投資用不動産ローンを巡る重大事件発生|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2024.04.08

投資用不動産ローンを巡る重大事件発生

投資用不動産ローンを巡る重大事件発生
現役行員が加担した不正融資事件で4人が逮捕


 投資用不動産ローンを巡り、前代未聞の事件が起こった。3月5日、三菱UFJ信託銀行の現役行員・松田大樹容疑者と不動産コンサルティング会社社長・藤本優容疑者ら4名が共謀して、2022年3~5月にかけて、地銀大手・横浜銀行から融資金3億8000万円を騙し取ったとして警視庁に逮捕されたのだ。容疑者らは横浜銀行以外の金融機関からも融資金を騙し取っていた疑いがあり、被害総額は32億円以上に上ると見られている。警視庁は引き続き、余罪の捜査を行っている。なお、本稿執筆時点で4名の認否は明らかになっていない。
 手口はこうだ。松田容疑者らは、横浜銀行に対してアパートを購入するための資金の融資を申請する際に、審査に必要な源泉徴収票や個人の預金口座の残高などを偽造して提出。さらにこのとき、実際の販売価格3億3000万円に5000万円を上乗せした金額を記載した。審査通過後に受け取った融資金は、すぐに売り主に渡さずに、藤本容疑者が管理する売り主と同じ名義で作られた偽装口座にいったん送金。差額の5000万円を差し引いたうえで改めて売り主に渡した。藤本容疑者が差額に加え、松田容疑者が別に用意した1000万円を加えた計6000万円を手数料として受け取ったとされる。
 一見すると、極めて単純な手口のようにも見えるが、今の時代、偽造書類で金融機関から融資金を騙し取るのはそう簡単なことではない。たまたま最初はうまくいったとしても、2回目以降も同じ手口で成功するとは限らない。むしろ、うまくいかない可能性の方が高い。それにもかかわらず、犯人グループはなぜ、立て続けに複数の金融機関を欺き、大金を騙し取ることができたのか。犯人グループに銀行業に精通する現役行員がいた影響はもちろんあるだろう。しかし、それだけでここまで大胆な犯行ができるのか。銀行業務に詳しい専門家は、金融機関の 審査に不備があった可能性を指摘する。

「数年前に立て続けに発生した『かぼちゃの馬車』や『TATERU』のアパート融資詐欺事件を機に、金融機関は投資用不動産ローンの審査をかなり厳しくしました。預金残高はコピーではなく、通帳の原本で行い、さらに源泉徴収票についても公的所得証明書と照らし合わせて確認することを徹底するようになった。基本的に例外はないはずだ。したがって偽造書類で審査が通ることはまず考えられない。今回の事件はその辺りの手続きが厳正に行われていなかったのではないか」

 実際、ある週刊誌は、横浜銀行は体面による融資審査の際、口座残高の確認を通帳の原本ではなく、容疑者らが用意したネットバンキングとおぼしき画面で行っていたと報道している。もしこれが事実なら、杜撰だと言われても仕方がない。先の事件の反省は何も生かされていなかったということになる。100歩譲ってやむを得ない事情があったとしても、こんな小手先の手口に引っ掛かっているようでは、同行の審査は有名無実だったと言わざるを得ない。
 現役行員が本件に加担していた事実も見逃せない。銀行のコンプライアンス教育はどうなっているのか。言うまでもなく融資の原資は一般消費者の預金だ。それを事もあろうに現役の行員が自らの利益のために違法な手口で騙し取ったのだ。行員が厳しく処罰されるのは当然のこととして、そんな行員を放置していた金融機関にもしかるべき処分が下されるべきではないだろうか。
 気になるのは、今回の事件が投資用不動産ローンの審査にどのような影響を及ぼすのかという点だ。前出の専門家は

「おそらく今回の事件を機にどの金融機関も審査方法に関して再確認を行ったはずです。ただし、審査を厳しくするということではなく、例外を認めず、きちんと手順に沿って行うようにとの通達でしょうから、融資が受けにくくなる等の影響はないと思います」

と話す。いずれにせよ、前代未聞の事件だけに、驚いたという人は多かったのではないだろうか。余罪を含めた事件の詳細の解明が待たれる。