闘将野村「新経営論」第20回|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.09.24

闘将野村「新経営論」第20回

闘将野村「新経営論」第20回
-「愛情と信頼」、これを社員教育に生かす社長が結構いらっしゃると思います。監督のところにも、社員の褒め方や叱り方を含めた再生論についてたくさんの方が取材に来られると思います。

野村 環境は違うけど、基本は一緒だわな。愛情だよ、愛情・チーム愛・選手愛。

-監督は基本的に、いつでも愛情をもって選手と接しているということですね。

野村 感情で選手を叱ったり怒ったりしたらチームは崩壊しちゃう。信頼が消えちゃう。それは人間だから感じるよ、愛情で怒られてるのか、感情で怒られてるのか分かるよ。よく俺なんか24年も監督やったと思う。

経営者も人間だから、私利私欲で動く。私利私欲で、社員に接する。それでは駄目だという。難しい、会社経営自体が損得の中にある。勝負の世界での信頼関係と愛情。そこに損得勘定はない。

-野村監督にとって仕事とは何ですか。(その回答を聞いて理解した。※その答えは次号で書くことにする)
でも、愛情をもって接していても、なかなかそれを分かってくれない選手もいたのではないでしょうか。

野村 あるよ。

-そういう場合は、最後はどうするのですか。

野村 無視(笑)

-それはそうですね。

野村 人間は一番辛いのは何だって無視だよ。無視されることが一番辛いんだよ。

-それで本人が気付くかどうかということですよね。

野村 人間は、みんなはじめは称賛こういう段階で試されてるの。2、3日ほっとくの。褒められてるうちは本物じゃない。非難されるようになって一人前。その裏返しが期待してるっていうことだから。

監督にお会いするまでテレビの印象では、ぼやきも言えば、嫌みも言う。失敗もすれば、長々と説教もされる、難しい人ではないだろうかと思っていた。しかし、実際は、大きく違っていた。
監督のボヤキやマスコミ報道全てに対しても戦略があり、計算がある。監督は選手を大人(プロ)として扱う。情報を収集し、戦略(経営方針)を立て勝つための仕事をする。

-監督の原動力-話していて分かる。この人は、野球が好きなんだ。選手の誰よりも野球が好きなのだ。だから負けたくない。だから考える。
一生野球(仕事)のことしか考えてこなかった人に、数年頑張ったくらいの人が勝てるわけがない。

序章の対談を終えて、野村監督の帰っていく姿を見送る。私よりも背は10㎝程大きい。ただ、後ろ姿は話しているときよりも小さく見えた。もう、82歳である。私は、闘将野村の戦略をいつまでも見てみたい。ファンの一人である。