真説 賃貸業界史 第24回「90年前に登場したトランクルームサービス」|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2020.01.27

真説 賃貸業界史 第24回「90年前に登場したトランクルームサービス」

真説 賃貸業界史 第24回「90年前に登場したトランクルームサービス」
遊休地・空室対策として注目度高まる

 空室対策や土地の有効活用の手法として何かと話題にのぼることが多いトランクルーム。不動産価格の上昇に伴い、家の居住スペースが狭くなっていることから、最近は季節物の保管場所として利用する人も多く、全国的に数が増えている。一説によると、その数は20万室にも及ぶという。今回は、そんなトランクルームの歴史について振り返る。


昭和50年代に首都圏で普及

 駅から少し離れた閑静な住宅地を歩いていると、アスファルトで舗装された土地の上に、いくつものコンテナが並べられている光景をよく目にする。都心部でも、一つのフロアをパーティションでいくつかに区切って、「トランクルーム」として貸し出しているビルが増えている。今では目にする機会も多いこの「トランクルーム」は、いつ頃誕生したのだろうか。
 始まりは昭和初期にまで遡る。昭和6年に、ある倉庫業者が所有する倉庫を利用して始めた収納サービスが最初だと言われている。もちろん、当時は「トランクルーム」とは呼ばれていなかっただろうし、サービス形態も今のものとはだいぶ違っていたはずだ。いずれにせよ、その歴史は意外にも古い。
 個人向けの保管サービスとして、人々に広く認知されるようになったのは昭和50年代になってからのこと。首都圏では、参入する倉庫会社も増えた。ちなみに、業界大手の加瀬倉庫(神奈川県横浜市)が設立されたのも、ちょうどこの頃のことだ。現在、全国で約500ヶ所、2万室のトランクルームの運営・管理を行う同社は、大手の中では一番の老舗だ。
ようやく活気づき始めたトランクルーム市場だが、当時はサービスの明確な基準や法律がなかったこともあり、数が増えるにしたがい、業者と利用客との間でトラブルが続出した。そのため昭和61年には、一般消費者が利用することを前提にした標準トランクルームサービス約款が定められた。また、平成13年には倉庫業法の一部が改正され、トランクルームサービスに一定の基準と規制が設けられることとなった。

エリアリンクは10万室達成が目前

 加瀬倉庫については先程触れたが、他の大手はいつ頃からこのサービスを行っているのか。東証マザーズに上場するエリアリンク(東京都中央区)は、平成7年の設立直後は、貸地やコインパーキングなどの事業をメーンに手掛けていた。トランクルームサービスを始めたのは設立から4年後のことで、地主営業で着実にその数を増やしてきた。昨年11月には全国9万室を達成し、10万室も目前。名実ともに業界最大手の事業者だ。
「スペースプラス」の名称で、土地活用や空室対策の手法としてトランクルームを提案しているランドピア(東京都中央区)は、エリアリンクより3年早い平成4年の設立。しかし、こちらも当初は不動産事業を主体としており、本格的にトランクルーム事業に着手したのは8年後だ。
 昭和62年設立の押入れ産業(東京都港区)も忘れてはいけない会社の一つだ。日本たばこ産業や日本電信電話など、日本興業銀行などの大手や中堅倉庫会社などの出資で誕生した同社は、スタート当初からフランチャイズの仕組みを利用してトランルーム事業を展開。現在、全国で72社が加盟し、128店舗を展開している。
 設立が平成13年と、大手の中では後発の部類に入るキュラーズ(東京都品川区)は、他の事業者とは異なるビジネスモデルで業績を伸ばしているトランクルーム事業者だ。多くの会社は遊休地やビル・マンションの空室をオーナーから借り上げたり、あるいはオーナーにFCに加盟してもらうなどして、室数を増やしているが、同社の場合は築古ビルや低稼働のビルを自社で購入し、それをトランクルームとして再生して貸し出している。そのため、ビル一棟が丸々、トランクルームという建物が多く存在する。
 ライゼ(大阪市北区)も、ユニークなビジネスモデルで室数を増やしている大手事業者の1つだ。同社が最も得意としているのは遊休地活用で、トランクルームとガレージ、コインパーキング、コンビニなどを組み合わせた複合施設を建設している。中には6階建ての中層建築物もある。
 今や人々の生活やビジネスで欠かせないトランクルーム。ビル・マンションの空室が増えていることもあり、今後も全国的に室数が増えていくことは間違いない。