真説 賃貸業界史 第26回「どうなる五輪後の建設・不動産業界」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2020.04.27

真説 賃貸業界史 第26回「どうなる五輪後の建設・不動産業界」

真説 賃貸業界史 第26回「どうなる五輪後の建設・不動産業界」
リーマンショック後は有力建築会社が相次いで倒産

 東京オリンピック特需に沸く日本経済だが、「五輪後もこの状況は続くのか?」という疑問に対しては、多くの専門家が否定的な見解を示している。仮に専門家の予測通り景気が減速するとしたら、多くの恩恵を受けてきた建設・不動産業界はどうなるのだろうか?最悪の場合、リーマンショックの時と同様、多くの企業が倒産する事態に陥るかもしれない。今回は、好景気を背景に急成長を遂げながら、急激な市場環境の変化で業績を悪化させ、倒産してしまった賃貸住宅メーカーの歴史を振り返る。


 リニア中央新幹線の開通に向け再開発が進む名古屋。この街を中心とした東海エリアは、数多くの建設会社が鎬(しのぎ)を削る地主向け営業の激戦区だ。業界最大手の大東建託も元々はこの地で実績を積み重ねて全国へと打って出た会社であるし、東建コーポレーションもしかりだ。そんな中で、累積1700棟にも上る建設実績を誇りながら、積極的な事業展開が仇となり、リーマンショック後に倒産したのがセントラルホームズだ。
 同社の設立は1980年。9年後に設立されたもう一つのセントラルホームズに統合された。設立当初から地主向けの土地活用営業を主力事業として展開し、事業計画の立案から建設、施工後の管理までを一貫して提案するスタイルで業績を伸ばした。主力商品は、高品質をウリにしたハイグレード賃貸マンション「クラシタイヤー」やシニア層を入居ターゲットにした「ハイリタイヤー」などで、最盛期には年間400戸以上の賃貸住宅を供給。倒産前年度の売上高は約173億円に達した。
 しかし、その裏で急速な事業展開に伴い借入金が急増。さらに姉歯事件を契機に建築確認が厳格化されたことで工事の着工が続出。リーマンショックによる景気後退も重なり、次第に資金繰りは悪化。金融機関からの資金調達などで存続の道を探ったものの、結局、状況を改善できないまま2009年6月に約130億円もの負債を残して倒産した。その後、同社の管理物件は不動産チェーン「ERA(現 LIXIL不動産ショップ)」を運営する住生活リアルティに引き継がれた。
 四国では、エリアを代表する二強が揃って経営破綻するという、前代未聞の事態が起きた。1社は愛媛県松山市を中心に、九州や中国地方、大阪、東京で事業を展開していたジョー・コーポレーション。2000年以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げ、上場も目前に迫っていたと言われる。しかし、土地活用事業と並ぶ稼ぎ頭だった分譲マンション事業が、景気低迷で販売不振に陥り業績が悪化。2009年に民事再生法を適用し、県外からは撤退した。その後、何とか再建の道を探ったものの、業績は改善できず、2015年に自己破産した。愛媛トップの建設会社の倒産は、賃貸業界でも大きな話題となった。
 もう1社は、愛媛と並ぶ四国有数の都市である香川県高松市を本社とする穴吹工務店だ。「サーパスマンション」で知られる穴吹工務店は、2007年に国内の事業主別マンション供給ランキングで首位を獲得していたことからも分かるように、一般的には分譲マンションのイメージが強い。しかし一方で、一部のエリアでは土地活用事業にも力を入れていて、特に四国においてはジョー・コーポレーションとがっぷり四つで首位争いを演じていた。しかし、そんな穴吹工務店も建築基準法の厳格化に伴う建設コストの上昇や、リーマンショックに端を発した世界的な不況の影響でマンション販売戸数が激減。さらに価格下落が追い打ちとなり、2009年11月に会社更生法を適用して経営破綻した。穴吹工務店については大京グループが救いの手を差し伸べたことで見事に立ち直り、現在は大京の完全子会社の1つとして依然と同様、分譲マンション事業を主体に、土地活用や管理などを行っている。
 建設・不動産は景気動向の影響を受けやすい業種の一つだ。景気が良い時は他の業種以上に大きな恩恵を受けるが、逆に景気が一転するとまともにそれが業績を直撃する。しかも動く金額が桁違いなだけにダメージは大きく、会社の存続を左右する事態を招くことも珍しくない。オリンピック景気は東京五輪後までだとする意見が多いが、ここにきて新型コロナウイルスの影響でもっと早く影響が出るかもしれないという意見も出始めている。今後も不動産・建設業界の動向から目を離せない。