エイブル 7年間で約400件の不正請求が発覚|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.08.02

エイブル 7年間で約400件の不正請求が発覚

エイブル 7年間で約400件の不正請求が発覚
「派遣社員がやったこと」と自らの責任を否定

 またもや大手企業による不正が発覚した。今度は不動産仲介大手のエイブル(東京都港区)だ。報道によると、エイブル(東京都港区)は、管理契約を結ぶオーナーに対して約400件にものぼる架空のリフォーム費用を請求していたとされる。実態を把握したオーナーから訴えられ、約2億8000万円の賠償を求められている。6日に開かれた第1回口頭弁論で、エイブルは一部の不正を認めたものの、「派遣社員がやったことで、会社は関与していない」として、請求の棄却を求めた。
 原告は大阪市内に5棟約80戸のマンションを所有するファインマネジメント(大阪府豊中市)。同社は2010年から、エイブルに管理全般や家賃徴収などの業務を委託。7年間で発生したリフォーム費、約6150万円もエイブルに支払っていた。しかし、18年頃から賃料の入金が滞るようになったため調査を行ったところ、リフォームした形跡が見られなかったことから不正な請求があったことを把握した。
 エイブルの対応に驚いた業界関係者は多いはずだ。というのも、不正があったことを認めているにもかかわらず、責任を取る気がまったくないからだ。それどころか、状況を確認しなかったオーナー側にも過失があると、完全に開き直ってしまっている。
 エイブルが主張の根拠としているのは、不正を働いたのが正社員ではなく、派遣社員だったという点だ。要は「うちではなく、派遣会社の方にかけあってくれ」と言っているのだ。稚拙過ぎて呆れてしまう。もしこの主張が通るのであれば、派遣社員だけで運営する会社は、どんな問題を起こしても責任を取る必要がないということになってしまう。これでは人材派遣会社はたまったものではない。正社員だろうが派遣社員だろうが、エイブルで仕事に従事していたのだから、オーナーに対して責任を負うべきはエイブルだ。派遣会社の責任を追及したいのであれば、それはエイブルが独自にやるべきことだ。
 それにしても派遣社員はなぜ、大きなリスクを冒してまで不正請求を繰り返したのか。そこまでして得られるメリットは一体何だったのか。普通、この手の不正は着服を目的としていることが多いが、今回のケースではリフォーム代金はオーナーから直接エイブルに支払われているようで、派遣社員が着服できるような隙はない。請求の金額や件数に応じてインセンティブが入るため不正を繰り返したという可能性もあるが、会社側にバレずに行うのには数があまりにも多過ぎる。
 果たして、エイブルは本当に今回の件についてまったく把握していなかったのだろうか。問題となったマンションには、内見業務などで他のエイブル社員なども頻繁に出入りしていたはずだ。「リフォーム済」となっているのにクロスやフローリングが貼り替えられていなかったら、普通は誰かが気付くはずだ。もし本当に誰も気付かなかったというのであれば、プロとして恥ずべきだろう。また、リフォーム工事については、エイブルはあくまでも間をつなぐだけの立場であり、施工はグループ内の専門会社か下請業者に丸投げする。つまり、どこかのタイミングで必ず、オーナーから入金されたリフォーム代金から手数料なりを差し引いた金額を、施工会社に支払う必要がある。それがないにもかかわらず、7年間も不正に気付かったというのは、あまりにも不自然だ。
 今回の事件で、とんだとばっちりを受けた会社もある。エイブルのフランチャイズに加盟する不動産業者だ。「エイブル」の看板を掲げているだけで、同じような不正を働いていたのではないかと疑いの目を向けられているのだ。ある加盟店の幹部は、

「ニュースになった当日、何人かのオーナーから『心配だから今すぐうちの物件を見せてくれ』という連絡を受けました。中には『本当に施工したのか、下請業者から来た請求書を見せてくれ』というオーナーもいました。管理契約を切られたら、本部はどう責任を取るつもりなのか」

と苦言を呈す。
 エイブルの責任について司法はどのような判断を下すのか。裁判の行方に注目したい。