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豆知識

2020.03.16

知らないと損する不動産投資のツボ

知らないと損する不動産投資のツボ
アパート・マンションは9月までに購入すべし!
税制改正で消費税還付は一切認められなくなる!?


 賃貸経営が成功するか否かは、効果的な節税対策ができるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。家賃収入が「不労所得」と言われた時代ははるか昔のこと、今は努力なしで安定した収入を得ることはできません。しかし、節税対策は見方によっては脱法的な側面もあり、法改正が行われるごとに規制が設けられてきました。今回は、相続税とは直接関係ありませんが、不動産オーナーにとってかかわりの深い自動販売機を使った消費税還付についてまとめました。

100万円単位で帰ってくる消費税

「1億円のマンションを建築した際に支払った消費税800万円が、自動販売機を設置しただけで全額還付されました」

 みなさんは、こんな話を耳にしたことはないでしょうか?これは「自動販売機スキーム」と呼ばれる節税テクニックの一つで、もちろん違法なものではありません。税理士の中には、これをウリにして名を売った方もいます。もしかしたら、読者のみなさんの中にも、このスキームを利用して消費税の還付を受けたことがあるという方がいるのではないでしょうか?初めて聞いたという方は、還付される金額の大きさに驚かれたかと思います。「そんなに戻ってくるのなら、うちも是非やりたい」というのが本音だと思います。ところが、不動産オーナーなら誰もがチャレンジしたいと思うこのスキームが、今年予定されている税制改正で、ついにできなくなってしまいます。
 そもそも「自動販売機スキーム」とはどのような仕組みなのでしょうか。消費税の還付を受けるためには、課税売上があることが前提条件となります。つまり、何かしら消費税の課税対象となる売上がないといけないのですが、賃貸業における家賃収入は、平成3年度の税制改正によって非課税と改められました。したがって、家賃の売上しかない状態では、消費税の還付を受けることはできません。しかし、逆に考えれば、家賃以外に、何か課税対象となる売上を作りさえすれば、還付を受けることができるようになるということです。そこで考え出されたのが、課税対象の缶ジュースなどを販売する自動販売機を建物敷地内に設置する「自動販売機スキーム」です。支払った消費税を100%還付してもらうために、家賃収入が上がらないタイミングで物件を取得しなければならない、3年間通算で課税売上の割合が50%以上減少してはならない(減少した場合は還付金を返納しなければならない)など、一定の制約はあったものの、このスキームは業界内で広く利用されてきました。

 支払った消費税が還付されるということは、国の側から見れば税収が減るということを意味します。少額であればそれほど気に留めることはなかったかもしれませんが、数百万円単位となればそのまま放置しておくわけにはいきません。当然、税制改正によって制限を設けてきました。そして、令和2年に予定されている税制改正によって、賃貸経営で消費税還付を受けることがほぼできなくなります。今回の税制改正のポイントは3つです。

①アパート・マンションを取得する際の消費税は計算に含めず、またこれによる消費税の還付は認めない
②適用は令和2年10月1日以降に取得する建物が対象
③消費税の計算に含めない場合、調整期間内に物件を売却した場合、あるいは賃貸住宅以外に転用した場合は、調整計算に加算する

 これによれば、今後は賃貸住宅を取得する際には、消費税の還付は一切認められなくなります。ただし、適用期間が令和2年10月1日以降に取得した物件となっているので、9月末時点までに物件を取得してしまえば、今までの方法で消費税の還付を受けることはできます。物件の購入を検討されている方は、還付される金額が大きいだけに、なるべく早いタイミングで購入することをお勧めします。
 賃貸経営には税の知識が不可欠です。知っていると知らないでは、支払う税金に大きな差が生じます。