TATERU、上場前から融資資料を改ざん 信頼失墜、業務停止でささやかれる倒産危機|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.08.12

TATERU、上場前から融資資料を改ざん 信頼失墜、業務停止でささやかれる倒産危機

TATERU、上場前から融資資料を改ざん 信頼失墜、業務停止でささやかれる倒産危機
問われる主幹事証券会社の責任

 もはや、“時代の兆児”ともてはやされていた頃の面影はどこにもない。顧客の融資関連資料を改ざんしていた投資用アパート大手のTATERU(東京都渋谷区)が6月26日、国道交通省から業務停止命令を受けた。期間は7月12日から18日の1週間。これを受け、不動産業界では同社の倒産危機がささやかれ始めている。
 調査報告書によると、問題となった改ざんには31人もの社員が関与。画像ソフトを使ってネットバンキングや年収などを不正に水増しし、金融機関から融資を引き出していた。その数は350件にも上るという。中には顧客に知らせずに、勝手にデータを改ざんしたものも多数含まれていた。上場企業による、会社ぐるみとも受け取られかねない規模の不正だけに深刻だ。
TATERUは2006年、福岡で創業されたインベスターズを前身とする不動産会社。自社開発のプラットホームを使って投資家と土地をマッチングさせるビジネスモデルで急成長を遂げ、2015年に東証マザーズに上場。翌年に東証一部に市場変更した。サッカーの本田圭佑選手をイメージキャラクターに起用したテレビCMで積極的な営業活動を展開し、改ざん発覚直前の2017年12月期の売上高は前期比77%増の670億円を記録した。
 一部報道によると、一連の改ざんが行われるようになったのは2010年頃から。上場前に一度、金融機関に不正が発覚して取引きが停止された時期があったようだが、同社は「改ざんは担当営業マンが独断で行ったものだ」として、会社ぐるみの不正を否定。しかし、改ざんはその後も止まることはなく、発覚直前まで続いていたという。
 こうなると同社の上場にも疑問符が付く。改ざんの積み重ねによって作られた売り上げが上場時にどの程度あったのかは不明だが、そもそも不正を働くような企業に上場の資格はない。同社の経営陣や改ざんに関わった社員は処罰されてしかるべきだが、不正を見抜けずに上場を指導してしまった主幹事の証券会社も「知らなかった」では済まされない。今どき、上場会社の粉飾決算は珍しいものではないが、不正で業績を伸ばし、上場したという話は過去にほとんど聞いたことがない。証券会社も、同社の株を購入してしまった投資家に対して、きちんとした説明を行うべきだろう。ちなみに株価は不正発覚後に大暴落。約半年で7分の1以下にまで落ち込み、7月頭の時点では200円前後の値を付けている。

頼みの管理料収入も先行きは不透明

 不正発覚によるブランドイメージの低下で、2019年1~3月期の連結決算は目を覆いたくなる散々な結果となった。売上高は前年同期比68%減の46億円、営業損益は前年同期6億円の黒字から47億円の赤字に、また最終損益も60億円の赤字に転落した。業績の悪化を受け、同社は販売用不動産の一括売却や連結子会社の株式譲渡を進めるなど、経営再建に必要な事業資金の確保に動いているが、道のりは険しいと言わざるを得ない。売上の大部分を占めていた投資用不動産の販売事業は、金融機関からの不動産融資が見込めない現状では、ほとんど機能することはないだろう。そもそも、今の同社で不動産を購入しようと考える投資家がいるとは思えない。
頼みの綱は、約2万戸あるとされる管理物件だが、「倒産危機すらささやかれている同社にこのまま管理を任せておくのは危険だ」と考えるオーナーがいてもおかしくはない。むしろそう考える方が自然だ。仮に管理離れが進むようなことになれば、立て直しのチャンスはますます遠のく。
 TATERUは今後どうなるのか。倒産危機がささやかれる一方、水面下では大手資本への身売りなども噂される。独特のビジネスモデルに対する評価自体は高いため、大資本のもとで経営陣を刷新して再スタートを切れば、もしかしたら早期の復活もありえるかもしれない。いずれにせよ、危機回避には相当な荒治療が必要そうだ。