相続不動産相談所「評価額8億円の土地 「等価交換方式」で5億円以上の評価減に成功」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.04.08

相続不動産相談所「評価額8億円の土地 「等価交換方式」で5億円以上の評価減に成功」

相続不動産相談所「評価額8億円の土地 「等価交換方式」で5億円以上の評価減に成功」
相続対策は、持っている資産の規模や内容によって最適な方法が異なります。経験やノウハウのない税理士に頼んでしまったばかりに、多額の税金を支払う羽目になったり、資産の一部を手放さなければならなくなってしまうケースも多々あります。今回は、「等価交換方式」を用いた相続対策について実例を交えてご紹介したいと思います。

 「等価交換方式」、ご存知ない方もおられると思いますので、まずはこちらがどういうものなのか説明させて頂きます。例えば、どう使えばよいか分からない土地があったとします。多くの方がまず検討するのはアパート・マンションといった賃貸経営ですが、賃貸住宅建設には多額の資金が必要です。そのため

「賃貸経営をしたいけれど自己資金がほとんどない・・・」
「現金はなるべく使いたくない」

こういった方は、手を付けられないまま、土地を放置することになります。こうした場合に有効だとされるのが「等価交換方式」です。
 これは簡単に言ってしまえば、「土地オーナーが-はマンション開発業者(デベロッパー)などと共同でマンションやビルを建設する」というものです。オーナーはマンションを建設するための土地を提供し、デベロッパーはそれを建てるための費用を負担します。それぞれの負担が投下になるようにして事業を行うことで、オーナーは資金の負担をせずに建物を取得することができ、一方のデベロッパーも土地取得のリスクを回避できるというわけです。
 それでは、都内で相続を専門に手掛けるA税理士事務所が手掛けた事例を見ていきましょう。A税理士は顧客であるXオーナーから相続対策の相談を受けました。Xさんは東京郊外に、評価額6億円の土地を所有しています。この土地に、等価交換方式を用いてデベロッパーと共同で4億円のマンションを建設することになりました。この時の負担割合は、総額10億円の事業に対し、オーナー6億円、デベロッパーが4億円ですので、6:4となります。等価交換ですので、建物が完成した後の所有権比率もこれがそのまま当てはめられることになります。つまり、

(オーナー)
土地:6億円×60%=3億6000万円
建物:4億円×60%=2億4000万円

(デベロッパー)
土地:6億円×40%=2億4000万円
建物:4億円×40%=1億6000万円

となります。
 次に、これで数字上どんなメリットが得られるのかを見ていきたいと思います。最初にも申し上げたように、一番のメリットは、借金をすることなくアパートやマンションを手に入れることができることです。Xオーナーの場合で言えば、建設には2億円の資金が費用でした。いくら資産家と言えども、これだけの現金を用意するのは簡単なことではありません。足りない分は、金融機関から借金しなければなりませんし、その際に土地などを担保に入れなければなりません。ところが、等価交換方式であればこうしたことは一切無用です。
 また、大きな節税効果を得ることが点も、この方式を採用するメリットです。例えばXオーナーの土地の評価額は、更地だった場合6億円でした。そのまま何もせずに放置して相続が発生したら、6億円の評価に従って相続税を支払わなければなりません。当然ながら、相当な金額になるはずです。ところがデベロッパーと共同で建物を建ててしまえば、評価額は一気に下がります。土地の評価額は等価交換の時点で3億6000万円、さらに借地権割合60%が加味されるので、最終的に2億1600万円まで下がります。建物に関しては等価交換時点で2億4000万円、これに借家権割合(※法律上一律30%)を加味し、最終的に7200万円となります。両者の合計は2億8800万円となり、更地の評価額8億円から5億1200万円の評価減に成功したことになります。
 もちろんデメリットもあります。一番大きいのは、土地の一部をデベロッパーの譲渡しなければならないことでしょう。上記の例で言えば、デベロッパーには40%1億6000万円分に相当する土地を譲らなければなりません。したがって「先祖代々の土地だから一部だって譲りたくない」という方には適さない方法だと言えるでしょう。
 また、デベロッパーの意向にもよりますが、基本的に建設する建物の企画・設計・施工については、オーナー側で主導権を握ることはできません。「オシャレでゴージャスなマンションを建てたい」と思っていても、それがデベロッパーの求めるものでなかったら、実現することは難しいでしょう。
 また、デベロッパーがマンションを分譲した場合、権利者が複数存在することになる点もデメリットだと言えます。こうなると、後で建物のメンテナンスや修繕、処分など、後々の運営が大変になります。