真説 賃貸業界史 第10回「連綿と続くエイブル人脈」|記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2018.09.10

真説 賃貸業界史 第10回「連綿と続くエイブル人脈」

真説 賃貸業界史 第10回「連綿と続くエイブル人脈」
大阪府議会議員も排出

 どこの業界でも、独立や暖簾分けはつきものだ。例えばラーメン業界では、池袋の名店「大勝軒」から暖簾分け、あるいは独立した店が全国各地に点在している。その数は30軒とも40軒とも言われる。賃貸仲介業ではこれがさらに顕著だ。わずか60万円の保証金さえあれば開業できるため、昔から独立する者が多い。関西や東北などで店舗展開するキンキホームは、かつては“不動産屋の学校”と言われていたほどで、多くの不動産業者を輩出してきた。今回から不定期で、賃貸業界で活躍する経営者の出身会社をもとにした人脈図を紹介する。 第1回目は、エイブル出身の経営者についてまとめた。
 エイブルは昭和43年、大阪建設として大阪の守口市で誕生した賃貸仲介の大手だ。昭和49年に社名を大建と変更し、平成4年に現在のエイブルになった。管理戸数約25万戸・仲介件数約15万件(2016年全国賃貸住宅新聞発表)はいずれも業界ベスト3に入る。今年は創立からちょうど50周年の節目の年にあたる。長い歴史の中で、多くの経営者を輩出してきた。
 大阪建設時代の出身者として真っ先に名前が挙がるのは、レンタルハウス(和歌山市吉田)の創業者である竹内利満氏(故人)だ。在籍中は物件情報誌「賃貸住宅ニュース」(週刊CHINATAI)の創刊に携わり、昭和55年に建築センターを創設して独立した。和歌山という地方都市にありながら、関西や関東でも賃貸仲介店舗を展開した。また、業界団体の活動にも積極的に参画し、賃貸市場の発展に尽力したが、65歳の若さで死去した。現在、アパマンショップ4店舗を運営しているが、かつての職場であるエイブルのフランチャイズに加盟していたこともある。
 滋賀県で「賃貸館」4店舗を展開するレック(滋賀県草津市)の石澤正義社長も、竹内氏と同じ時期に大阪建設で活躍した人物の一人だ。以前取材した際には、「現役時代の営業成績は常にトップクラスだったため、仕事が終わると必ず、オーナー社長から直接電話が入り、その日の成果を報告させられていた」という話を聞いた。大阪建設時代を知り、今なお現役で不動産会社を経営しているのは石澤社長の他には、ほとんどいないのではないだろうか。大建時代では、共同管理(京都市西京区)の宮林行雄社長と、セントラルホーム(大阪府堺市)の川端敬壱社長らが現役で活躍している。
 関西で一大勢力を築いている「minimini(ミニミニ)」はいずれもフランチャイズ店だが、加盟会社の社長はほとんどがエイブル出身だ。宅都ホールディングス(大阪市中央区)の太田卓利社長、成都不動産(大阪府豊中市)の松本哲生社長、シティネット(兵庫県神戸市)の石原直樹社長、レントホーム(大阪府藤井寺市)の佐伯透社長、穂積住宅(大阪府茨木市)の影山専務はいずれも、店長などの役職を経験した敏腕営業マンだったそうだ。それがなぜテリトリーを分けて「ミニミニ」の店舗を展開しているのか。それには次のような事情があった。
 最初に大阪で「ミニミニ」のFC店を立ち上げたのは上里不動産という会社で、太田社長達にとっては先輩もしくは同期にあたる上里正雄氏という人物が代表を務めていた。太田氏らも上里不動産の立ち上げに参加したわけだが、後に上里氏自身が不祥事を起こして会社は解散。以前、メンバーの一人に上里氏の人物像について聞いたことがあるが、「経営者としてやってはいけないことを全部やっていた」と話していた。
 上里不動産の解散を受けてメンバーは独立を決意。成都不動産は阪急宝塚線、宅都は地下鉄御堂筋線、シティネットは阪急神戸線という具合にテリトリーを分け、後に参加した彼らの後輩筋にあたる稲井理社長が立ち上げたトラスティーホーム(大阪府枚方市)も含め、以降「ミニミニ」の共同展開を進めることになる。現在、店舗数は大阪、兵庫、京都で100店舗を超えている。
 現在、大阪・兵庫で「アパマンショップ」6店舗を運営するダイワホームズ(大阪市北区)の山田輝昭社長もエイブル出身。宅都の太田社長とは同期だ。エイブル退職後、大阪の地場ゼネコン、浜口組に請われる形で入社し、賃貸部門の責任者として「アパマンショップ」の運営に携わった。
 この山田社長の元部下にあたるのが、大阪・兵庫で「暮らし」4店舗を展開しているリクレア・ライフエージェント(大阪市北区)の佐久川靖行社長だ。エイブル時代は最年少の23歳で店長に抜擢されるなど、抜群の営業成績を残した。職場の先輩・後輩としてエイブル時代は親しかったという2人だが、後にある出来事がきっかけで関係は微妙なものとなった。
佐久川氏はエイブル退職後、同じ職場の元同僚の支援を受けて阪神・神戸エリアで「アパマンショップ」を展開していた。しかし、経営方針の食い違いが原因で、関係は徐々に悪化。最後は修復不可能な状態となり、追い出されるような形で同社を後にした。その後、佐久川氏はレンタルハウスの竹内氏などの支援を受けて、大阪でリクレア・ライフエージェントを設立した。現在は退会して自社ブランドの店舗を展開してるが、一時期は「アパマンショップ」の看板を掲げていた。
 一方、佐久川氏が去った阪神エリアの「アパマンショップ」は、みるみる経営状況が悪化。自分の力で立て直しことは不可能だと判断した佐久川氏の元ビジネスパートナーは、旧知の山田氏を頼り、最終的に営業権を譲渡した。山田氏は元部下の佐久川氏が作った会社を引き取る形になったわけだ。佐久川氏からしてみれば、山田氏に対して複雑な想いを抱かざるを得ない。この一件で両者の関係性は微妙なものとなった。
 「センチュリー21」を3店舗展開するウィルハウス(兵庫県堺市)の代表で、大阪府議会議員も務める伊良原勉社長、FC店含め「賃貸館」22店舗を展開するルークスター(兵庫県明石市)の谷川公太社長らもエイブル出身。この世代は40代中盤に差し掛かり、経営者としてこれからもっとも脂の乗った時期を迎えようとしている。
 今回はエイブルが大阪発祥の会社であることから、便宜上、大阪で活躍する出身者の人脈図を紹介した。次回以降、新たな面々を加えてさらに話を広げていく予定だ。