直撃取材!不動産大手会社の不正を暴く!(前編)|知識・教養|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.09.02

直撃取材!不動産大手会社の不正を暴く!(前編)

直撃取材!不動産大手会社の不正を暴く!(前編)
わざと大幅減額を迫り保証契約を打ち切り!
犯罪するすれの行為に本紙記者も驚愕


不動産業界で相次ぐ大手企業による不祥事。業界の事情に詳しいある専門家は「これは氷山の一角に過ぎない。混乱はまだまだ続くだろう」と警鐘を鳴らす。果たして業界の健全化はいつ実現するのだろうか。今回は、ある賃貸アパート大手の元社員2名に取材し、その驚くべき業務実態から業界にはびこる闇に迫る。

-はじめに、お二人はどのような仕事に従事していたのかを教えて下さい。

A 私は大阪エリアで、土地を持っている地主さんのところに行ってアパート建築の提案を行う仕事をしていました。勤務期間は約5年、その間に11棟のアパートを建ててもらいました。

B 5年ほど営業の仕事をした後、管理業務を行う部署に異動しました。そこでさらに5年勤めた後、独立して今は大阪市内で小さな不動産会社を経営しています。当時の担当エリアは兵庫県でした。

-今、世間では大手企業による不祥事が相次いで発覚しています。お二人が務めていた会社も、かねてから良くない噂が色々とありましたが、実際に仕事に従事している間に不祥事や不正、モラルに反した行為などはありましたか?

A 正直なところ、数え上げたらキリがありませんね。これは不祥事と言うよりはモラルを逸脱した行為だと言えると思うのですが、アパートを提案するときに使う資料が、とにかくもう無茶苦茶な内容でした。特にひどかったのが向こう25年の収支予測。デタラメの数字を並べ立てていて、それでも25年後にはきっちり返済できますよという内容になっていました。家賃は時間の経過とともに下がっていきますから、普通は年を追うごとに賃料収入は減っていきます。ところがその会社の資料はそうはなっていなくて、家賃の下落を考慮せずに収支予測を立てていました。当然、やってみたら「話と違う!」ということになります。それが原因でオーナーからクレームの電話が入るなんてことは、もう日常茶飯事でしたね。

B 私はやったことはないのですが、同僚が上からの指示で、同じオーナーに2棟目を建ててもらうために、下請業者を使って1棟目が満室になったように偽装していました。オーナーが契約書に判子を押したら入居していた下請業者は全員退去。慌てたオーナーは契約の解除を求めるも、「もう業者を手配してしまったので」と言って聞く耳をもたず、そのまま強引に工事を着工してしまいました。確か完成してから1年以上、満室にならなかったと思いますよ。

-建築偽装が大きな問題になっています。今回はたまたま大手2社で問題が発覚しましたが、世の中にあるすべての物件を調査したらとんでもない数の違法建築物件が出てくるだろうと指摘する有識者もいます。

A 我々の勤めていた会社の建物は昔から質が悪いと言われていたので、何かあるなとはずっと思っていました。しかし、営業の人間は建築のプロではありませんし、工事中の建物を見たところで何がどうなっているかなんて分かりません。だから僕個人としては怪しいとは思いながらも、建築偽装を疑ったことはなかったですね。

B 私も同じですね。それよりも管理の仕事に携わるようになってからも、色々な問題を目にしました。特に気になったのが露骨な中抜きです。例えば雪の重みなどで雨どいが壊れたとします。その会社が管理する物件では、オーナーが自分で業者を手配して壊れた箇所を修理することができません。必ず指定業者が直しに来ます。修理そのものは何の問題もないのですが、とにかく修理代が高い。雨どいの修理なんて部材代も含めて数万円もあればできてしまいますが、その会社を経由すると10万円を超えます。高いのはそれだけその会社の利益が上乗せられているからです。

