タカラスタンダード リフォーム部門の苦戦続き、業績は前年同期を下回る|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.04.05

タカラスタンダード リフォーム部門の苦戦続き、業績は前年同期を下回る

タカラスタンダード リフォーム部門の苦戦続き、業績は前年同期を下回る
通期予想の上方修正を、不安視する声も

 鎮静化する気配が見えない新型コロナウイルスの影響で、住宅設備メーカーの苦戦が続いている。2月、タカラスタンダード(大阪市城東区)は2021年3月期第3四半期(4-12月)を発表した。連結売上高は前年同期比6.6%減の約1446億5800万円。営業利益は同26.9%減の役90億7100万円、経常利益は同26.3%減の約94億7300万円、純利益は同27.5%減の63億1600万円だった。昨年11月に発表された第2四半期決算と比べれば、一定の改善は見られたため、結果を好意的に受け取る投資家もいるようだが、一方で、厳しい意見も目立つ。その理由は、リフォーム部門の業績の回復が遅れていることにあるようだ。
 資料によると、新築部門はコロナの影響を受けながらも、前年同四半期並みの売上高を確保したとしている。新築需要の激減が顕著な中で、これはまずまず健闘したと言えるだろう。一方でリフォーム部門は、「コロナ禍における営業活動自粛の影響で、すべての製品部門が前年同四半期の売上高を下回った」としている。第3四半期連結会計期間で回復傾向にはあるようだが、リフォーム部門の不振が、同社の業績の足を引っ張った感は否めない。
 コロナの感染が広がり始めた直後は、リフォーム市場も一時的に需要が大きく減少した。しかしその後、在宅勤務が浸透し、人々が家で過ごす時間が増えると状況は一変。今度はリフォーム需要が一気に増え出し、市場は緩やかながらも回復傾向に転じた。「テレワークリフォーム」という新しいリフォームも台頭した。そうした中で、なぜ同社のリフォーム部門の回復が遅れているのか。その原因について、今のところ同社から明確な発表はないものの、いくつかの理由が推測される。一つは同社のリフォーム向け製品が、他社と比べて高いことだ。
 タカラスタンダードの製品は、定価ベースでは他社のものよりも総じて安いというのが一般的な評価だ。実際、他社の半額以下ということも珍しくない。ホーローという他社にはない特殊な素材を使っているにもかかわらずなぜ価格が安いのか?それは、利益率が低く抑えているからに他ならない。もちろん、定価の時点で利益が少ないのだから、ほとんど値引きはできない。一方、他の住設メーカーは、ある程度の値引きを織り込んだうえで、定価は高めに設定している。そもそもホーローなような特殊な素材を使っているわけではないないので、製造原価は安い。つまり、業者はタカラスタンダードの製品と他の住設メーカーの製品、どちらを売った方が儲かるかというと、後者の方が売り方さえ間違わなければ確実に儲かるというわけだ。だから「利益の出しにくいタカラスタンダードの製品は採用したくない」という業者も少なくない。これが、リフォーム需要が増えている中で、同社のリフォーム部門がいまいち勢いに乗れない原因の一つだと推測される。
 また、これは本紙でも以前に触れたことだが、そもそも同社の製品は新築向けに比べて、リフォーム向けは高いと言われている。いくらコロナ禍でリフォーム場が伸びているとはいえ、財布の紐が緩くなったわけではない。また、同社のキッチンは、他社のものと比べると耐久性やメンテナンス性に優れているかもしれないが、そこにお金をかけるのであれば、「シンクが水の掃けやすい形状になっている」「レンジフードが自動で洗浄できる」など、機能面にお金をかけた方がいいと考える人も少なくないはずだ。
 今回の決算では、第3四半期単体では全部門で昨年度の実績を上回ったことから、同社は通期の連結業績予想を上方修正した。特に利益面については、前回予想から4割超の増加を見込むなど、強気な姿勢だ。しかし、これは少々楽観的過ぎるのではないだろうか?不安視する専門家も少なくない。依然として、コロナが収束しそうな気配はなく、先行きは不透明な状態のままだ。決算の段階になって再び「予想に到達しませんでした」という結果にならないことを祈るばかりだ。