賃貸トラブル対策講座~犬の無断飼育でフローリングがキズだらけに!~|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2022.06.20

賃貸トラブル対策講座~犬の無断飼育でフローリングがキズだらけに!~

賃貸トラブル対策講座~犬の無断飼育でフローリングがキズだらけに!~
内容証明を送付し、原状回復費を全額請求

 アパート・マンション経営に携わっている方は、程度の差はあれども、過去に一度や二度は、何かしらの賃貸トラブルに巻き込まれたことがあるのではないでしょうか?今回は、無断で犬を飼っていた入居者の事例をご紹介します。
 「4年間住んでいた方の退去立会いで、フローリングのペットのオシッコ跡のようなものがあるのを発見しました。部屋の中に獣のニオイも残っていたため問いつめたところ、黙って犬を飼っていたことが分かりました」

 こう話すのは、千葉県船橋市でマンション経営をする津田博オーナー(58)です。問題の入居者Aが津田さんのマンションに入居したのは2013年の春のこと。入居中、家賃の滞納は一切なく、ポストに郵便物を貯めるということもなかったため、過去、何十人もの入居者と接してきた津田オーナーも、誠実で真面目そうな印象を持っていたそうです。
そんなAは2017年の夏、関西方面への転勤が決まったため、津田さんのマンションを退去することになりました。退去立会いは引っ越し当日、荷物の搬出が終わった14時に行われました。

「特に問題のある入居者ではなかったため、立ち合いはすぐに終わると思っていました。それがまさかあんな結果になるなんて・・・」

 津田さんは玄関に一歩足を踏み入れるや否や、過去の退去立会いでは感じたことのないある異変に気付きました。

「室内から獣臭のようなものがしたんです。うちのマンションはペット禁止なので、『まさか』と思いました」

 とはいえ、すでに荷物はすべて搬出した後だったため、部屋の中にペットの姿はありませんでした。しかし、廊下を進んでリビングに入った瞬間、決定的な証拠が見つかりました。部屋の一角の床だけがボロボロになってめくれ上がり、その周辺だけアンモニア臭のようなニオイが立ち込めていたのです。
 津田さんはすぐにAを問い詰めました。最初は「飲み物をこぼした」と言い訳をしていたAでしたが、津田さんの怒り心頭の様子を見て観念したのか、最後には無断で犬を飼っていたことを認めたそうです。

「どうやら以前付き合っていた彼女と一緒に飼い始めたようです。すぐにペットを飼える別のマンションに引っ越すつもりだったようですが、その前に彼女と別れてしまったため、そのまま黙って飼い続けていたそうです。非常におとなしく、ほとんど鳴くことがなかったため、隣の入居者すら気付きませんでした」

 立ち合いの結果、損傷の激しいリビングのフローリングと、ペット臭の染み付いた壁紙は全面的に張り替えることになりました。当然、それにかかる費用は全額、入居者に請求したそうです。

「フローリングを剥がすと、下地のコンクリートにもかなりの傷みがあること分かりました。結局、補修と原状回復には全部で約70万円もかかりました。退去時に支払う金額としてはかなり高額ですが、契約違反をしたのは入居者側なので、きっちり全額請求しました」

 最初、Aは支払いを渋っていたそうですが、津田オーナーが弁護士に依頼して、明細書とともに内容証明書を送付したところ、諦めて全額振り込んできたそうです。

 津田オーナーのケースでは退去立会い時に契約違反が判明しましたが、仮に入居中に違反が見つかった場合はどうなるでしょうか?オーナーとすれば「契約違反なのだから、すぐに退去してもらいたい」かもしれませんが、実は違反があったからと言ってすぐにその入居者を出ていかせることはできません。まずは契約書にきちんと「ペット飼育禁止」について書かれているか確認し、それを踏まえてペットの飼育をやめるように通知して下さい。それでも飼育をやめなかったり、ましてや他の入居者に騒音や悪臭で不快な思いをさせるようなことがあるのであれば、きちんと手順を踏んで契約の解除を求めましょう。絶対にやってはいけないのは、状況を把握したにも関わらず、「退去のときにリフォーム代を請求すればいいや」と、すぐに違反を指摘せずに黙認してしまうことです。これは、ペットの飼育を認めたことになってしまうため、後から契約の解除を求めたりすることができなくなってしまう恐れがあります。
 ただでさえ苦労が多い賃貸経営。できれば余計なトラブルに巻き込まれたくないものです。お困りごとがある方は、お近くの全国優良リフォーム会員にご相談下さい。