闘将野村「新経営論」第18回|インタビュー|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.06.18

闘将野村「新経営論」第18回

闘将野村「新経営論」第18回
殴った方が勝者なのか?殴られた方が勝者なのか?

-お金の管理は奥様がされていたのですか。

野村 ギャラでも給料でもみんな振り込みだから、俺の手元には一銭も入らない。だから100%奥さんが管理してた。俺貧乏、奥さん金持ち。

-その方がちゃんと財テクされているのではないでしょうか。

野村 「ちょっと金くれ」と言うと、「何でお金いるのよ!カード持ってるじゃない!女でしょ!」ってピンポーンだよ(笑)

-それでは浮気の一つもできないですね。

野村 もう浮気する元気もないけどね。

-若い時はまだあったのでしょうけど。

野村 動脈瘤やってもうほんとに駄目になっちゃった。

何度か対談しているが、野村監督は決して偉ぶらないし、上からものをいうこともない。謙虚にどんな質問にも答えを返してくれる。私と監督の歳は40近く違うが、3時間話していてもまったく飽きることがない。面白いのである。
監督時代、新聞やテレビに取り上げてもらうために、マスコミを飽きさせない話題を提供し続けることができたのも、この話術(営業力)があるからかも知れない。

-監督時代は、キャッチャーに癖の見方ややり方などを教えてきたのですか。

野村 教えるも何も、興味持たないもん。

-それでは無理ですね。

野村 ベンチで「真っすぐ!」「カーブ!」って言っているけれど、「どこで分かるんですか?」って聞いてくる。だから「こうなったら真っすぐでこうなったらカーブだっ!」って教えてやるの。「本当だ!有難う御座いました!」ってバッターボックスに立って、それに合わせて打つのかなと思ったら、見逃しの三振で帰って来て、「何やってんだお前!みんな癖出てるじゃないか!」って言ったら、「一生懸命癖見てたらボールがここまで来てたんです」って(笑)。「馬鹿かお前はっ!」って。笑っちゃったなぁ、ああいう癖を利用するっていうのは慣れなんだよ。今だに俺ピッチャー見てると癖探ししてるよ。

 社員教育には2つのパターンがある。「教えて下さい」「アドバイスを下さい」と言って自ら動く者。また、言われないと動かない者。結果的に同じ仕事をしていてもこの差は大きい。
 自ら動く者は常に考えているから、疑問が生まれ質問が生まれる。しかし与えられないと動けない者は、考えていないから動けないのである。自ら動けない者に「頑張って仕事しようよ」「自分のためになるから」などと言っても無意味である。そのような社員がいるのであれば、辞めて頂くのが一番だが、それが無理であるのなら、歯車の一部となるような成長の期待できない単純作業をして頂くしかない。それが現実なのである。

野村 相手から極めるっていうきっかけを作ってくれた先輩がいるんだけども、打てなくてロッカーで頭抱えてたら、「野村!殴った方は忘れても殴られた方は忘れないぞ」って言われて。あ~そういうことかっていう。自分の方からしか相手を見ていなくて、相手から自分を見るっていうことをしていなかった。それで相手の変わり方、変化が見えるようになってきた。

 今は一つのものをみんなで分け合うような時代ではない。高度経済時代は、みんなが利益を出してみんなが潤った。今は違う。
 ネットを叩けば、一番安く商品を販売しているお店が出てくる。誰も2番目のお店で買おうとは思わない。飲食も口コミサイトを見れば美味しいお店がすぐに分かる。お客様が簡単に比較できるようになった時代、1番の会社とそれ以下の会社の差は、見た目以上に大きいのだ。今は、1番の会社がほとんどの利益を持っていく勝者であり、2番目以降は敗者なのである。

勝者は忘れてはならない。敗者のすべてが敵(ライバル)になることを。