2020年の不動産市場を占う!覆面討論会(前編)|住生活新聞 記者の目|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.01.13

2020年の不動産市場を占う!覆面討論会(前編)

2020年の不動産市場を占う!覆面討論会(前編)
今後の賃貸市場のカギを握るのは外国人入居者
課題山積みの不動産業界 少子化の影響は避けられず


 昨年は、大手企業による不祥事に揺れた不動産業界。レオパレス21、TATERU、大和ハウス工業、すてきナイスグループ等々、史上例を見ないほど多くの不正が次々と発覚したことで、業界に対する信用は失墜した。果たして2020年は、失った信頼を回復することができるのだろうか。業界事情に詳しい関係者に集めってもらい、今年を占った。

(本文)
-令和最初の繁忙期を迎えました。大企業による不正の影響が、今年の不動産業界にどれだけ影響を与えるのか、注目が集まっています。

A社長 東京オリンピックの影響もあって、不動産業界はおおむね好調だ。とはいえ、細かく見ていけば苦戦しているところもある。例えば不動産投資だ。ご存知のように、「かぼちゃの馬車事件」をきっかけに、不動産向けの融資が一気に引き締められた。いくら低金利でも金融機関が貸してくれる金融機関がないのだから意味がない。不動産投資市場は今年も停滞すると見ている。

B社長 僕は、不動産向けの融資が引き締められたこと自体は良いことだと思っています。むしろ、本を読んだだけのサラリーマンが、いきなり何千万円ものお金を借りられたこと自体、異常だったと考えるべきでしょう。税や法律、賃貸市場など、色々な知識が必要な不動産投資はやっぱり難しいし、物件の数をある程度増やさないと、ほとんど利益は出ない。でもそこをちゃんと理解せずに始めるから、たいていの人が失敗する。審査を厳しくすることで、不動産で失敗する人が少なくなるのは、業界的にも良いことですよ。

C社長 でもそれで食っていた会社は困るよね。一生懸命セミナーやって素人を集めて、「誰でも儲かります!」なんて言ってた会社は、物件が全然売れないから大変だろうね。

D社長 物件を売っていた会社もそうだけど、不動産業者の中には失敗するのを待っている業者もいるからね。オーナーが潰れても物件は残る。物件さえあれば、管理、仲介、リフォームなど、不動産業者はいくらでもお金を稼ぐことができるからね。

C社長 知り合いの業者も、空室で困っていそうなオーナーに「返済が厳しいようなら、駄目になる前にうちで買い取りますよ」と片っ端から声をかけて、物件を安く買いたたいてますよ。そんなんで売る人がいるのかと思いますけど、これが意外といるんですよね。

B社長 地価が上がって良さそうに見えるけど、そんなのは一面に過ぎない。地方に行けば、駅からちょっと離れた物件は空室だらけ。にわかの不動産投資家がつかまされるのは、たいていそういう地方の空室物件だから、一筋縄でいくわけがない。しかもそういう人に限って「専門書を読んだから大丈夫」と言って、何でも自分でやろうとするからたちが悪い。「流行りのデザインはこうだから」とか「この設備さえ入れておけば満室になる」とか、プロである我々に対して、講釈を垂れて来るんだよね。でも、本に書いてることを真に受けてやったところで、簡単に満室になるわけがない。賃貸経営って、そんな簡単なものじゃないよね。

A社長 今、うちに来てるお客さんも丁度そんな感じだね。「こんな感じにオシャレな雰囲気にリフォームしたい」と言ってネットの画像を見せてくるんだけど、そもそも物件がある場所は、オシャレなライフスタイルを求める人が住むような場所じゃない。肝心なことが分かっていない人が多いよね。

D社長 去年、相談に来た人はひどかったな。2年くらい前に購入した中古のワンルームが空室で困っているという相談だったんだけど、こちらのアドバイスを無視して勝手にリノベーションしちゃったんだよね。でもそれで埋まらなかったから大変。「なんで止めてくれなかったんだ!」と言ってうちにクレームを言ってきた。もう無茶苦茶。

B社長 人生かかってるから大変なのは分かるけど、だったらもっとプロのアドバイスを聞くべきだよね。

C社長 出版社も悪いよね。ちょっとうまくいってる投資家を見つけては「カリスマオーナー」として売り出して本を書かせる。内容的には全然たいしたこと書いていないのに、それが売れる。素人が見たら「この人は神様だ」「この人の言っていることを真似れば自分も金持ちになれる」とか勘違いしちゃうんだよね。書店に行ったら、聞いたこともない人の不動産投資本が山積みされていたりしますよ。
-少し話が逸れてしまいましたが、いずれにせよ不動産投資に関して言えば、停滞するだろうという意見が多いようですね。自分で住むための実需向けマンションの販売はどうなると見ていますか。

