業界のモラルを問う!緊急覆面座談会|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2019.11.18

業界のモラルを問う!緊急覆面座談会

常軌を逸した家賃保証率、わずか3年で逆ザヤに!
知人を入居者させ、満室を装って物件を販売


 不動産業界で相次ぐ大手企業による不祥事。業界の事情に詳しいある専門家は「これは氷山の一角に過ぎない。混乱はまだまだ続くだろう」と警鐘を鳴らす。果たして業界の健全化はいつ実現するのだろうか。今回は、本紙10月号に掲載した「直撃取材!不動産大手会社の不正を暴く!(後編)」をお届けする」

-レオパレス21の違法建築問題が、今なお収束する気配がありません。同社の不正が原因で、アパート建築業者による家賃保証に対して、疑問を投げかける声も増えています。

A そもそもアパート業者の家賃保証は、建築の契約を取るために行っているようなものだから、一般の管理会社のそれとは性質が異なる。まずはそこをきちんと整理する必要があるよね。

B アパート業者は、家賃保証で利益を出そうなんてことはあまり考えていないことが多い。特に大手ほどそうした傾向があるんじゃないかな。建築でしっかり利益を出せるから、契約を取るためなら、保証額を相場よりも高く設定することだって厭わない会社もある。僕が過去に契約したケースでは、大阪で賃料8万円の物件を7万8500円で家賃保証したことがあったよ。2社と競合していたという特殊な事情はあったにせよ、普通に考えたらあり得ないよね。保証自体は大赤だったからね。

A 新築物件に限っては90%保証することがないわけではないけれど、家賃保証率の相場が80%から85%くらいだと言われていることを考えると驚きの金額だよね。少々の赤字は屁でもないくらい、建築は利益が取れるということだよね。管理会社の家賃保証では絶対にありえないね。

B 管理会社の場合は、仲介手数料や原状回復、保険の販売など、利益の出せる付随業務は色々あるけれど、どれも大して利益が出るわけじゃない。だからサブリースでもきちんと利益を出すためにしっかり査定する。アパート業者のような常軌を逸した保証率を提示することはまずないね。そう意味では、家賃保証の査定は管理会社の数字の方が信頼は置けると思う。

-オーナーからすれば、保証率は高いに越したことはありません。

A それはそうだろうけど、数字にばかり目を奪われてしまうと、後々痛い目を見ることになる。入居がうまくいっていればまだいいけど、ちょっと入居率が下がったらどうなるか。もともと空室による賃料ロスがまったく補えないような保証率が設定になっているから、1室空室がでただけでも、負担は大きいはず。それでも建ててからしばらくは、建築の利益があるからまったく痛くないのだろうけれど、それが2室、3室を増えたり、長く続いてくると、まるでボディーブローのように効いてくる。そうなったらいよいよ「オーナーさん、保証額を下げさせてもらいます」となるんだよね。

B 家賃は建物ができた時点がアッパーで、あとは時間が経つごとに下がっていくだけ。まれに上がることもありますが、それは学校が移転してくるといったような、特殊な事情があるときだけで、基本的にはない。どんなに努力してもいずれ家賃は下がる、オーナーさんはまず、これを頭に叩き込んでおかなければならない。だから90%を超えるような保証率を提示されたら、「毎月こんなに保証してくれるんだ」ではなく、「こんな高い保証率で借り上げるなんて、長続きするはずがない」と疑ってかからないといけない。さっき言った大阪の物件なんかは、完成してから3年後に、賃料が保証額を下回ってしまいました。結局、数カ月に管理部の担当が減額交渉に行ったはずです。

A 学校移転と言えば、これは別のアパート会社に勤めていた友人から聞いた話だけど、一つひどい事例を思い出しました。
 確か20年から25年くらい前に、大阪のある地域で大学のキャンパス新設に合わせて大量のアパートが建てられました。これ自体はよくある話なんですが、数年前にこのキャンパスが移転してしまいました。一帯のアパートはその大学の学生だけで成り立っていたので、キャンパスがなくなってしまうともうお手上げです。友人が務めていた某アパートメーカーも、10棟前後のアパートを建てて管理していたものだから大慌て。何とかしようと、あれこれ対策を講じたようなのですが、最寄り駅までバスで20分以上かかるような辺ぴ場所だったため、学生以外の借り手など見つかるはずがありません。結局、「このまま家賃保証したら大赤字だ」ということになり、オーナーさんに対し、大幅な減額や契約の解除を提示したそうです。

-空室のまま保証もなしにほっぽり出されたら、オーナーさんも苦しい。とても受け入れられる話ではありませんよね。
A もちろん、そのまま素直に受け入れたオーナーさんはいません。交渉はかなり難航したそうですよ。でも「うちが潰れたら困るのはみなさんですよ」と言われたら、誰もそれ以上言えなくなってしまいますよね。結局、ほとんどのオーナーさんは泣く泣く減額を受け入れたそうです。中にはアパートを手放してしまった方もいたそうです。

-賃貸仲介や管理会社など、一般の不動産業者の不正に関して、最近、耳にしたことはありますか。

B 「前編」で、2棟目の契約を取るために、1棟目に知り合いを入居者させて、あたかも満室になったように装った同僚がいたという話をしましたが、これは物件を販売する際にも使える手なんですよね。「満室なら、若干高くても買うよ」と言う投資家は結構いますから、とりあえず誰でもいいから入れてしまうわけです。所詮は売れるまでの見せかけの満室ですから、契約が成立した途端に何軒も解約の申し込みが入るわけです。買った方は「想定していた収入が得られないわ」「入居募集で出費するわ」で散々な目に遭うわけだよね。

A 最初の話にも共通するのですが、とにかく騙される数字ばかりに目が行ってしまっている方が多いように思う。数字ももちろん大事なんですが、それは基本中の基本で、最低限把握しておかなければならないことです。「儲けよう」あるいは「儲けたい」という思いが強すぎるから、数字を提示された途端に安心してしまう。それで物事の本質が見えなくなってしまうんだよね。でも実際には、数字を見た上で、それが「本当に正しいのだろうか」「何を根拠にしているのだろうか」「今はこれだけれど、数年後はどうなっているのだろうか」など、先々のことにまで考えを巡らせなければならない。難しいけど、できないなら賃貸経営なんてやらない方がいい。

B 「不動産投資がブームだ」なんて言われるたびに、ただ本を読んだだけの自称投資家がどこからともなく湧いてくるけど、2、3年もしたらほとんどがいなくなる。結局、本に書いてある数字を鵜呑みにして「自分にもできる」と勘違いしてしまうから、すぐに資金繰りがショートしたりするんだよね。別に本を読むことを否定はしないけれど、書いてあることの99%は机上の空論だと思って読まないと、数字が頭から離れなくなってしまう。そんな数字を信じたところでうまくいくわけがないのにね。

A 不動産経営はお金のかかるビジネスだから、一度失敗したらなかなか取り戻すことができない。お金が有り余っていると言うのなら、「どうぞ好きにやって下さい」と言うけれど、そんな人は限られている。ほとんどの人は人生を賭けて投資するのだから、もっと慎重にならないとね。

B 地主も資産家ではあるけれど、意外と現金がないという人が多い。失敗したら先祖代々の土地を手放さなくちゃならないかもしれないという危機感は常に持っておくべきだよね。自分も過去にアパート業者で営業していた人間なので、偉そうなことは言えないけれども・・・。

 闇の多い不動産業界。不正がなくなる日は一体いつやってくるのだろうか。本紙では今後も、不動産業界の闇について取材を続けていく。いつの日は業界が健全化されるその日まで・・・。