どうなる民泊! 最新動向レポート|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2017.04.12

どうなる民泊! 最新動向レポート

どうなる民泊! 最新動向レポート
観光産業のために民泊は必要
4万8000件以上が登録


 訪日外国人観光客の増加に伴い大きな脚光を浴びるようになった、自宅やマンションの空き部屋を有料で貸し出す「民泊」。ホテルや旅館不足から外国人の需要が急増したことで収益性も高まり、民泊ビジネスに乗り出す不動産投資家もここ数年で一気に増えた。民泊物件の仲介サイトAirbnb(エアー・ビー・アンド・ビー)に登録されている物件は、今年2月時点で4万8000件以上とも言われ、市場自体が大きな盛り上がりを見せていることが分かる。

 しかし、物件の増加に伴い、世の中ではさまざまな問題を引き起こしてきたことも事実。例えば分譲マンションの1室を利用したケースでは、「毎日いろいろな外国人が出入りして不安だ」「マンション内のルールを守らずにゴミを捨てる」「夜間に騒ぐ」など、近隣住民とのトラブルが多数報告されている。すでに多くの分譲マンションでは管理組合や管理会社によって民泊が禁止されていて、今後売り出される新築マンションも、民泊目的での購入を禁止しているケースが多い。戸建てを利用した民泊でも、「夜遅くケースを引きずる音がうるさい」「夜間に大音量で音楽を流すため眠れない」などの苦情が多々寄せられ、民泊事業者と近隣住民との間でトラブルに発展するケースが後を絶たないという。
 そもそも個人や法人が有償で、反復継続して部屋を貸し出す行為は、旅館業法の適用対象だ。つまり、建物は部屋の数や広さなど、業法内に規定された仕様条件を満たさなければならず、運営についても法律に則って行わなければならない。住宅として建築された物件がこうした諸条件を満たせるケースは稀で、特に賃貸マンションの転用物を中心に、世の中には法律違反の民泊物件が溢れかえっているというのが実情だ。
どうなる民泊! 最新動向レポート
こうした背景から政府は現在、有識者や関係者らを集めての話し合いを重ね、民泊に関する法整備を進めている。注意しておきたいのは、これは民泊を取り締まって世の中から無くそうというものではない。一時的に解消傾向にあるとはいえ、国内のホテル・旅館不足はまだまだ深刻だ。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、今後も増加が予想される外国人観光客の受け皿として民泊は、絶対不可欠な存在であることは間違いない。地方の観光産業を盛り上げる上でも、民泊に寄せられる期待は大きいはずだ。さらに税制改正に伴う賃貸住宅の供給ラッシュで急増した空室を活用する意味でも、最も有効な手段だと考えられる。

 年内にはいよいよ、民泊新法としても注目されている「住宅宿泊事業法」が施行されると言われている。民泊が秘める可能性は誰もが認めるところであり、だからこそ新法にかかる期待も大きい。ホテルや旅館など、既存の宿泊施設との公平性や、常に問題となる近隣住民とのトラブル回避など、配慮しなければならない点は多いが、観光産業や不動産市場の活性化させるためにも、一日も早い新法施行が待たれる。
関連事業者は登録・認可手続きが必要
 年内の施行が予定されている「住宅宿泊事業法」、いわゆる民泊新法だが、その内容とはいかなるものなのか。自民党国道交通部会などが中心となってまとめた法案についてまとめた。
 新法の適用対象となるのは、①住宅宿泊事業者(民泊ホスト)と②住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)、③住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の3種類で、それぞれ管轄省庁への登録や認可手続きなどが義務付けられている。例えば①の場合、都道府県知事に届を出すことで、旅館業法の認可がなくても民泊を運営することができるようになる。届時には事業者の概要が分かる資料や建物図面の提出が必要だ。②は国土交通省大臣の登録を受ける必要があり、5年ごとに更新手続きとらなければならない。また、登録時には免許税として9万円が徴収される。③は観光庁長官の登録を受けてサイト運営を行わなければならず、②と同様に免許税9万円がかかる。
 新法では、各事業者の定義や守るべき義務とともに、1年間に行うことができる民泊事業の上限日数を180日以内と明記。
 これらのルールに違反した場合は1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されることになる。