ビルの空室対策 わずかな投資でできる多目的スペースが人気|空室対策|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.05.01

ビルの空室対策 わずかな投資でできる多目的スペースが人気

ビルの空室対策 わずかな投資でできる多目的スペースが人気
再開発に伴い、大型の新築ビルが次々と建設されている東京都心部。しかし一方で、オフィスビルの空室率が一気に上昇する可能性が指摘されている。
東京都新宿区の一角、表通りを一本入った裏通り。最寄り駅から8分程度と、決してロケーションが悪いわけではないが、実はこの通りにあるオフィスビルの多くは今、「空室」に頭を悩ませている。
 2010年以降、より駅に近い場所には大型の新築ビルが次々と竣工した。最先端のビル群はたちまち人気となり、多くの企業が入居した。煽りを食ったのは周辺の築20年を超える中小ビルで、通りのビルも例外ではなかった。少しずつ空室が目立つようになり、今ではテナントの半分が空室状態というビルも珍しくない。もちろんただ手をこまぬいているわけではなく、入居条件を引き下げるなど、一定の努力はしている。しかし、これといった特徴のないビルが入居条件を緩和したところで、できる集められるテナントには限界がある。かといって賃料の引き下げばかり繰り返していては本末転倒だ。それよりも何か別の形で収益を上げる方法を考えるべきだろう。
 ビルの空室対策として今、人気を集めているのは「多目的スペース」だ。自習や会議、趣味の教室など、利用者が色々な形で利用できるフリースペースとして貸し出す方法だ。インターネットなどで利用者を募集し、30分あるいは1時間単位で部屋を貸し出す。このビジネスの一番のメリットは初期投資が少ないことだ。部屋のしつらえさえ整っていれば、他に用意するのは机と椅子、インターネット設備程度。もともといるビルの管理人が鍵の受け渡しをするため、新たに受付スタッフを雇う必要もない。新しいテナントが決まればすぐに撤去できるため、一時的な運用にも適している。レンタルスペース専用の募集サイトを使えば、利用者集めもスムーズに行える。
 周囲にオフィスが多く点在している場所では、貸会議室も注目だ。最近は経費削減で大きな会議室を持たない企業が増えているため、貸会議室市場そのものは拡大傾向にある。街中を歩いていても「貸会議室」の看板を目にする機会が増えているはずだ。プロジェクターやテレビモニター、会議用テーブルなどが必要になるため、フリースペースと比べると投資は大きくなる。もしも自分で運営するのが難しい場合は、貸会議室の専門会社に任せるのが良いだろう。

空室が目立つのは築年数の経過したオフィスビルだけではない。駅前にもかかわらず何フロアも空室状態の雑居ビルも増えている。なぜか。一つの要因として考えられるのは、総合居酒屋の衰退だ。
景気が低迷していた時代には、「和民」や「庄や」に代表される低価格で和・洋・中、豊富なメニューを取り揃えた総合居酒屋チェーンが大いに流行った。しかし景気の回復とともに人々はより専門的な店を求めるようになり、総合居酒屋は次第に衰退。「駅前にあったはずの大手チェーンがいつの間にかなくなっていた」という経験は、誰にでも一度はあるはずだ。複数のフロアをまとめて借りてくれるテナントなど簡単に見つけられるものではない。駅前にも関わらず何フロアも空いたままの雑居ビルがあちこちで増えたのは、こうした事情によるものだという。
では、外食以外に複数のフロアを借りる可能性がある業態にはどんなものがあるのか。もっとも分かりやすいのはインターネットカフェだろう。大手チェーンの場合、ビル一棟を丸々インターネットカフェにしているケースもある。始発待ちの一時休憩などで利用するユーザーも多いことから、駅前の空室雑居ビルとの相性は良い。実際、ある上場企業グループのインターネットカフェ会社の担当者によれば、空室に悩むビルオーナーからの問い合わせが増えているという。
既存ビルの空室対策はまだまだ他にもある。次号では第2弾をお届けする。