不動産業界のモラルを問う!緊急覆面座談会|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.07.08

不動産業界のモラルを問う!緊急覆面座談会

不動産業界のモラルを問う!緊急覆面座談会
満室偽装、融資の不正利用、消臭剤の未施工、etc…。横行する不動産業者による不正

 ここのところ、賃貸業界では大手企業による耳を疑うような不正が次々と明るみになっている。巷を賑わせているレオパレス21による施工不良問題は、発覚から1年以上が計画した現在も、今だに収束する気配が見えない。こうした状況を受けて本紙は、豊富な実務経験をもつ4名の不動産会社社長を集めた覆面座談会を行った。不動業界にはびこる不正の実態に迫る。

-「不動産業界のモラルはどうなっているのか?」と聞かれる機会が増えています。言うまでもなく、レオパレス21問題に始まる不動産会社やハウスメーカーなどによる一連の不祥事を受けてのものですが、業界全体のイメージは著しく低下していますね。

A社長 最近は色々な若手経営者が出てきたり、上場する会社も増えてきて、かつてのようなダーティーなイメージが和らいでいた。しかし、不祥事がこれだけ相次いで発覚すると、また逆戻りだ。あたかも業界全体に不正が横行しているように受け取る人も多いのではないか。

B社長 正直なところ、業界の人間からしたら、レオパレス21の問題は今更という感じでしたけどね。「隣の部屋で寝ている人のいびきがうるさい」「2軒隣の入居者の話し声が聞こえる」なんて話は、昔から都市伝説のように語り継がれていたから、「物件に何かしらの問題があるんじゃないか」と薄々気付いていた人は多かったと思いますよ。

C社長 ただ、建築の不正はレオパレスに限ったことではないと思うよ。あの大和ハウス工業でさえ不正に手を染めていたんだからね。うちは賃貸管理もやっている関係で色々なアパートやマンションを見ているけれど、「おや?」と思うものは結構ありますよ。

D社長 業者も、物件を売るためにはできるだけ高い利回りにしなければならない。でも建築費は上がる一方で、まじめにやっていたら高い利回りなんて出せない。だからコストを抑えるために手抜き工事をするのだろうね。投資目的でアパート経営に手を出す素人が増えた影響もあると思うよ。何も分からないくせに、口を開けば「利回りはなんぼ?」だから。

B社長 全国の物件を一斉調査したら、きっととんでもない数の不正が見つかるんだろうね。でも、現実問題としてそんなことはできないから、今回はとりあえず見せしめという感じでレオパレスがやられたんだと思うよ。「ガイアの夜明け」で報道されて世間一般にも知れ渡ってしまったし、お国ももう目をつぶることはできなくなってしまったんじゃないかな。

-アパート業者に限らず、最近は仲介や管理の現場の不正も頻繁に報道されています。札幌の不動産仲介店舗が爆発した時には、消臭スプレーの代金を徴収しておきながら施工していなかった事実が発覚して大きな問題になりました。

D社長 消臭スプレーを撒いたかどうかなんて入居者には分からないからね。うちも以前は、入居契約を結ぶときに消臭スプレーを売っていたんだけど、あの事件のせいでまったく売れなくなってしまった。さすがに1万5000円なんて金額では売っていなかったけれど、それでも売上面の影響は小さくはないよね。

A社長 昔のように繁忙期には店の前に行列ができるなんてことはもうないから、少しでも収入源を増やそうとみんな必死に付帯商品を増やしてきたんだよ。インターネットや引っ越しサービスの取り次ぎもそうだよね。うちにもがんばって売ろうと仕入れた消臭剤が大量に残っているよ(笑)。

C社長 入居者からお金をもらっておきながら施工しないはもちろんひどいし、ほとんど詐欺同然だと思うけど、僕の知っている管理会社はもっとひどいことをしていますよ。簡単に言うと鍵の使い回しなんだけれど、新しく入居する人から「カギ交換」という建前で2万円とか3万円徴収しますよね。それでちゃんと新しいものに交換しているのであれば問題ないんだけれど、取り外したカギをいったん店舗で保管しておいて使い回しているんですよね。しかも同じ物件の中でやっているんだからひどい。出入りしているカギ業者から聞いたんだけども驚きましたよ。防犯も何もあったもんじゃないね。

B社長 そこまでするか。そもそも安全性の担保は家主の義務だから、カギ交換の費用を新しい入居者に負担させること自体どうかと思うんだけどね。そう言いながら、業界の習慣なんでうちもやってるんだけど・・・。

C社長 結局のところ、賃貸の仕事は昔ほど儲からなくなった。でも減った分はどっかから吸い上げて補わなければならない。それであの手この手を使って入居者からお金をもらう仕組みを次々と考えているんだよね。本来は、入居者はお金を支払っているんだから、お客様として扱うべきなのに、それができていない。今だに「貸してやっている」というスタンスの不動産業者もいるからね。

