闘将野村「新経営論」第25回|対談|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.06.24

闘将野村「新経営論」第25回

闘将野村「新経営論」第25回
新入社員とメジャーリーグ(後半)


-現役当時、大リーグに挑戦したいという気持ちはなかったのでしょうか。

野村 今は逆輸入で、日本の野球をメジャーがやってんじゃない。日本の戦術でいっているから、「日本人はそんなに考えてやっているのか」とビックリしているんじゃない?
ヤクルトで監督やったときにキャンプで手伝いにきてくれたコーチが3人ほどいて、その中にパット・コラレスっていうメジャーでコーチをやってたのがいたんだよ。それで休憩時間にいろいろ話しして、昔と随分違うって分かったの。俺が不思議に思ったのは「日本の選手が何でメジャーリーグでバリバリ働けるんだってこと」で、それが聞きたかった。そうすると俺がやっていた頃のメジャーって16チームで、今は30チームもある。16チーム時代だと間違いなくマイナーの選手が、今は大きな顔してメジャーでやってるんだよ。だから選手レベルが下がっているということだった。
だけど日本の選手のレベルも上がっている。我々の時代はメジャーの野球の試合を観る機会はまずないじゃん。今はBS放送でも何でも、メジャーの真剣勝負観れるじゃん。当時は、見て学ぶということができなかったのよ。やって学ぶしかなかったからね。メジャーみたいなのは先入観があって遠い地球の裏側だと思っていたから、あのON(※1)でもメジャーだっていうと頭おかしいと思われた時代だから。
それでメージャー単独チームと日米野球をオールジャパンでやるじゃん、あの400勝投手のカネヤン(※2)でもコンコン打たれて、江夏(※3)も同じように打たれて真っ直ぐが通用しないっていう。向こうは真っ直ぐが早いのはいくらでもいるわ。俺もキャッチャーやっていて本当にすごいなと思ったもん。

-何を投げさせても打たれてしまったのですか。

野村 特にストレート。どんなバッターでも通用する“変化球低めに”っていうのしか通用しないっていうのがキャッチャーやっていての実感。

-大リーグの選手を見ていて、「これは全然ものが違うな」というふうに感じたのでしょうか。

野村 日米野球やっていて、それこそメジャーリーグは力が全然違うし、遠い世界だなって思ったよ。だから当時メジャーでやるなんて思う人なんて誰もいないよ。今は日本人も簡単に行けるようになって大きな顔してる。メジャーは夢の世界だったのにガッカリだよ。

『井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る』という言葉通り、当時の野村監督は、海を渡ったメジャーリーグのことを知る術はなかった。けれども、メジャーの選手よりも野球の雄大さ・奥深さは知っていたのだろう。
私の今いるところは、メジャーリーグなのか、それとも井の中の蛙なのかは分からないが、もしかしたらさらに大きな海があるかもしれない。そう思うと、もっと泳ぎの練習をしておかなければと考えてしまう。

※1 王貞治氏、長嶋茂雄氏
※2 金田正一氏
※3 江夏豊氏