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豆知識

2023.01.16

気になるあのニュースの真相

気になるあのニュースの真相
日銀総裁交代でゼロ金利・マイナス金利政策にピリオドか?

 新型コロナウイルス感染症が流行し始めた直後、不動産専門家の多くは「経営不振に陥る企業が続出し、不動産の価格は一気に下落するはずだ」という予測をしていた。しかし、蓋を開けてみれば状況は全く逆で、確かに一部の大手企業による所有物件の売却はあったものの、価格相場は下がるどころか上がり続けた。結局、コロナ禍も異次元の金融緩和には勝てなかったということだ。しかし、その状況にようやくピリオドが打たれるかもしれない。近づきつつある日銀総裁交代を機に、金利が引き上げられると言われているからだ。今後の不動産市場の動向について取材した。

 日本銀行の黒田東彦総裁の任期は今年4月までだ。つまりあと4ヶ月で、日銀の総裁は後退になるわけだ。いろいろな予想はあるが、誰が後任になるかは現時点でははっきり決まっていない。しかし、誰が新たな総裁になっても、必ず終了されると言われている政策が一つだけある。ゼロ金利、マイナス金利政策だ。
 ゼロ金利、マイナス金利政策は、黒田総裁が10年にもわたって続けてきた政策だ。もちろん、時の首相・安倍晋三総理が打ち出した「アベノミクス」を実現するために行ったものではあるが、結論から言えば、経済面で一定の効果はあったかもしれないが、劇的な変化をもたらすものではなかった。不動産に限って言えば、異常なまでの価格高騰を招くばかりだった。それでも、国民の平均所得が上がっていたのならまだいい。しかし、実際は平均所得はまったくといっていいほど上がらず、不動産価格との差は開いていく一方だった。もともと“高嶺の花”だったマイホームは、さらに遠く手の届かないものになってしまった。大手不動産会社はこの10年を振り返り、次のように話す。

「例えば都内の新築マンションであれば、この10年で1.2倍から、高いものだと1.5倍にまで価格が上がりました。結果、新築はとても手が出ないと、消費者の目は中古市場に向けられるようになりましたが、中古も状況は似たり寄ったり。新築ほどではないですが、10年前と比べたら価格はかなり上がりました。もはや都心部の良い場所で物件を購入するのは、一般消費者には至難の業です。ゼロ金利、マイナス金利政自体、間違っていたとは思いませんが、その恩恵は一番受けて欲しかった一般消費者には届かなかったのだと思います」

 果たして、この状況は新総裁の就任によって本当に変わるのか。仮にゼロ金利、マイナス金利政策が終了するとして、不動産市場にはどんな影響が出るのか。セオリー通りのことが起こるとすれば、金利が上がれば市場の活力が失われるため、不動産の価格は下がる。高い金利を支払ってまで不動産を買おうとするのは、ごく一部の人に限られるからだ。当然、買い手が少なくなればそれだけ競争も少なくなるため、価格は下がる。「活力が失われるから価格が下がる」と聞くと、ものすごいマイナスのイメージを抱いてしまうかもしれないが、実はそうではない。むしろ、ゼロ金利やマイナス金利なんてことを10年間も続けてきたことの方が異常だったのだ。だから、こうした政策をやめることは、経済が正常な状態に戻ることを意味する。

「金利は低ければ低いほどいい」
「究極の理想は金利ゼロでお金を借りられること」

と考える人もいるかもしれないが、実際はそんなことはない。融資の過程で人が介在する以上、金利がないと仕組み自体が成り立たない。きちんと冷静に考えれば、金利のある社会の方が健全だということは、すぐに分かるはずだ。
 少々話は逸れたが、いずれにせよ、今年4月以降、不動産市場では大きな動きがあるかもしれない。もちろん、ゼロ金利、マイナス金利が廃止されたからといって、すぐに不動産価格が下落するわけではない。その影響がはっきりと出るまでには、早くとも半年から1年はかかるだろう。一方で、金利が上がっても不動産を買いたいという人は一定数いる。むしろ、現金資産を多く持っている人は、金利について考える必要はなく。価格が下がったことをこれ幸いに〝買い“に走るだろう。
 いずれにせよ2023年は、不動産市場の動向から目を離せない。不動産投資にご興味のある方は、お近くの全国優良リフォーム会員にご相談下さい。