120年ぶりの民法改正で保証人のなり手が激減|賃貸経営|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.12.04

120年ぶりの民法改正で保証人のなり手が激減

120年ぶりの民法改正で保証人のなり手が激減
家賃債務保証サービスの需要高まる可能性も

 120年ぶりの改正が検討されている民法ですが、賃貸住宅業界にもさまざまな影響を与えることが懸念されています。改正のポイントについてまとめました。
 民法は、市民の生活や財産、家族関係に関することをまとめた法律です。今回、改正が検討されているものの中で、賃貸借契約に特に大きな影響を与えるであろうと考えられているのが、「連帯保証における極度額の明記」です。
 これまでの民法では、連帯保証人は具体的にいくらの債務保証を負うのか、書面に明記することを義務付けられていませんでした。そのため、債務者の支払いが滞った際に、連帯保証人が想定以上の金額を請求され、トラブルになるケースが多発していました。そこでこうした事態の発生を防ぐために新法では、請求できる金額の上限を極度額として書面に明記するように義務付け、これがなければ契約が無効となるように規定するように調整されています。これは新法施行後の契約だけでなく、すでに締結されている契約を更新する場合にも適用されるようです。
 それでは、この極度額の明記義務化が賃貸借契約にどのような影響を与えるのでしょうか?新たに入居契約を締結する場合、入居者はオーナーもしくは管理会社から保証人を立てることを求められます。未成年者の場合は親、成人であれば兄弟や友人などが立てられますが、新法施行後は保証人が負うべき滞納家賃金額の上限が明記されるようになります。例えば、家賃10万円の物件を半年保証する場合、書面には限度額60万円と明記されるわけです。借金の保証人と比べるとまだ、精神的な負担は軽く感じられますが、高額な物件になればなるほど金額は高くなりますし、限度額をいくらにするかはオーナー・管理会社によって異なりますので、100万円を超えるようなケースが出てくることも考えられます。
 こうなると例え身内であっても、今までのような感覚で保証人を頼むことができなくなりますし、頼まれた方も簡単に引き受けることができなくなります。それだけ金額の明記という行為は、大きな精神負担になるのです。限度額の明記義務化により、一気に入居のハードルが上がってしまうかもしれません。
 当然ながらこれは、オーナー・管理会社にとっても大きな問題です。せっかく入居希望者が来ても、保証人を見つけることができないために入居を断らざるを得ないケースが出てくるかもしれません。「保証人不要」にするという方法もありますが、万が一の事態を考えるとこれはリスクが大きいと言わざるを得ません。それでは極度額を低くしたらどうでしょうか?例えば2ヶ月程度に抑えた場合、家賃10万円の物件であれば極度額は20万円となります。これならば払おうと思えば払える金額ですので、保証人のなり手は見つかるかもしれません。しかし、この入居者が何度も滞納を繰り返したらどうなるでしょうか?金額が少ないとはいえ、滞納が発生するたびに保証人に請求するのは難しいと思います。家賃滞納を理由に退去させることもできますが、いくら何でも2カ月で退去させることは難しいでしょう。立ち退かせるのには少なくとも半年くらいの期間を見ておく必要があるので、極度額を2ヶ月分しか設定していないと、差し引き4ヶ月分の賃料を誰が負担するのかという問題が生じます。こうしたリスクを考えると、やはり極度額は最低でも賃料6ヶ月分くらいには設定しなければならないでしょう。
 一方でこの民法改正を機に、需要が飛躍的に高まるだろうと予想されているのが家賃債務保証サービスです。家賃債務保証会社が滞納家賃を立て替えてくれるので、保証人不要で入居を受け入れることができます。ただし、家賃債務保証会社の中にも保証人を求めるケースもあります。これだと賃貸借契約と同じように、保証人を立てられないケースが出てくる可能性がありますので、利用するのであれば保証人不要プランのある家賃債務保証会社を選択する必要があるでしょう。