新型コロナで決算発表を延期する大手が続出|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.06.15

新型コロナで決算発表を延期する大手が続出

新型コロナで決算発表を延期する大手が続出
長引けば住宅・不動産業界で連鎖倒産が起こる可能性も

 中国・武漢を発生源とする新型コロナウイルスの影響が、上場する住宅メーカー及び大手住設・建材メーカーの業績にも出始めている。平時であれば、5月には3月期決算の発表や記者説明会が行われるが、延期を発表する企業が続出。中には21年3月期の今期業績予想を未定とする会社もあるなど、住宅・不動産業界は混迷を極めている。
 賃貸住宅関連では、今も施工不良問題の傷跡から脱することができずにいるレオパレス21(東京都中野区)が、4月30日に新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う外出自粛の影響を理由に、20年3月期決算の発表を延期すると発表した。一連の騒動からどこまで立ち直ることができたのかを見定める格好の機会になると、業界内外から注目を集めていたが、それも先送りとなった。もっとも、家賃の減額や支払い猶予、早期解約など、コロナが賃貸業界にも深刻な被害をもたらしていることを考えれば、同社の業績にも何かしらの影響が出ているはずだ。不動産関連に詳しいあるアナリストは「再建への道のりはさらに険しくなったのではないか」と分析する。
 住宅設備・建材関連では、永大産業(大阪市住之江区)が4月30日に決算発表の延期を発表した。コロナが業績に与える影響については「現在精査中」としており、20年3月期連結業績予想に修正は加えなかったものの、住宅業界全体に大きな影響が出ていることを踏まえれば、同社だけが無傷でいられる可能性は極めて低い。今後、業績に関して何かしらの発表があるのではないか。
 ウッドワン(広島県廿日市市)は決算発表を5月22日に延期するとした一方で、説明会の中止を発表した。こちらも、コロナが業績に与える影響については「精査中」としたが、商品在庫を一定量確保していたことから、海外工場の生産活動を一時的に停止した影響は軽微だとしている。在庫の確保に苦慮する住設・建材メーカーが大多数を占める仲撫で、これは珍しいケースだと言える。
 東京証券取引所の発表によると、3月期決算の発表を延期した上場企業の数は、5月に入って400社を超えた。これは3月期決算企業の17%に上り、住宅設備・建材メーカーや不動産会社なども多数含まれている。メディアでは飲食業界への影響が盛んに取り上げられていることから、外食関連企業の動向にばかり注目が集まりがちだが、生産拠点を中国やフィリピン、マレーシアなどに置いていていた住設・建材メーカーも、国内市場に商品の供給ができなくなり、かなりのダメージを受けている。その影響は工事現場の休止という形で住宅メーカーや不動産業界にも波及している。あるリフォーム会社経営者は、「営業をすれば契約は取れるが、キッチンもトイレもエアコンも仕入れできないから仕事にならない。外壁塗装や外構工事など、住設以外のものを使ってできるリフォームでどうにか食いつないでいる状況です」と話す。
 依然、終息する気配が見えない新型コロナウイルスの感染。さらに長引けば、いずれ住設・建材メーカーや住宅・不動産会社を巻き込んだ連鎖倒産が起こるかもしれない。事態の早期解決が待たれる。