闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論~(第5回回)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.04.20

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論~(第5回回)

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論~(第5回回)
会社に訪問に行ったときによく言われる言葉がある。

「うちにはやる気のある社員がいないからね」
「最近の若い子は、以前のように働かないからね」
「何度言ってもダメなんだよ」

・・・そう、愚痴にはキリがない。従業員とは名の通り“従う”社員ということだが、昔は社長も上司も厳しかった。嫌なことは毎日のようにあったが、仕事だからと思って従った。しかし、今は違う。

「労働基準監督署に行ってきます」
「ブラック企業だとマスコミに言います」
そろそろ従業員という言葉に代わる新語を造らないといけないのかもしれない。

 野村監督は今から30年前に、「特許取得したら?」と思うような発明をしている。それは「ぼやき」である。辞書を調べてみると、

「ぼやく」・・・ブツブツと不平や泣き言いう事
「ぼやき」・・・愚痴や泣き言、不平不満をぼそぼそとつぶやくような事

と、その意味を解説している。
 今の時代、こちらは指導のつもりでも、少し言い方を間違えただけでパワハラやブラック企業と言われてしまう。「褒めて伸ばせ」という本もあるが、実際のところ褒めてうまくいった会社は見たことがない。なぜなら「褒めて伸ばせ」は、これは従業員や新入社員を格下に見ている教育方法に他ならないからだ。
 義務教育であれば「よくがんばったね」「すごくできるようになったね」と、年の離れた先生が言うのは構わないが、それをプロに対してやるのは失礼だ。野村監督の考え方は、社会人になった時点、あるいは給料をもらう立場になった時点で「プロ」なのである。だからプロとして対等に扱う。「プロとしての自覚がない者には、それなりの結果しか出ない」「プロなら自分で考えろ、教わるものではない」というのが、野村監督の考えだ。
 ただ、現実は自発的に考え、教えを乞いに来る優秀な社員ばかりではない。かといって、教えて欲しいと思ってもいない社員にとっては、「こうした方が良いよ」「この考え方は違うよ」というような指導は苦痛でしかなく、結果、翌日になると「腹痛になりました」と言って会社を休むことになる。
 そこで野村監督が発明したのが「ぼやき」である。愚痴や泣き言、不平不満をぼそぼそとつぶやく。相手に対してではない。自分に対してつぶやくのである。

「なんでこうなっちゃったんだろうね~」
「ちょっと考えれば分かることなんだけどね~」
「これでは何回やってもダメだわ~」
「本当にガックリだよ」

これが「ぼやき話法」である。直接選手に言っているのではない。野村監督の心に刻んでいるのだ。相手に言っていない以上、パワハラではないし、明日のズル休みの理由にされることもない。選手は監督の心の叫びを間接的に聞くのである。「ぼやき話法」で選手をコントロールする話術は、改めて聞きなおすと奥が深い。

(次回へ続く)