エレベータメンテナンスの裏事情(前編)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.04.19

エレベータメンテナンスの裏事情(前編)

エレベータメンテナンスの裏事情(前編)
メーカー系と独立系、メンテナス会社はどちらがいいの?

「経費削減のため、エレベータのメンテナンス会社を見直そうと思うのだけれど、いろいろな業者があってどこを選べばよいのか分からない・・・。一体、何を基準に選んだらよいのだろうか?」

 ビルオーナーやマンションオーナーと話をしていると、よくこんな言葉を聞きます。確かに、エレベータのメンテナンスは業者によって価格もマチマチですし、大手もいれば中小企業もいて、どの業者が良いのか分かりにくいところがあります。今回から2回に分けて、エレベータのメンテナンスについてまとめたいと思います。

 みなさんは、所有物件のエレベータメンテナンスを、どちらの会社に任せていますか?「三菱」「東芝」「日立」など、まっさきに挙がるのはこうした大手の名前だと思いますが、他の会社に任せているという方も多くいらっしゃるかと思います。
 エレベータのメンテナンス会社は、大きく2つに分類することができます。一つは「メーカー系」と呼ばれる会社で、これは読んで字のごとく、エレベータを製造しているメーカー系列のメンテナンス会社のことを指します。冒頭で出てきた大手はこれに当たり、他にも日本オーチス・エレベータやフジテックといった会社の系列企業があります。
 一方、これと対極をなすのが「独立系」と呼ばれるメンテナンス会社です。これは、特定のメーカーに属さないメンテナンスの専門会社です。「メーカー系」との大きな違いは、「メーカー系」が自社系列のエレベータのメンテナンスしか請け負わないのに対し、「独立系」はメーカーを問わず、いろいろなエレベータのメンテナンスを請け負う点です。例えば、日立製作所製のエレベータのメンテナンスは、系列の日立ビルテック、もしくは独立系の○○○というメンテナンス会社にしか頼むことができません。東芝エレベータ系に依頼しても、断られてしまいます。
 なぜ、「メーカー系」と「独立系」という、2つの系統のメンテナンス会社があるのでしょうか?それを理解するために、それぞれのメリットとデメリットについて詳しく見ていきたいと思います。

①メーカー系

【メリット】
・大手の信用力
 エレベータの開発・製造には莫大なコストがかかるため、必然的にメーカーは大手が中心となります。したがって系列のメンテナンス会社には、いずれも大手の看板というブランド力があります。この点が、「メーカー系」の一番の強みだといえます。もちろん技術力についても、大手のブランド力で担保されています。
・部品調達力
 「メーカー系」はグループで製造したエレベータのメンテナンスを請け負うわけですから、故障した部品を融通しやすい立場にあります。部品を欠品させることもありません。

【デメリット】
・料金が高い
エレベータメーカーは、エレベータの販売自体で大きな利益を出そうとは考えていません。開発や製造にかかるコストは、メンテナンス費に上乗せして回収する傾向にあります。したがって、その分だけメンテナンス費は高くなります。

②独立系

【メリット】
・料金が安い
 メンテナンス費に開発や製造にかかるコストが上乗せされていない分、「メーカー系」よりも価格が安い傾向にあります。ただし、競合が少ない地方は競争原理が働かないため、独立系であっても、都心部により価格が高くなることがあります。
・メーカーを問わず対応してくれる
 先程も述べたように、独立系の会社は製造メーカーを問わず対応してくれます。結果的に、独立系の会社を競わせることで、経費削減もしやすくなります。

【デメリット】
・メーカー系と比べて知名度が低い
 「独立系」の会社の多くは、地場の中小企業です。したがって、「メーカー系」と比べると知名度は低いです。ただし、独立系で上場している大手もあります。「安いに越したことはないが、知名度も大事にしたい」という方は、そうした会社を使われてはいかがでしょうか?
・部品の調達に時間がかかることがある
 独立系の強みは、いろいろなメーカーのエレベータに対応できることにありますが、そうかといって、あらゆるメーカーの部品を常備しておくことはできません。基本的には、在庫のない部品はメーカーから取り寄せることになります。したがって、対応に時間がかかってしまう場合があります。

 「メーカー系」と「独立系」、それぞれメリットもあればデメリットもあります。どちらを優先するかは、結局はオーナーの判断次第です。ただし、最近はいろいろな情報が容易に手に入るようになったため、メーカー系の強みは以前と比べると、薄れているように感じます。一方で、コスト削減の重要性が以前よりもましているため、独立系の存在感は高まっています。みなさんも一度、エレベータのメンテナスについて見直してみてはいかがでしょうか?

(寄稿)
一般社団法人 消費者建物管理協会(消管協)
全国1200店を超える不動産会社、管理会社、メンテナンス会社、オーナー様が利用する団体です。消費者よりわかり難い建物の管理料金や修理代金の適正金額のアドバイスをしてほしいという声から生まれました。消費者がよりわかり易く、利用しやすい業界にすることを目的としております。