で最高となった。平成27年税制改正で相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、課税対象者が大きく拡大。土地の評価額を引き下げようとアパート事業を始めるオーナーが増えたことで、一気に融資額が増えた格好だ。
 一方で金融機関もアパート向け融資に積極的だ。住宅ローンに比べて金利が高く、収益の柱として魅力的なためだ。建設業者や不動産会社と連携し、融資残高を飛躍的に伸ばしている金融機関も増えた。
 ただ、この異様とも言える状況に、金融庁や日銀は昨年末から警鐘を鳴らし始めた。賃貸住宅はすでに飽和状態で、市場全体の空室率は20%近いと言われている。このような状況にあるにもかかわらず、新たな賃貸住宅を供給し続ければどうなるか。当然、空き部屋はどんどん増えていく一方だ。賃貸住宅は建設にかかるコストを家賃収入で返済していくのが基本的なスキームだ。空室では家賃が得られず返済もできず、最終的には不良債権になってしまう。新築であれば一定期間、不動産業者や建設業者が家賃を保証(サブリース)してくれるケースがあるためすぐに経営が行き詰まるということはないだろう。しかし、家賃が入らないままだといずれ、サブリース業者自体も首が回らなくなる。最近では、保証賃料の不当な値下げが引き金となり、大手アパート業者が集団訴訟を起こされたことが大きなニュースになった。
 金融庁はアパートローンに限らず、融資は事業性を評価して行うように金融機関を指導している。しかし、昨年行われた3兆円超のアパート融資のすべてが、この指導に従い、将来的な事業性まできちんと分析して行われたものとは到底思えない。金融庁はすでに実態調査に乗り出しているというが、状況によっては今後のアパート融資に大きな影響が出るかもしれない。