相続不動産相談所「「どうすればいいの?精神的障がいをもつ長男への遺産相続」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.01.14

相続不動産相談所「「どうすればいいの?精神的障がいをもつ長男への遺産相続」

相続不動産相談所「「どうすればいいの?精神的障がいをもつ長男への遺産相続」
円滑な相続を実現する民事信託

 相続は、対策を一つ間違えると、ご本人が望むような形で実行されないことがあります。最悪の場合、家族や親族で遺産をめぐって争いになることもあるだけに、どんな対策を講じるのが適切なのか、きちんと見極める必要があります。今回は、再びやなぎ総合法務事務所に「民事信託」の事例について、解説してもらいました。

「障がいを持つ長男の将来が心配・・・」

 今回、当事務所にご相談に来られたAさんには、先天的な精神的障がいをもつご長男Bさんと、すでに結婚してご家庭を持たれている長女Cさんという2人のお子さんがいらっしゃいます。旦那さんはすでに他界されています。
 Bさんは施設で生活していて、その世話や手伝いはAさんが行っていました。しかし、高齢で体力が衰えてきたこともあり、そろそろご自分も介護施設に入ろうかと検討しておられました。そこで、入所前に遺産をどうするかについて、相談しに来られたというわけです。
Aさんには、「ご自宅」「収益不動産」「預貯金約6000万円」という3つの資産がありました。ご希望は、

①Aさんの死後、CさんにBさんの世話を任せたい ※Cさんも了承済み
②自宅は、介護施設入所後も売らないつもりだが、将来的に戻る見込みがなくなった場合は売却してもらいたい
③まとまったお金と収益不動産の家賃収入を、Bさんが相続できるように遺言したい

の3つでした。ここで問題となるのは、Bさんが精神的障がいで財産の管理ができないため、成年後見制度を活用しなければならないということでした。必ずしもこれが駄目というわけではありませんが、少なくとも財産を柔軟に運用することができなくなってしまうというデメリットがありました。すなわち、自宅を売却する必要が生じた場合に、Cさんはスムーズにその手続きができなくなってしまいます。これでは、Aさんの望むような形での相続ができません。そこで我々は、「民事信託(家族信託)」という方法をご提案しました。
 「民事信託」という言葉を初めて耳にしたという方のために、ここで簡単に説明しておきます。これは、自分の財産を「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すのかを決め、それを管理する権利を、信頼できる人物に移す手続きのことです。
 資産承継の方法としては、「遺言書」や「成年後見」などがよく知られていますが、実は色々な欠点がります。例えば「遺言書」であれば書き換えができてしまったり、一つ先の代のことまでしか決めることができません。また、「成年後見」の場合、財産は全て家庭裁判所の監督下に置かれ、毎年収支報告をしなければなりません。果たして認知症や障がいをお持ちの方に、これらの手続きができるでしょうか。こうした事情から、現代社会に合った資産承継の仕組みとして考え出されたのが「民事信託」という制度です。
 話を戻します。Aさんはこの制度を活用して、Cさんに財産の管理とBさんのお世話を任せることにしました。これで、Cさんは、Aさんがお亡くなりになられた後に収益不動産の家賃や預貯金などをBさんに渡せるようになり、さらに状況に応じてご自宅を売却することもできるようになりました。お悩みが解決したことで、Aさんも晴れて介護施設に入所することができました。
 いかがでしたでしょうか。従来の方法では、財産管理が難しい人にスムーズかつ確実に生活費などを届けることができませんでした。「民事信託」はこうした問題を解決するだけでなく、余計な贈与税や税金も発生しないので、金銭的なメリットも大きいです。相続や事業承継にお悩みの方は、お近くの全国優良リフォーム会員に相談してみてはいかがでしょうか。

執筆協力:やなぎ総合法務事務所