闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第6回)|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.05.25

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第6回)

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第6回)
04 監督と選手 社長と従業員②

 「野村監督、4球団渡り歩いて、やはり昔の選手と最近の選手で育て方は違うのですか?」

そう聞くと「全然違うよ」といつもの野村節で語り出す。

野村 我々の時と今ではもう180度違う。何が違うかって、我々の選手時代は監督・コーチは戦争経験者で軍隊の経験者。その代表的なのが、南海の時の鶴岡監督。軍隊用語が頻繁に出てくる。連帯責任とか営倉もんとかね。「お前ら営倉もんじゃー!」って怒られるの。はじめ営倉が分からなくて、牢屋に入れるって意味なんだよ。

 営倉とは大日本帝国陸軍に存在した、下士官兵に対しての懲罰房である。当然、今の時代にそんなことを言ったら、そこに入社したいと思う人は誰もいなくなってしまう。ただし、2000年頃まではそのような会社も多数あった。私も新入社員の時の研修が無人島で1カ月間だった。建物や生活設備はあるにしても、第2次世界大戦中の毒ガス兵器開発の島である。週に1回しか船が来ない。初めの数日こそ会社や方針に不満を漏らすが、そこでの世界がそのようなルールであれば、いつしか考え方もルールもそれに沿ったものに変わっていく。マインドコントロールである。1週間もすればその状況に順応し、そこで上司に認められたいと居場所を作るのである。
 違う世界の人間から見ると「大変だね」と思われるかもしれないが、世界の物差しが違うから、そのような感覚がないのだ。
 野村監督の頃も今ではおかしいと思うかもしれないが、それが時代であり、それがその時のルールである。もしかしたら、50年後の人が今を見たら、またそれもおかしいと思うのかもしれない。
 給料の高い会社が、離職率が低いとは限らない。休みが多い会社が社員のやる気が高いかと言えばそうでもない。

 倒産した不動産賃貸管理会社で6ヶ月給料遅延しているという社員を話をしたことがある。

「なぜ会社を辞めないのですか?」
「生活は大丈夫ですか?」

まじめな人物で、取引先からのクレームに、一生懸命頭を下げて回っていたのを覚えている。

「あと2カ月もしたら、家族もあるので辞めるかもしれません」

と答えた。そこの社長は自分の裏金だけ残して会社を倒産させてしまった。当然、この社員に給料が払われることはなかった。
 仕事への責任感なのだろうか?それとも社長のカリスマだったのだろうか?マインドコントロールをされていたのではないだろうか?
 会社を倒産させないためには、沈みかかる船をいち早く下りない社員をどれだけ持っているかということなのだが・・・。

(次号へ続く)