闘将野村「新経営論」第14回|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.02.05

闘将野村「新経営論」第14回

闘将野村「新経営論」第14回
社員教育のあるべき姿

 昔は誰かに物事を教えてもらうとき、師匠と弟子という関係があった。私も会社に就職した時は、営業のできる先輩に言われた。
「一言で言ってしまえば簡単なこともある。でもみんな仕事を取るために必死に考えて、失敗してできたノウハウを、簡単に後輩に教えることはできない。それで一生飯を食っていけるのだから」
 基本的なことは教えてやる。ただし成功するノウハウは盗めということである。先輩社員のお客様に対した時の目線の置き方、入りの声のトーン、出るときの話口調。話す順番は、まるで詰将棋のようだった。
 一生お金に困らない術を教えてもらうのだから、教えてくれない会社が悪いという姿勢ではダメなのではないだろうか?

 新入社員も3ヶ月もしないうちに営業ができる社員とそうでない社員の差がついてくる。何が違うのか。マネをしている社員と考え方を盗んでいる社員との差である。営業のロープレの練習をいくらやってもその差は埋まらない。なぜならロープレはあくまでも話す順番を暗記しているだけで、実際にお客様と接したときに必要なのは、その場に応じた判断であるからだ。
 
 仕事ができる人間とできない人間の差は、シンクロ率の速さである。できる人間は、お客様と話すときに呼吸を合わせて心臓の音を合わせてくる。シンクロが早いとお客様との共鳴が早く、受け入れてくれやすくなるから成約できるのである。

 野村監督は、この対談のタイトル『闘将野村新経営論』というタイトルを見て、「全く見当違いの所に来ていないかい?俺はバカの野村だよ。こんなバカに経営なんて分からないよ」と笑っておどけて見せた。こちらが緊張しないように、監督から雰囲気を作ってきて、私との間合いを詰めてくる。一気にこちらも話しやすくなる。監督時代からマスコミを上手に利用してきた野村監督の営業術である。
 
まだ、監督が2軍時代に、1軍が優勝した時の話である。

野村 3年目のキャンプがハワイで、プロペラしか飛んでない時代に海外旅行なんて一般的にはまずないですよ。それでキャンプに行くから人手が必要だって、一軍の監督がおっしゃられて、俺の先輩で小杉さん・相場さんていう人がいたの。この人達までとばっかり思ってたら、俺も推薦してもらえて、それで一軍キャンプに一緒に行ったの。ハワイなんて珍しいから、日本人が経営するコバヤシホテルに泊まってたんだけど、夜なんか誰もいなくてマネージャーと俺だけ。俺は給料安いし金も一銭も持って行かなかった。つまり1日2ドルの手当てが出るんだけど、それを5日間貯めて土産買って帰ろうと決めてたから。どっこも行ってないの。それで最後にね、明日日本に帰るって日に、同級生の戸川っていうピッチャーがいるんだけど、その親戚がハワイにいたから、俺がどこにも出てないということで親戚の家だけど行くかって。最後の晩にご飯に招待してもらって、いよいよ門限23時だから帰ろうって言ったら、今日は最後の日だからいいだろうって言われて遅れて帰るんですよ。そしたら本館から旧館の通路の所で、大声で全員集めて説教してるの。
それで3人で門限に遅れて帰って様子見てたの、どうせ怒られるんだから。行ったら案の定、大声で怒鳴られてビンタされて、そのまま通路で正座で座らされた。その時は折角チャンスを掴んだのに、また帰ったら二軍かよって凄いショックだったな。
海外旅行なんて珍しい時代だから、その時、一問一答ずっと読んでいったらハワイキャンプは大失敗だったっていうとこから始まって。みんな観光気分だったから練習どこころじゃなかったって言われたんだ。でもその中で1つだけ収穫はあったって、「野村に使える目途がついた」ってこれは嬉しかったね。凄い自信になった。


 会社には“お荷物社員”と“支える社員”がいる。自分の給料分しか稼げない社員。会社の経費や他の事務員の間接経費なども入れると、会社にとっては赤字の社員である。給料をもらうことが当たり前で、会社から給料がもらえるのは当たり前という自己主義の社員が増えると、会社の士気は下がり、会社の経営は傾き始める。
 自分が会社を支える側の社員になった時に、喜びを感じられる社員をいかにして採用し、教育するかが会社の将来を作るのである。