D社長 うちは賃貸よりもそっちが本職なので言わせてもらいますが、これからどんどん厳しくなっていくだろうね。去年は、消費税の増税で駆け込み需要があるんじゃないかと期待していた業者もいたようだけど、蓋を開けてみれば思ったほどじゃなかった。政府は所得が上がっていると言っているけど、実際にそれを肌身で感じている人は少ないはず。それにもかかわらずマンションの価格は上がっているわけだから、消費税云々じゃなく、買えない人は買えないだよね。

A社長 これからいよいよ人口も減少に転じるし、よほどのことがない限り、実需用のマンション市場が上向くことはないんじゃないかな。

B社長 外国人が日本の不動産を買いあさるなんて話も出てきているけど、結局住む人がいないんだからどうしようもない。マンション市場の先行きは暗いと言わざるを得ない。

C社長 だからこそ、民泊が期待されていたんだろうけど、最近は尻すぼみ感が否めない。

A社長 去年はインドのOYOグループの日本上陸が話題になったけど、「住居を『所有』するのではなく『利用』する」っていうビジネスモデルも、今のところあまりうまくいっていないようだしね。そもそも日本人は農耕民族じゃないんだから、あちこちに移り住もうなんて発想はないし、DNA的にも馴染むわけがない。
-レオパレス21や大和ハウス工業の不正建築問題の影響が懸念される賃貸市場の動向についてはどう見ていますか。

C社長 これは、大手の不正は関係なく、年々厳しくなっていくというのが大方の見方じゃないかな。少子化で人口も減っていくわけだし、当然と言えば当然だよね。ただ、日本は働き手がどんどん少なくなっているから、これからは労働力を外国人で賄っていかなければならない。クリアしなければならない問題は色々あるのだろうけど、外国人労働者が増えれば賃貸市場はまだまだ動く可能性はあるよね。

D社長 外国人に貸すとなると、やっぱり保証人の問題が出てくる。そこのところ雇用している企業が保証するとかなれば、もっと活性化するかもしれないね。

B社長 うちにもよく「部屋を借りたい」という外国人のお客さんが来るけど、最終的にネックになるのはやっぱり保証人の部分だよね。今は外国人専門の家賃債務保証会社もあるけど、やっぱりそれだけじゃ不安だと感じるオーナーも多い。日本人入居者ですら家賃債務保証に入らせたうえで保証人まで付けてもらうケースがあるくらいだから、ましてや外国人となるとね。

A社長 あとは高齢者がキーワードかな。これからは4人に1人が高齢者という時代を迎えるわけだから、若い人だけを選んで住んでもらうなんてことをしていたら、物件は埋まらない。高齢者入居者も積極的に受け入れていく必要がある。ただ、そうなると問題は認知症を発症したときや孤独死してしまったときの対象をどうするかということ。家族が近くいる場合はともかく、身寄りがない人は意思確認ができない。入居契約をする際に、あらゆる事態に対する事前の意思確認が必要になるかもしれないね。例えば、「病気で倒れたときはどうするか」というような感じでね。

C社長 入いくら元気な方でも、突然倒れることはあるわけだからね。リスクのことを考えると、今後はそういった仕組み作りもしていかないといけないよね。例えば病院との連携もその一つだね。

D社長 サ高住なんかはすでにそうした仕組みがあるけれど、問題は一般の賃貸をどうするか。サ高住の仕組みをそのまま当てはめれば良いのか、それともカスタマイズが必要なのか。いずれにせよ、今年以降、その辺のことも念頭に置きながら仕事をしていく必要があると思う。

-オリンピック後の市場動向を心配する声もありますし、今年は色々な意味でターニングポイントの年となりそうです。貴重なご意見、ありがとうございました。

(プロフィール)
A社長 50歳。渋谷区、新宿区などで不動産事業を手掛ける。管理戸数は約2000戸。
B社長 横浜を中心に約4000戸を管理する不動産会社社長。他に、中古マンションの仲介やリフォームも。38歳。
C社長 東京都内で賃貸管理・仲介、不動産売買などを行う傍ら、自らマンション経営も手掛ける。48歳。
D社長 分譲マンションの販売を中心に、不動産業務全般を手掛ける。48歳。