自然災害鑑定士に聞きました~雪災にも使える火災保険~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.02.08

自然災害鑑定士に聞きました~雪災にも使える火災保険~

自然災害鑑定士に聞きました~雪災にも使える火災保険~
今年も日本海側を中心に大雪被害が多発中

 大方の予想通り、年末から年始にかけて、北陸を中心とした日本海側は、強烈な寒波の影響で、記録的な大雪に襲われました。関越自動車道では、1000台以上の車が立ち往生に巻き込まれ、自衛隊まで出動する騒ぎに。中には脱出までに、44時間を要した車もあったそうです。こうなると、住宅への被害も気になるところです。みなさんは、大雪で自宅が被害を受けた場合の備えは万全でしょうか?火災保険の雪害補償についてまとめました。

 「火災保険」は、名前だけ聞くと、火災のみが補償の対象となっているように思ってしまいがちですが、実はそうではありません。火災保険の補償範囲はかなり広く、台風などの風災をはじめ、雹による雹災や雪による雪災、洪水による水災なども、補償の対象になっています。つまり、万が一、大雪で自宅が被害を受けた場合は、火災保険を使って家を修理することができるわけです。
 とはいえ、雪が原因であれば、何でもかんでもが補償されるわけではありません。「契約した補償対象が何か」や、「被害状況」によって、保険金が下りないケースもあります。もしもの場合に備え、まずは基本から見直していきたいと思います。
 まず、保険の対象には、大きく分けて「建物」と「家財」があります。「建物」とは家と、屋根や窓、物置、カーポートなどの構成物、「家財」は家具や家電製品、衣類、自転車、125㏄以下の原付自転車などを、それぞれ指します。例えば、大雪で窓が割れる被害を受けた場合、「建物」を補償対象としていないと保険金は下りません。どちらを選択するか、あるいは両方を選択するかは、人によって判断の分かれるところですが、万全を期すのであれば両方を選択しておいた方が良いでしょう。
 次に、雪で想定される被害についてケースごとに見ていきます。


ケース①
「屋根の上にものすごい量の雪が積もってギシギシという音が・・・。数日後、雪が解けたので見てみたら、屋根の一部が雪の重みで変形していた・・・」

→これは、明らかに雪が原因と考えられますので、「建物」を補償対象にしてさえいれば、保険金は下ります。

ケース②
「屋根に積もった雪がまとめてカーポートの上に落ちた!大きな穴が空いてしまったけど、どうしよう・・・・」

雪によるカーポートの破損事故は意外と多いです。これも雪が原因であることが明らかで、「建物」を補償対象にしていれば、保険金はおります。

ケース③
「雪解け水によって洪水が発生し、床上浸水してしまった・・・」

これは、雪が原因のように見えますが、直接の原因は「水」と判断されます。したがって、「雪災補償」ではなく「水災補償」の対象となり、かつ「建物」を補償対象としていないと保険金はおりません。

ケース④
「家の裏の斜面で雪崩が発生して、家の壁が破壊されてしまった・・・。中にあった家具も大きな被害を受けた・・・」

これも雪が原因ですので、火災保険の雪災の補償対象です。家と家具をまとめて補償してもらうためには、「建物」と「家財」の両方を補償対象としておく必要があります。

 雪災の対象外と見なされるケースについても見ておきましょう。

ケース①
「雪による自宅の被害が、火災保の補償対象になっていたことを忘れていた。3年前の被害だけで、今からでも間に合うかな・・・」

残念ながら、保険金の請求期限は被害を受けてから3年以内と、保険法で定められています。したがって、3年を過ぎてしまうと、いくら補償の対象になっている被害でも、保険金は1円もおりません。逆に、3年以内なら、いつでも保険金を請求できるので、間に合う方は今からでも、すぐに保険会社に問い合わせてみて下さい。

ケース②
「大した雪ではなかったけれど、雨漏りが発生した」

それほどの大雪ではなかったにもかかわらず、雨漏りがしたという場合は、雪の重みが原因で屋根は破損したのではなく、屋根の劣化が原因であることが多いです。この場合、原因は雪でないため、当然、雪災補償の対象にはなりません。

 駆け足で見てきましたが、火災保険の雪災補償の対象になるかどうかは、契約内容や事故の内容によって変わります。素人目にはなかなか判断の付かないことも多いと思います。困ったときは、まずはお近くの自然災害鑑定士に相談してみてはいかがでしょうか。