A社長 入居者だけでなく、オーナーのことも“金づる”扱いしている業者もいますよね。何年前だったかな、昔からお世話になっている京都の不動産会社の社長と会食したときに「今度、オーナー会を作るんですが、発足式で講演してもらえませんか?」と相談したんです。普段から「家主を大事にせえ」と口癖のように言っている社長だったので、二つ返事でOKしてくれると思ったんですが、返ってきた答えは「お前、そんな余計なことしとる暇あったら、どうやったら家主からもっと金取れるのか考えろ」ですよ。多少お酒も入っていたので、最初は冗談かと思いました。でも「そんなことしていたら家主が潰れちゃうじゃないですか」と反論したら、「だからお前の会社は大きくなれんのや!いいかよく聞け。家主は潰れても物件はそこに残るんや。物件さえ残っていれば、また新しい家主がくる。そしたらまた、そいつから金を取ればええんや!」って、えらい剣幕で説教されてしまいました。いつも言っていたセリフは何だったんだと、裏切られたような気持になりましたよ。京都では大手の部類に入る不動産会社の社長でしたから、なおさらショックは大きかったですね。

B社長 家主が何もしないで収入を得ることができるのは、自分達がいるからだという想いが強いんだろうね。それにしてもひどいな、その社長は。普段は家主の前でペコペコしているんだろうね。そう言えば、これは昔からある手口だけど、一時的に社員や知り合いを入居させて満室になったように見せかけて、「うちの力があったからだ」と言って管理契約を結ばせる不動産会社を今だに見かけるよね。契約を結んで2、3ヶ月もしたらその人たちを退去させて、今度は「リフォームしましょう」と提案する。リフォーム業者からもしっかり紹介料を徴収しているんだからすごいよ。オーナーが遠方に住んでいて直接物件を確認できない場合は、クロスが大して汚れていなかったりすると、張り替えてもいないのに張り替えたと言って壁紙代を請求するケースもあるよね。

D社長 満室をネタにする手口は、建築業者もよく使うよね。「うちが企画したアパートは他のものとは違うから、完成したらすぐに満室になる。不安ならうちが保証しますよ」と言って受注する。完成後はとりあえず知り合いを入居させて満室になったように装い、それを別の営業にも利用するんだよね。相続税対策目的にしろ、投資目的にしろ、アパートを建てるオーナーにとって一番不安なのは、「本当に満室になるのか」ということだから、そこをクリアにしてあげれば簡単に契約が取れてしまうんだよね。身内や知り合いを入居させることで、多少は自分達で家賃なりを負担しているかもしれないけれど、建築で結構な利益が出ているから痛くも痒くもない。

C社長 「かぼちゃの馬車」事件はその典型だよね。彼らの場合は、結局自分たちの首を絞めて潰れてしまったけれど、昔から似たような手口で家主や投資家を食い物にする業者はたくさんいた。

B社長 ちょっと前にニュースになっていた「フラット35」の不正利用も、結局、自分達が設けるために投資家を巻き込んで金融機関を騙したわけでしょう。営業マンが独断で行っていたことで、会社は関与していなかったみたいだけどね。

D社長 でも明るみに出たのは氷山の一角で、ずいぶん前から業界で横行していた手口だという話もあるしね。まあこの件に関しては、金融機関の審査方法にも問題があったと思うけどね。結局、彼らもどんどん融資して実績を作らなければならない。ここのところ、首都圏では不動産の価格がどんどん値上がりしている影響で購買意欲が低下しているから、住宅ローンだけでは融資残高は増えない。不正利用だと薄々気付いていても、実績を作るために融資するしかなかったんじゃないかな。もし発覚しても、直接関与したわけではないから「騙された」と言えば自分たちも被害者になれるしね。

A社長 業界的には不正が次々に発覚して大変だけど、この際、膿は全部出してしまった方がいいんだろうね。不動産業に携わっている以上、我々だって完全にクリアだとは言い切れない。グレーだと分かっていても、人間関係だとか利益のために、一度や二度は危ない橋を渡ったことはありますしね。

C社長 いずれにせよ、不動産業に携わっている人間が後ろ指を指されないように、業界全体が兜の尾を引き締める必要があると思いますよ。家主や入居者を“金のなる木”のように見ている業者は排除されるべきだよね。

-大手による不祥事が相次いでいることを受けて行った今回の覆面座談会。信じられないような話も次々に飛び出した。しかし、原因を突き詰めると、それは全て不動産業界の閉鎖性にあるのではないだろうか。健全化のためにはもっと開かれた業界にしていく必要があると感じられる。


参加者プロフィール

A社長 不動産業歴25年。大阪・京都で管理業を中心に、不動産業全般を手掛けている。
B社長 大阪の不動産会社に20年勤めた後、2年前に独立。投資用不動産の販売に力を入れている。
C社長 神奈川県で約2000戸を管理する不動産会社を経営。不動産経験30年、参加メンバーで一番豊富な実務経験を持つ
D社長 参加メンバー最年少の若干30歳ながら業歴は12年。5年前に独立し、現在不動産コンサルティングやリノベーションに注力している。