A 「おたくは高いから自分で業者を手配する」なんて言おうものなら、「それならうちは管理をやめる」と平気で言いますからね。最後はオーナーも受け入れるしかありません。一時期、アパートの屋根に太陽光を設置するのが流行りましたが、これもやる場合も会社を通さないといけませんでした。オーナーが自分で安い業者を見つけてきて「ここに頼みたい」と言っても全部だめ。高いと分かっていても、結局はその会社の指定業者を使うしかありません。あるオーナーは売電で多少利益が出ることを期待していたのに、設置費用の償却するままならない状態だそうです。

-オーナーさんを取材していてよく聞くのが、借り上げ賃料の値下げです。中にはいきなり何万円も下げられたなんて方もいましたが、実際のところどうなのでしょうか?

B 私も何度か、上から言われて減額交渉をしたことがあります。一番ひどかったケースでは、6万円だった保証賃料を5万円に下げました。1000円、2000円というなら話はまだ分かりますが、いきなり1万円はさすがにきついですよね。今思い返せば、立場上、仕方なかったとはいえ、本当に申し訳ないことをしたなと言う気持ちです。

-そもそもなぜ、減額をする必要があるのでしょうか?

A それはアパートを売るために、家賃を保証しているからです。その会社は、保証している金額よりも少し高い賃料で部屋を貸し出すので、入居者がいる部屋は利益が出ます。ところが空室だと丸々、家賃を持ち出すことになってしまいます。だから入居率の悪い物件は保証金額を下げないと、大赤字になってしまうわけです。

B そもそもアパートは安普請で品質が良くありません。さらに借り手が付きそうにない辺ぴな場所でもお構いなしに平気で建てているので、なかなか満室になりません。最初のうちはアパートを売った利益があるので、多少は我慢もするでしょうが、それも長続きはしません。限界点に達すると、強引にでも保証している家賃を減額しようとします。

A アパートの建築契約をする際に、一定期間は借り上げ賃料の減額はしないと約束しているのですが、それも関係ありません。

-オーナーは契約をたてに、断ることはできないのでしょうか?

B もちろん、みなさん最初は「話が違う!」と言って抵抗します。しかし、それで引き下がるような会社ではありません。「市場環境が想定をこえて悪化した」とか「他のオーナーはみんな納得してくれた」とか、本当だか嘘だか分からないことを色々言って説得にかかります。それでも駄目なら、「首を縦に振らないのであれば、もう結構です。今いる入居者を他の物件に移して建物をお返しします」と契約の解除を通告します。ここまで言われてしまったらオーナーはもう抵抗できません。ほとんどの方は泣く泣く減額要求を飲むことになります。

A 私が知っているオーナーは最後まで抵抗し、最後は自ら契約解除を申し入れました。そうしたら本当に物件を空にされたそうです。最初聞いた時は「そこまでするか」と思いましたね。でもオーナーは契約が解消できてかえってすっきりしたと言っておられました。今は別の会社に管理を任せているそうです。

B これは当時の同僚に聞いた話ですが、中には交渉と言うより、脅しのような感じで減額を迫るケースもあるみたいです。見るからにガラの悪い人間が交渉に訪れ、「判子を押すまで帰らない」と言って夜遅くまで居座わられたオーナーもいます。

A 減額交渉も一度で終わればいいですが、中には2回、3回と減額を迫られたオーナーもいます。その方は何度もしつこく食い下がられた結果、最後はノイローゼになって入院してしまいました。

B 家賃保証の契約解除に持ち込むために、わざと受け入れることのできない金額の引き下げを要求するケースもありました。これは私も関わった事例ですが、工場移転によって賃貸需要が激減してしまった地域のアパートオーナー3名に対し、50%の家賃減額を求めたことがありました。最終的に2名はそのまま管理業務だけを請け負いましたが、1名は契約を解除、狙い通りすべての家賃保証を外すことができました。似たようなケースは全国各地で行われていたようです。

 次々に飛び出す耳を疑いたくなるような行為の数々。しかし、これはここに登場する会社に限った話ではない。似たような話は、色々な場所で聞かれる。果たして業界のモラルはどうなっているのか。後編へ続く。
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