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2016.09.07

田原総一朗 時代を読む

田原総一朗 時代を読む
インタビュー
田原総一朗 時代を読む

─ 聞き手:住生活新聞記者 ─

 
「朝まで生テレビ!」の司会をはじめ、フリージャーナリストとしてさまざまなメディアで活躍している田原総一朗さん。歯に衣着せぬ鋭い論評には定評があり、この「住生活新聞」の読者の間でも高い人気を誇っている。

 今回、その田原さんにインタビューさせていただけることになった。御年82歳と、自分の父親よりも年上の男性、しかも「生テレビ!」で海千山千の論客たちに鋭く切り込んできた、あの田原さんである。果たしてどうなることかといささか緊張して、待ち合わせの都内のホテルで田原さんの到着を待つこと数分…。
 約束の時間通りに現れた田原さんは、まずニコリと微笑みながら、われわれ取材班に名刺をくださった。そしてゆったりとソファーに腰を下ろすと、「今日は何の話をすればいいの?」。その言葉を受けて「あ…では、こちらから質問させていただきますので…」と緊張の中、インタビューは始まった。


─著書『逆風を追い風に変えた19人の底力』(’09年)の中でも、「ベンチャービジネスや中小企業の経営者たちに話を聞くのが大好き」だと書かれていた田原さんですが、今もたくさんの経営者の方々とお会いしているのですか。
 ええ。若いベンチャービジネスの経営者たちにたくさん会っていて、これまで少なくとも1000人以上を見ています。今アメリカではほとんどの学生が大学を卒業する際に起業をしていますが、日本でも起業する人たちが増えてきていると思います。

─そうした経営者の方々をご覧になってみて、「経営者が成功するための一番の条件」は何だと思われますか。

 〝誠実である〟ということ。当然のことだけど、やはり信用が一番大事だからね。
 もちろんお客さんからも信用されなきゃいけないし、経営者としては従業員からも信用されなきゃいけない。
 僕は滋賀県の出身で、近江商人の末裔なんだけど、近江商人の世界には昔から「三方善し」という言葉があります。
 私も、子供の頃からよく聞かされていた。数字の「三」に、方角の「方」、そして「善」と書くんだけど…。

 (ノートにメモを取りながらお話を聞いていた私に、「三方善し」の表記を教えてくださった田原さん。ありがたいお心遣いである。そして、こう続けてくださった)
 「三方善し」とは、まずお客さんから信頼されること。お客さんから信頼されれば、社会からも信頼される。お客さんが集まったものが社会だから。そうすれば、自分の商売がうまくいく。お客さん、社会、自分の「三方」が「善し」という

こと。難しいことではないけど、何事も誠実でなければうまくいかない。
 たとえば、住宅だってそう。住宅は長い期間人が住むわけだから、誠実さ、信用が一番大事。ところが近年は、欠陥住宅がよく見つかったりするでしょう。「ちゃんと杭が打てていなかった」とか。ああいう誠実さを欠いた出来事が起こると、住宅業界全体が疑わしいんじゃないかと信用を失うことになる。
 (テーブルの上に置かれた『住生活新聞』を見てこちらに気を遣ってくださったのか、「住宅業界」にまで話を広げていただいた田原さん。これまた、ありがたいお心遣いだ)

─興趣が尽きない田原さんへのインタビューは次号へつづきます─
田原 総一朗

1934年滋賀県彦根市生まれ
早稲田大学文学部卒業
ジャーナリスト。
東京12チャンネル(現・テレビ東京)ディレクターを経てフリーに。
「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」出演をはじめ、独自の視点で政治・経済の問題に切り込む姿は、他の追随を許さない。『安倍政権への遺言~首相、これだけは言いたい』(朝日新聞出版)、『トットちゃんとソウくんの戦争』(共著/講談社)など著書多数。