「フラット35」前代未聞の不正利用が発覚!金融機関の関与は本当になかったのか!?|企業|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.06.03

「フラット35」前代未聞の不正利用が発覚!金融機関の関与は本当になかったのか!?

「フラット35」前代未聞の不正利用が発覚!金融機関の関与は本当になかったのか!?
不正利用の数はわずか3年で150件

 一体、不動産業界のモラルはどうなっているのか。レオパレス21による建築偽装問題が冷めやらぬ中で、令和になって早々、また新たな不正事件が発覚した。複数のメディアが報じたところによると、都内のマンション販売会社従業員が、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型住宅ローン「フラット35」を不動産投資目的に不正に利用。機構は不正の全容の把握するため、調査に乗り出したという。
 「フラット35」は、住宅購入のための資金を、35年の長期にわたり低い固定金利で借りられる融資制度だ。2017年度には新築・中古の戸建とマンションを合わせ、約7万8000件の利用があった。石井啓一国土交通省が5月7日の記者会見で「本来の目的を逸脱した利用は遺憾だ」と語ったように、対象はあくまで実需目的の住宅購入。転勤などのやむを得ない事情で賃貸する場合を除き、投資目的の利用は御法度だ。前代未聞の事態の発覚を受け、「フラット35」取り扱い最大手のアルヒ(東京都港区)が融資審査の厳格化を発表するなど、早くも影響が出始めている。 
 販売会社の従業員が不正を始めたのは2015年頃から。投資セミナーと称して年収300万円前後で借金のある人々を集め、「借金が帳消しになる」と謳って不動産の購入を勧めたとされる。約3年間で販売した不動産はおよそ150件。不正には数名の仲介業者も関わっていたが、内部通告により露見。販売会社は不正を主導した従業員を解雇するとともに、事の次第を機構に報告した。
 それにしても腑に落ちないのは、これだけの数の不正が、3年間も発覚せずに見過ごされてしまっていたことだ。「フラット35」を不正利用して不動産を購入したのは、ほとんどが独身者。融資の窓口となった金融機関はわずか3ヵ所だったというから、1カ所あたり50人もの独身者に融資を実行していたことになる。不正を行った元従業員は「金融機関の担当者はこの件に関与していない」と証言するものの、果たして本当にそうだろうか。直接関わっていなかったとしても、これだけの数の独身者が立て続けに、しかも同じ業者を窓口に融資を申し込んできたら、普通は何かしらの異常性を感じるはずだ。審査の際に「自分で住む」と申告されていたとはいえ、「まったく気付かなかった」というのはいくら何でも不自然だ。本当は不正の可能性を把握していたにもかかわらず、あえて意図的に気付かないふりをして見逃してきていたのではないかと勘繰りたくなってしまう。
不正は他にもあるのか?注目される機構の対応
 中古マンションの販売を手掛けるある不動産業者は、今回の事件を「氷山の一角に過ぎない」と指摘する。機構が調査に本腰を入れ、過去の融資案件を片っ端から調べたら、驚くような数の不正が出てくるかもしれないと言うのだ。というのも、「フラット35」を不動産投資に不正利用するスキームは、実はかなり前から業界内で知られていたからだ。

「『フラット35』は他の不動産ローンと比べて金利が低く、しかも長期固定。「自分で住む」とさえ言えば簡単に融資が下りるのだから、こんな楽な商売はない。一回やったらやめられないだろう。もちろん、ほとんどの業者は不正に手を染めたりはしないが、やったのが1人だけということはありえない。購入者が主体的にやっているケースもあるはずだ」

 機構はこれから、どのような対応をとっていくのか。「フラット35」の存在意義すら問われかねない事件だけに、今後の動向に注目が集まる。