東急リバブルの敗訴で、仲介業者から怨嗟の声|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.03.23

東急リバブルの敗訴で、仲介業者から怨嗟の声

東急リバブルの敗訴で、仲介業者から怨嗟の声
繁忙期突入直後の判決で現場は大混乱!

「大手とは思えない大失態だ。繁忙期最中のただでさえ忙しい時に、オペレーションの再確認などで現場は大混乱だ」
「口頭での説明に加え、新たに同意書にサインをもらうようにした。手順が増えて面倒だ。まったく余計なことをしてくれたもんだ」

 賃貸仲介会社から漏れ聞こえてくる怨嗟の声。これらはすべて、大手不動産会社の東急リバブルに向けられたものだ。一体何があったというのか。
 令和最初の年明けから2週間後の1月14日。この日、賃貸業界を揺るがす、ある重大な判決が、東京高裁で下された。東急リバブルの敗訴が確定し、元入居者に対して仲介手数料の一部変更をするようにとの命令が下ったのだ。これだけ聞くと、よくある不動産業者と入居者間のトラブルかと思うかもしれないが、そう単純な問題ではない。まずは本事案の概要について振り返っておく。
 事の発端は2013年にまで遡る。1月18日、東急リバブルは、男性から問い合わせを受けて賃貸物件を斡旋、20日に正式契約を結んだ。問題となったのは、このとき東急リバブルが男性から徴収した仲介手数料の金額だった。実は、一般にはあまり知られていないが、仲介手数料には「0.5カ月分」という原則がある。おそらく「家賃1ヶ月分」だと思い込んでいる方が多いのではないだろうか。筆者ですら、街中で「手数料0.5月分」という看板を見かけるたびに、「なんて良心的な不動産業者だろう」と思っていたほどだ。しかし、実際には「0.5月分」というのが基本であり、家賃1ヶ月分相当の仲介手数料を徴収するのであれば、事前にその旨を説明して、承諾を得なければならないのだ。ところが、東急リバブルはこの男性に対して、そうした説明を一切行わずに、家賃1ヶ月分の仲介手数料を徴収していた。「これはおかしい」と気付いた男性が、17年12月に、支払った仲介手数料の一部の返還を求めて同社を提訴した。昨年8月8日の東京地裁判決では、原告の請求が認められた。東急リバブルは判決を不服として上告していたが、今回の判決でそれが棄却され、東京リバブルの敗訴が確定した。
 問題は、この判決が今後、業界にどのような影響を与えるかだ。冒頭のコメントにあるように、すでに現場レベルでは程度の差こそあれ、影響が出ている。
 また、同様の裁判が各地で起こされる可能性もある。過去を振り返ってみると、こうした類の判決は、消費者団体に利用されがちだ。更新料問題しかり、敷金問題しかりだ。仮に、「仲介手数料返還訴訟」なるものが全国規模で提起されるようなことになれば、業界は大混乱に陥る。もちろん、きちんとした手順を踏んだうえで、家賃1ヶ月分の仲介手数料をもらっていれば問題はない。しかし、全国12万とも言われる不動産業者の中には、東急リバブルと同じように、承諾を得ないまま、家賃1ヶ月分相当の仲介手数料を徴収してきた業者も少なからずいるはずだ。身に覚えのある業者は今頃、戦々恐々としているかもしれない。  
 いずれにせよ、今回の判決は、仲介業務の在り方を見直すきっかけとなったことは間違いない。これをチャンスに変えることができるかどうかは、仲介業者の心構え次第だ