リフォーム取引販売士に聞きました~ニセの写真を使った悪質な手口~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2022.11.21

リフォーム取引販売士に聞きました~ニセの写真を使った悪質な手口~

リフォーム取引販売士に聞きました~ニセの写真を使った悪質な手口~
一人暮らしの母親が嘘の屋根修理で15万円を騙し取られる!

 悪質なリフォーム詐欺が後を絶ちません。今回も高齢者が被害に遭った事例を取材ました。

 「2017年頃の話です。一人暮らしの母に半月ぶりに電話をしたところ、少し前に屋根を修理したと聞かされた。いろいろ不自然な点があったため調べてみたところ、リフォーム詐欺だと分かった。普段は週一ペースで連絡をしていたのですが、そのときはたまたま仕事で忙しく、連絡がひと月ほど空いてしまったんです。今でも後悔しています」

 こう話すのは、千葉県市川市に在住の栗原真一さん(仮名・39)です。
栗原さんは一人っ子で、お父様はすでに他界、母親の登紀子さん(当時75)は愛知県安城市で一人暮らしをされていました。千葉県内の会社に勤めている栗原さんは、高齢な母を離れた場所で一人暮らしをさせておくことに抵抗感があったため、過去に何度か「一緒に暮らさないか」と誘ったそうですが、登紀子さんには「お父さんとの思い出がある家を離れたくない」という理由で断られていました。登紀子さんが健康的にまったく問題なかったこともあり、結局話は前に進まないまま、別々で暮らす生活が続いていました。ただ、念のため健康状態やその週に起こった出来事などを確認するため、週一回、週末に欠かさず電話をするようにしていたそうです。
 しかし、悲劇は起きてしまいました。栗原さん曰く、原因は「油断」でした。

「海外出張で2週間ほど日本を離れることになったんです。時差の関係で電話をかけるのが難しかったことに加え、直前の電話で何の問題もなかったため、1週間くらい空けても大丈夫だろうと思ってしまったんです。それがそもそもの間違いでした」

 出張を終えて日本に帰国した栗原さんは、海外の土産話を聞けせるつもりで、2週間ぶりに登紀子さんに電話をかけました。

「海外での仕事の話や体調についての話を一通り聞き、そろそろ電話を切り上げようかと思ったときでした。母が突然、『そういえば屋根を直したわよ』と言い出したんです」

 それまで実家の屋根が傷んでいるという話を聞いたことがなかった栗原さんは、なんで突然、屋根を直すことになったのか、事の経緯を詳しく聞きました。

「ちょうど私が日本を発った日に、リフォーム会社の営業マンを名乗る女性が訪ねてきたらしいのです。相手が女性だったこともあり、最初の2、3日は挨拶をする程度だったのが、そのうちちょっとした世間話をするようになり、1週間後に屋根を無料点検させてくれないかと言ってきたそうです。さすがに母も最初は断ったそうですが、「点検のノルマがあるんです」と言われたため、無料なら構わないかと思い直して屋根に上ることを許してしまったんです」

 女性とは別にやってきた作業員は、馴れた足取りで屋根の上に駆け上がり、20分ほど点検作業をしておりてくると、登紀子さんに向かって次のように言ったそうです。

「だいぶ古いお宅ですが、見たところ、これまで一度も屋根のメンテナンスをしていませんね。あちこちにかなりの傷みがあります。すぐに直さないと雨漏りするかもしれませんね」

 まったく予想だにしなかった報告を受けた登紀子さんは思わず、

「そんなにひどい状態なんですか?」

と聞き返しました。すると、男性作業員は手に持っていたデジタルがカメラで、いくつかの写真を登紀子さんに見せました。そこには、ヒビの入っていたり一部が欠け落ちている瓦の写真が写っていたそうです」

 驚いた登紀子さんがどうすれば良いのかと尋ねると、男性は

「ちょうど近くにある別のお宅の屋根の修理で道具を持ってきているので、すぐに対応できます。キャンペーン中で修理代もかなり安くなっているので、15万円で完全に直すことができますよ」

と答えました。すかさず隣にいた女性営業マンも熱心に修理を勧めてきたため、悩んだ挙句、登紀子さんはその場で契約書に判子を押してしまいました。修理作業はその日のうちに行われ、翌日の午後、登紀子さんは女性に代金を現金で支払ったそうです。

 以上の話を聞いた栗原さんは大きな不安を抱き、すぐに実家近くにある工務店にそれまでの経緯を話した上で屋根の点検を依頼。数日後、上がってきた報告書を見て愕然としたそうです。

「破損も修理後のようなものも一切見つからなかったそうです。担当者曰く、母が見せられた写真は他の家の屋根の写真だったのではないかということでした。女性営業マンが置いていった名刺の電話番号にかけてみてもつながりませんでした。母はまんまと15万円を騙し取られてしまったわけです」

 栗原さんは念のため、消費者センターにことの一部始終を報告しましたが、お金が返ってくる見込みはほとんどないと言われたそうです。

 詐欺師たちは一人暮らしの高齢者を狙って、日夜、街中を歩き回っています。高齢の親が離れた場所で一人暮らしをしているという方は、知らない人を家の中に入れたりしないように、改めて注意喚起してください。リフォームに関するトラブルのご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。