相続不動産相談所「駐車場は相続対策になるのか?」|空室対策|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2018.08.06

相続不動産相談所「駐車場は相続対策になるのか?」

相続不動産相談所「駐車場は相続対策になるのか?」
賃貸経営と駐車場、どちらの優遇措置が有利?

 先日、大阪の地主さんから、「相続対策で駐車場経営を始めた」という話を聞きました。理由は、「初期投資が少なくて済むから」というものでした。駐車場経営は確かに、賃貸住宅を建てるのと比べると、はるかに少ない資金でできる事業です。しかし、相続対策としてはどのくらいの効果があるのでしょうか。
 通常、何かしらの事業を行っている土地は「特定事業用宅地」として扱われるため、相続の際に80%の減額措置を受けることができます。アパートやマンション経営をしている場合には、もちろんこの特例が適用されます。しかし、駐車場も同様の措置を受けられるかと言えば、実はそうではありません。同じ土地を活用した事業であっても、“単に土地を貸しているだけ”と見なされ、「貸付事業用宅地」として50%の減額しか受けることができないのです。賃貸経営と比べると、税負担額は大きく増えます。
 しかし、目先の数字だけを見て、何でもかんでもアパート・マンションにすれば良いというわけではありません。固定資産税の評価は入居状況よって大きく変わります。空室が多いと物件は評価額が上がり、その分、相続税も高くなります。したがって、賃貸需要が見込めない場所では、高い節税効果を得ることはできません。例え「事業用宅地」が適用されないとしても、長期的に見れば駐車場にしておく方がメリットは大きくなる可能性があります。投資回収期間も、マンションのように億単位の投資が必要ない分、短くて済みます。

やってはいけない青空駐車場

 ただし、どのような場合においても、ロープや砂利などで区分けしただけの、いわゆる「青空駐車場」にすることだけはあまりお勧めできません。一番の理由は、いくつかある駐車場形態の中で、青空駐車場だけは「貸付事業用宅地」の適用すら受けることができないからです。

「なんで青空駐車場だけ優遇措置がないのか?」

と不思議に思うかもしれません。決め手となるのは、構築物の有無です。
 例えばコインパーキングをやるためには、精算機やストッパーなどの設備が必要です。将来的に他の事業に転用したり、あるいは売却したりする際には、設備機器を撤去して更地に戻さなければなりません。一方、構造物のない青空駐車場では、そうした手間暇は一切かかりません。売ろうと思えばいつでも売ることができるため、更地と同じだと判断されるのです。更地は特例の適用を受けることができませんので、原則的に相続税が減額されることはありません。
 当然ながら、相続が発生してから慌てて設備を置いてもまったく意味がありません。もしお持ちの土地を青空駐車場にしている方は、どんな事情であれ、万が一の事態に備えて、今のうちに何かしらの対策をしておくことをお勧めします。わざわざ大掛かりな設備を設置する必要はありません。コンクリートやアスファルトなどで舗装したり、あるいは砂利を敷くなどして、継続的に事業を行う意思が確認できるようにしておきさえすれば、小規模宅地等の特例を受けることはできます。
 一言で駐車場と言っても、どんな形態のものをするのかによって得られる節税効果は変わります。お手持ちの不動産についてのご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。