闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第10回)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.09.21

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第10回)

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第10回)
05 1番の法則-自分を成長させる糧とは②

 野村監督は一軍に上がるために、もっとも選手層が薄く、ライバルのいないポジションを選んだ。これは商売にも通じる。
資本力もこれといった武器もない会社が1番を目指すのであれば、まずはライバル企業が少ない弱い地域から攻めるのだ。それであれば「地域No.1」という称号も手に入れやすい。「御用聞き、真説度No.1」といった、大手にはできない小回りを武器にするのも良いだろう。
 「価格No.1」という称号もあるが、これはお客様を集客する分には効果的だが、実際には価格で大手と競争するのは難しい。ならばすべての商品でなくても、一部の商品に絞って「○○商材の価格は、地域ダントツNo.1価格です」と広告を売ってみたらどうだろうか?お客様は「もしかしたらこの商品以外も安いお店なのかも?」という印象を抱くかもしれない。
 とにかくニッチな分野だけでも、他店に劣らないNo.1企業になることが大切だ。そしてシェア1番をとらなければならない。お客様の購買行動の95%は無意識のうちに構成される。だから企業イメージさえ定着させることができれば、店舗に安い商品を並べなくても、お客様はすべて安いと思って買っていく。
 そして最後に失敗しない方法だ。反響があったお客様が、すべてお客様とは限らない。儲からない会社・お店には、お客様を選択していないという共通点がある。自社あるいは自店に対象客でない場合は、喜んでNo.2以下の会社に紹介するべきだ。
 野村監督の時代の長嶋・王というスターはそれぞれ、「人気」「記録」No.1である。天性の天才「長嶋」、記録を打ち立てた「王」、両者ともに圧倒的なNo.1である。ただし、それは一般人が真似をしてもできない憧れ的存在である。
 野村監督の魅力は何だろうか?華やかなデビューを飾ったわけではないし、みながこぞって背番号を取り合った選手でもない。しかし、野村監督を好きなファンは多い。
 前出の2人の憧れに対して、どこか私たち凡人の代表者的な感じがするのかもしれない。

野村 外野かファーストをやれば良かったよ。そしたらもう少しホームラン打てたから。今だから言うけど、王に簡単に記録を破られたときは頭にきたね。当時はラビットボールを使っている年で、ホームランがすごく多かったんだよ。小鶴さんのプロ野球記録シーズン51本塁打はずっと破られていなかったんだよ。それを10年ぶりに俺が52本打って破った。それも劇的だよ。最終試合の最終打席。ここで撃たないと小鶴さんとタイ記録。

-タイ記録止まりになっちゃんですね。

野村 そうだよ。俺は神様はついているなと思ったね。

-最後の打席ですから、何が何でも打ってやろうと狙っていたわけですね。

野村 不名誉な記録、ピッチャーとすれば新記録のピッチャーになりたくない。近鉄の山本というピッチャーで勝負してこないのよ。外に全部外してスリーボール。このヤローと思って踏み込んで、目をつぶってガーン!と打ったの。それでギリギリスレスレでスタンドに入ったホームランが52本目。苦労して10年ぶりに更新した新記録だから、これでまた10年は持つなと思っていたら翌年、王が55本打って簡単に破られちゃったよ。それで仕返しする場はオールスターしかないからはりきったね。オールスターで王は20何打席かノーヒット。ホームランどころかヒットもない。この日名誉な記録は全然取り上げられなかったよ。そのときのキャッチャーは全部俺だ。絶対に打たせない。「セ・リーグのピッチャー諸君、王はこうやって攻めるんだ!」という意識でやっていたけど、誰も見ていなかったね。