自然災害鑑定士に聞いてみた「雨樋の修理費80万円 保険を使って全額補償」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.04.22

自然災害鑑定士に聞いてみた「雨樋の修理費80万円 保険を使って全額補償」

自然災害鑑定士に聞いてみた「雨樋の修理費80万円 保険を使って全額補償」
強風による住宅被害も火災保険がカバー


 早いもので今年も4月。大雪の季節が終わり、みなさんひと段落しているのではないでしょうか?確かに春は、夏の台風や冬の大雪のように、大きな被害をもたらす可能性のある自然現象を想像しにくいかもしれません。しかし、実は春にも気を付けなければならないことがあります。それは風です。「春一番」に代表されるように、この季節はいきなり強い風が吹くことが多々あります。強風で屋根瓦が吹き飛ばされたり、風で飛ばされた小石で窓が割れたりと、かなりの数の住宅が被害を受けます。今回は火災保険のサービスの一つ「風災補償」についてまとめました。

補償対象となる強風はどこでも吹いている!?


 「風災補償」とは、突風や強風、春一番、木枯らし、台風などの強い風によって被害を受けた建物や家財の損害を補償するサービスです。例えば、強風で屋根瓦やスレートが吹き飛ばされたり、あるいはベランダやバルコニーが破損したり、TVアンテナが壊れたりした場合、その修理費用を保険で賄うことができます。
 ただし、風による被害であれば何でも補償されるわけではありません。確かに風は吹いていたものの強風と言えるようなレベルでなく、近隣の他の家では一切被害のないような場合は、原因が本当に風だったのかどうか分かりません。そうした場合は、残念ながら補償の対象外となってしまいます。
 それでは、具体的にどのようなレベルの強風であれば補償の対象となるのでしょうか。基準となる強さは「最大瞬間風速20メートル/秒」です。つまりたった3秒の間、台風レベルの強い風が吹けば、風災補償の対象となるのです。台風レベルと聞くと、「そんな強い風が簡単に吹くわけがない」と思う方もいるかも知れませんが、実際にはそんなことはありません。台風は“最大風速”で計測されるため、10分もの間強い風が吹き続けなければなりません。しかし、風災補償の対象となる強風の計測時間はたったの3秒です。瞬間的な強風であれば、普段どこでも吹いています。言い換えれば、よほどのことがない限り、風による住宅・家財の被害は保険が適用されることになります。
 注意しなければならないのは、申請には期限ある点です。具体的には被害を受けた日から3年が保険申請期間となります。これを過ぎてしまうと、おくら強風が原因だと立証できたとしても、失効となってしまいます。ただし、これはあくまでも申請の期限です。3年以内に手続きをして、修理を終えてなければいけないというわけではありません。極端な話、期限最終日に申請して、そこから修理をしても良いというわけです。

被害額が20万円を超えないと保険金は下りない!?

 風災補償で保険金を受け取るためには、もう一つ注意しなければならないことがあります。実はいくら強風が吹いていても、被害額が20万円以上(保険会社によって異なる場合あり)でなければ保険金はおりません。つまり修理費用が19万円だった場合は、残念ながら補償の適用外となってしまいます。20万円と聞くと少しハードルが高いように感じるかも知れません。例えば、雨桶が割れたり、スレートが剥がれた程度で、修理に20万円以上かかるのでしょうか?おそらく部品代だけなら数万円程度で済んでしまうでしょう。しかし、直す場所はほとんどの場合2階以上の高所になります。足場代や施工の手間賃などを加えれば、ゆうに20万円は超えてしまいます。修理箇所が高所であればあるほど、費用は高額になります。
 また、「20万円程度の被害で保険を使っていたら、保険料がすぐに高くなってしまう」と心配される方もいるかと思います。しかし、ご安心ください。火災保険は自動車保険のように、保険を使う度に保険の掛け金が上がるということはありません。極端な話、何度使っても保険金は最初と変わらないのです。だから、修理が必要な場合は、どんどん保険を使った方が良いのです。
 最後に、風災による屋根の破損を、火災保険を使って修理した実例をご紹介します。神奈川県川崎市のAさん宅は、築30年の木造2階建て。2015年に強風で被害を受け、2階屋根に取り付けられていた雨樋4本がすべて破損してしまいました。修理業者に見積りを頼んだところ、その額は80万円。「雨樋の修理だけでこの金額は高い」と思われる方もいるかも知れませんが、高所の作業になるため意外とかかるものです。Aさんも最初はどうしようか悩んだそうですが、業者から「火災保険の風災補償が使えるかどうか聞いてみてはどうか」とのアドバイスを受け、保険会社に確認。結果、補償の対象となることが分かり、保険を使って雨桶を修理することにしました。手続きに3ヶ月と多少時間はかかったものの、最終的に修理にかかった80万円全額を保険金で賄うことができたそうです。
 修理費が高額だからと言って、破損個所を放置しておくと被害はさらに広がる恐れがあります。自然災害で自宅が被害を受けた場合は、保険をうまく利用して、速やかに対処しましょう。自然災害に関するご相談は、お近くの自然災害鑑定士まで。