相続不動産相談所「わずか60万円で、2800万円の不動産資産と 年間360万円の賃料収入の贈与に成功」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.06.24

相続不動産相談所「わずか60万円で、2800万円の不動産資産と 年間360万円の賃料収入の贈与に成功」

相続不動産相談所「わずか60万円で、2800万円の不動産資産と 年間360万円の賃料収入の贈与に成功」
適切な対処をするかどうかで、納税額に大きな差が出る相続税。特に不動産資産が絡んだケースでは、億単位で返納や追加納税が生じることもあるため、専門家の存在が不可欠です。今回は相続税対策の専門家による成功事例について取材しました。
 今回は、関東近郊で相続税対策を手掛けているY税理士事務所が手掛けたBさんの相続事例をご紹介したいと思います。
 Bさんには現金の他、株式や不動産など、いくつかの相続資産をお持ちでした。将来、相続が発生した際には、それなりの額を納めなければならないため、今のうちから何かできることはないかと、知り合いの伝手を辿ってY税理士のもとに生前贈与の相談に訪れました。
 財産がある以上、相続税は必ず発生します。その額をできるだけ少なくするためには、極端な話、可能な限り財産を減らすしか方法はありません。しかし、Bさんは賃貸マンションをお持ちです。いくら財産を減らしても、これがある限り定期的な賃料収入が発生し、相続財産は増えてしまいます。対策は、賃貸マンションをどうにかすることから始まりました。
 もっとも簡単な方法はマンションを売ってしまうことですが、Bさんのマンションが建っている土地は、先祖代々受け継がれてきたもののため、できれば手放したくないというのが希望でした。そこでY税理士は、「相続時精算課税制度」という特別控除を利用することで、将来発生するであろう相続税を減額することにしました。
 「相続時精算課税制度」という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。簡単に説明すると、これは「60歳以上の祖父母や親から20歳以上の子や孫に贈与する場合、2500万円までは贈与税がかからない」という特例です。この制度を利用すれば、収益不動産から上がる賃料収入はご本人ではなく、子や孫の財産となります。仮に2500万円の枠を超えてしまう場合は、土地と建物を切り離し、建物のみを贈与するようにします。建物贈与の評価額については固定資産税評価によって算出されるため、大抵の場合、2500万円以内に収めることができるはずです。贈与後に建物の名義人を、ご本人から子や孫に変更しておけば手続きは完了です。
 

(相続時精算課税制度利用時のメリットとデメリット)

-メリット-
①2500万円までは贈与税が発生しない
②収益不動産から発生する将来財産を、あらかじめ子や孫に移すことができる
③不動産や株などが将来的に値上がりした場合、値上がり分の相続税を節税することができる
④贈与により「争族」を防ぐことができる

-デメリット-
①土地の評価が貸家建付地から自由地になるため、収益不動産から上がる賃料収入よりも相続税の増加分が多くなってしまうことがある
②年間の贈与額が110万円以下であれば無税となる暦年贈与が使えない
③贈与額が年間100万円以下の場合は基本的に申告手続きが不要だが、相続時精算課税制度を利用する贈与額が110万円以下であっても申告手続きが必要
④一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例が適用できない

 以上を踏まえて、Bさんに「相続時精算課税制度」を利用した相続対策を実施したところ、

土地建物の相続税評価:2800万円
家賃収入:360万円/年
相続時精算課税による贈与税額:2800万円-2500万円×20%=60万円

となり、わずか60万円の贈与税を支払っただけで、2800万円の不動産資産と年間360万円の賃料収入を息子さんに移すことができました。対策実施後から7年が経過した現在もBさんは健在。節税効果はすでに2520万円分に達しています。

(おまけ)
 もう一つ、それほど大きな節税効果を得られるわけではありませんが、広く色々な方にご利用いただける節税法をご紹介しておきます。
 昔に比べて、“先祖代々の墓”に対する意識が薄れている昨今ではありますが、実はお墓や仏壇を購入することで相続税を節税することができます。これは、お墓や仏壇などが相続税の対象とならない非課税財産として規定されているためです。例えば墓地と墓石、仏壇など、合計500万円を購入しておくと、500万円分の資産が相続税の対象から除外されることになります。ただし、制度の悪用を防ぐため、必要以上に高額な非課税財産を購入し、相続後にそれをすぐに売却・転売するような行為は認められていません。

 いかがでしたでしょうか。相続税対策は人によって最適な方法が異なるため、ここでご紹介したケースがそのまますべての方に当てはまるわけではありません。ただし、相続が発生する前のできるだけ早いタイミング実施した方が、メリットを得られる可能性が高いということだけは言えます。相続や事業承継などにお悩みの方は、お近くの相続不動産実務主任者に相談してみてはいかがでしょうか。