民泊新法、年間180日の運営しか認めず|不動産|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.09.04

民泊新法、年間180日の運営しか認めず

民泊新法、年間180日の運営しか認めず
不動産活用の新しい手法として注目される民泊。新法が可決されたとはいえ、まだまだ解決すべき課題は多い。最新動向をまとめた。
グルーバル化に向けホームステイ型推奨

 2020年東京オリンピック開催に向け、政府はさまざまな課題解決に取り組んでいます。その一つが宿泊施設不足の解消で、その対策として進めてきたのが民泊に関する法整備です。そして6月9日、住宅宿泊事業法、通称“民泊新法”が参院本会議で可決、成立しました。早ければ来年1月には、これまで旅館業法の枠組みの中でしかできなかった民泊が、新しい法律のもと、合法的に運営できるようになります。
 新法には、民泊の運営に関するさまざまなルールが盛り込まれていますが、今回は特に「年180日以内」という日数制限にについて考えてみたいと思います。
 これは何を意味するかと言うと、民泊として自宅やマンションなどを旅行者に貸し出せるのは、最大でも年間180日までしかできないということです。つまり1年のうち半分は、自宅ないしその他の目的として利用しなければなりません。なぜ、わざわざこのような規制を設けたのでしょうか。
 民泊はそもそも2つのタイプに分類されます。1つは貸主が家に住みながら、一部の部屋を旅行客に貸し出す「ホームステイ型」です。単に寝る場を提供するだけでなく、一つ屋根の下で一緒に食事をとったり会話したりする中で、貸主と宿泊者の異文化交流ができることが最大の魅力です。もう一つは「投資型」と言われるもので、誰も住んでいない住宅を貸し出すものです。貸主、もしくはホストと呼ばれる代行業者が立ち会うのは、鍵の受け渡し時や退室時だけで、ほとんどホテルと同じような感覚です。会話もマニュアルに定められたこと以外、ほとんどすることはないと思います。日本では今、盛んにグローバル化が叫ばれていますが、残念ながらそれに対応できるだけの十分なインフラや教育制度がまだ確立されていません。小学校での英語必須化、科目化も来年度以降の話ですし、外国語教室の利用率も低水準に留まっています。そこで政府は、ネイティブの外国語に触れることができるホームステイ型の民泊を推進し、国際化の一助としようと考えたのではないでしょうか。

半年は短期貸し賃貸として運用

 投資型の民泊は、「180日以下」という制限の下ではほとんどメリットがありません。稼働率はどんなに良くても50%ですので、事業として成り立たない可能性すらあります。ただし、投資型の民泊ができないのかと言えばそうではありません。要は民泊として運営する日数を180日以下に抑えて、残り185日を別の方法で運営すれば良いわけです。最も相性が良いと考えられるのはマンスリーマンションです。家具、家電などを置いたままで転用できますし、大雑把に言ってしまえば両者の違いは宿泊期間だけです。主な借り手は外国人旅行客である民泊に対し、マンスリーはビジネスユースが多いため、マニュアルなどは別々に用意する必要がありますが、運営方法もそれほど差異はないと考えられます。両者をうまくミックスすれば、投資用民泊もきちんと事業化できるでしょう。
 余談ではありますが、自治体によっては「180日以下」という制限を条例で引き上げる動きも見られます。また、簡易宿泊所の許可を取得したり、国家戦略特区(東京都大田区、大阪府の一部、大阪市)内であれば、民泊新法に縛られずに民泊を運営することができます。全国優良リフォーム会員の中には民泊の運営実績が豊富な会員もおられますので、ご興味ある方は(一社)優良リフォーム支援協会にお問い合わせ下さい。