購買心理学から見る日本経済とプロレス(第6回)ゲスト:スタン・ハンセン|インタビュー|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.07.06

購買心理学から見る日本経済とプロレス(第6回)ゲスト:スタン・ハンセン

購買心理学から見る日本経済とプロレス(第6回)ゲスト:スタン・ハンセン
①価格

 顧客の興味をひいたら次は価格である。お客様は勝手に自分の経験と比較しながら、この商品価値は、貴社の出し値と比べて安いのか高いのかを判断する。
 一番良い価格設定はいくらだろうか?簡単にWEBで比較ができるような商品を販売しているのであれば、1円でも安い設定で販売することで集客も反響も増える。ただし、ラーメンの味やオリジナルの化粧品といったものは、お客様が想定する単価よりも少し高いくらいのギリギリ手の届く価格に設定する方が良い。そうしないと、お客様の想定単価よりも安いと「もしかしたら良い材料を使っていないのではないだろうか?」と捉えられかねない。なぜなら「味は普通だったんではないだろうか」と思われてしまうからである。もちろん、ラーメンの味に自信がある場合に限られることではあるが・・・。
 なぜこんなことが起こるのか?それはマーケティングには表れない、ミスマッチによる錯覚を起こさせるからである。購買心理学でいうところの「夜の社交場」で使われるテクニックである。
 お客様は「彼女が好きだから」「綺麗だから」「優しいから」応援してあげようと思うのではない。周りを見渡したら、もっと困っている人も優しい人もいるかもしれない。人間は負荷を掛けられると、それから解放されるために意識を変換させることができる。「私が、これだけお金をつぎ込んだのだから、この͡娘は特別にいい子なのだ」と、自分の中で変換してしまうのだ。だから後で冷静になった時に「なんであんなことをしていたのだろう」と感じてしまうのだ。※少し高いというのがポイントです。
 ラーメンの話に当てはめると、お客様は勝手に「ここのラーメン屋のおやじは、こだわりが強いから近所のラーメン屋よりも100円高くても食べる価値があるのだ」と思い込んで、さらにファンになってくれるというわけだ。

②興味を惹いてもらい・価格が妥当であれば、実績と安心になる

 初めて来る方も、駅前にある貴社のお店のことを3年も前から知っているのであれば、地元の人から長い間支持されているのだから安心だろうと考えるし、仮にオープンしたてのお店でも、「三ツ星有名店の○○○の下で修業をしていました」と書かれてあれば、その実績で間違いないと思って入ってくれる。何が言いたいのかと言うと、「お客様が店に入りやすくなる動機を作ってあげる必要がある」ということだ。
 長くお客様に支持されているということは、これらのことがすべてきっちり繋がって、たくさんのファンを獲得しているということだ。だから事業を始めようと思ったときは目先だけ見ていても上手くいかない。少し離れたところから見て、自分がどの位置に置かれているのかを考えて運営していかないと、行き当たりばったりの会社として潰れてしまうのだ。
 スタン・ハンセンのカーボーイスタイルとラリアット(西部の投げ縄)は十分に興味を惹く。高いチケット代も、あの本気のラフファイトを見せられては、「いい物を見せてもらった」と納得するのである。
 そして何より、日本に出稼ぎのように来ては帰ったりを繰り返すレスラーとの一番の違いは、25年間リングに立ち続けたという積み重ねの実績(ザイオンス効果・単純接触効果)により、プロレスファンが日本人の善玉レスラーに抱くのと同じ親近感をスタン・ハンセンに対しても抱くようになっていったことではないだろうか。
 また、彼のファイトスタイルは日本人の持っていない荒々しいものである。しかし実にプロレスに対して真っすぐであったがゆえに、熟知性の法則(知れば知る程、好意を持つとしう心理効果)によってファンは増えていった。難しく考えないで言えば、プロレスファンは強いライバルを、年月をかけて認めたということだろう。