真説 賃貸業界史 第16回「終わることのない不正建築事件 許されざる企業の悪癖」|記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2019.05.13

真説 賃貸業界史 第16回「終わることのない不正建築事件 許されざる企業の悪癖」

真説 賃貸業界史 第16回「終わることのない不正建築事件 許されざる企業の悪癖」
ローコスト建築にメス!衝撃だった建築偽装事件

 レオパレス21(東京都中野区)による建築不正問題。発覚から半年以上が経った現在も、問題は収束するどころか、どんどん大きくなっている。自らの利益ばかりを追求し、オーナーや入居者を食い物にしたこのような行為は、絶対に許してはならない。今後、企業と経営陣に、徹底した社会的責任の追及が行われることを期待したい。今回は過去に何度も繰り返されてきた建築に絡んだ偽装事件を振り返る。

(本文)
 賃貸業界を巻き込んだ建築偽装事件として、過去最も有名なものは2005年に発覚した「耐震偽装問題」だろう。比較的新しい事件のため、記憶している読者も多いのではないだろうか。
 事件は、当時千葉県にあった建築設計事務所に勤務していた元一級建築士が、構造計算書を偽装していたことを公表したことで発覚した。偽装された構造計算書は、行政や民間の検査機関の検査をも通り抜け、各地でそれに従って多数のホテルやマンションが建設されつぃまった。すでに販売されてしまった欠陥マンションも多数あったことから被害は拡大し、事件に関わったデベロッパーや建設会社、検査会社などが次々に経営破綻した。
 この事件が賃貸業界においても大きなインパクトを残した理由はいくつかある。第一に、事件に関与した木村建設が、賃貸業界でもそれなりに知られた存在だったことが挙げられる。
木村建設は熊本市を本拠にしていた地場ゼネコンで、当時、福岡や東京にも進出し、ホテル建設や公共工事を主体に事業展開していた。一方で土地活用による賃貸マンションの建設にも積極的で、九州地区においては「賃貸住宅に強い有力建設会社」の1社として、業界紙にも頻繁に取り上げられていた。ところが事件発覚後、そのずさんな経営状況が次々と明るみに出る。粉飾決算をしていたばかりか、詐欺容疑で起訴されるなど、出てくる事実に関係者は唖然とするばかりだった。
 第二の理由として、当時賃貸業界内で主流となっていたローコスト建築に一石を投じたことが挙げられる。バブル崩壊後、人々の投資に対するマインドは極端にネガティブになり、高い賃貸マンションは売れなくなっていった。代わりに「低価格」「高利回り」をウリにした賃貸住宅がよく売れるようになり、多くの建設会社や工務店、住宅メーカーなどがこぞって「坪単価〇万円」を謳い文句にした企画型の賃貸住宅を商品化した。ところが一連の事件で「ローコストなホテルを作るために耐震偽装が行われた」という報道が盛んに行われたことで、“ローコスト”という言葉に対するイメージが悪化。以降は価格よりも“質”を前面に打ち出した賃貸住宅を提案する会社が増え、今に至る。
 また、この事件には賃貸業界を代表する大手企業も巻き込まれた。投資用新築一棟売りアパート最大手のシノケン(東京都港区)は当時、アパートの建設を木村建設に依頼。その結果、いくつかの物件で耐震強度不足が発覚し、代金返還の影響で06年3月期には約6億円の赤字に転落した。迅速な対応が功を奏し、その後同社は業績をV字回復させることに成功した。
 事件の主犯の一人として度々メディアで取り上げられたマンションデベロッパーのヒューザーも少なからず賃貸業界には縁があった。同社は当時、賃貸マンションブランド「ヒーローマンション」に加入し、業界関係者とも親しくしていたと言われている。賃貸マンションの施工実績がどの程度あったのかは、今となっては調べる術はないが、そうした縁もあり、ヒューザーという名は賃貸業界でもそれなりに知られていた。
 果たして、建築に関わる偽装事件はいつになったらなくなるのか。耐震偽装問題以外にも、こうした類の事件は、規模の大小はあるものの、各地で相次いで起こっている。代表的なものでは、1996年には福岡県久留米市で発覚した「新生マンション花畑西」の耐震強度不足問題や、2007年のアパホテルの耐震偽装問題、2015年の旭化成建材による杭打ちデータ改ざん問題などがある。いずれも大企業が絡んだ事件だったため、メディアでも大々的に報じられたが、表に出ていない事件も数え切れないほどある。機会があれば、また取り上げたいと思う。