リフォーム取引販売士に聞きました~工事発注ミスは誰のせい?~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2020.08.24

リフォーム取引販売士に聞きました~工事発注ミスは誰のせい?~

リフォーム取引販売士に聞きました~工事発注ミスは誰のせい?~
引き渡し当時になってもトイレと浴室の工事が終わっていない!?

 リフォーム業界を取材していると、リフォーム工事にまつわるトラブルの話をよく耳にします。その内容は詐欺被害から手抜き工事、工期の遅れなどさまざま。一体どうすればトラブルに巻き込まれることなく、快適な住まいを手に入れることができるのでしょうか。実際に起きたトラブルを例に、対策についてまとめました。

 一昨年の春に、築25年の中古の戸建住宅を購入した佐藤健さん・美樹さん夫妻。大掛かりなリフォームは必要なかったものの、トイレと浴室は建築当時のままで古くなっていたため、引っ越し前に地元業者に頼んでリフォームすることにしました。しかし、工期は予定よりも遅れ、予定していなかった追加工事まで発生。楽しみにしていた新居での生活も、スタートは散々なものになってしまいました。一体、何が原因でトラブルは起きてしまったのでしょうか?
 佐藤さん夫妻が工事を頼んだのは、地元で30年以上の実績がある工務店。家を買った際にお世話になった不動産会社から紹介された業者でした。実際に工務店の担当者と一緒に現地を下見し、その場で古くなったトイレと浴室のリフォーム工事を発注しました。口頭である程度のイメージを伝え、後日、見積りが送られてきたそうです。施工期間は約1週間ということでした。夫妻は引っ越し予定日の前々日に工事が終わるように、発注をかけました。
 工事が始まったから3日目、佐藤さんの携帯電話に工務店の担当者から電話が入りました。電話口の向こうで担当者は申し訳なさそうに、

「すみません。トイレを撤去したところ床下がかなり傷んでいて、これを補修しないことには新しいトイレは設置できそうにありません。どうしましょうか?」

と言いました。ちょうど仕事の打ち合わせ中だったこともあり、佐藤さんは追加料金がどれくらいかかるかも聞かないまま、床下の補修工事を頼んでしまいました。
 さらに翌日も担当者から電話がかかってきました。今度は追加工事の関係で工期が延びそうだというものでした。幸い、引っ越し日には間に合う見込みだということで、佐藤さんはその旨を了承しました。その後、佐藤さんも仕事や引っ越しの準備が忙しかったこともあり、担当者に連絡することはありませんでした。
 そして引っ越し当日、佐藤さん夫妻は期待に胸を膨らませながら、引っ越し業者の到着前に工事の引き渡しを受けるため、朝8時に家に到着しました。ところが、現地で待っているはずの工務店の担当者がいません。「遅れているのかな?」と思い、少し待ってみたものの担当者は現れません。仕方なく、先に入って現場を確認することにした夫妻は、家の中に入って愕然としました。何と、トイレも浴室も、工事はまだ終わっておらず、途中のままだったのです。ご主人は慌てて担当者の携帯に電話しましたが出ず。仕方なく、会社の方に電話してみたところ、社長と名乗る男性が出ました。事情を説明すると、「申し訳ありません」と言って慌てて飛んできました。社長の説明によると、人手不足で担当者一人で4つの現場を抱えていたため、作業のスケジュールがうまく組めていなかったようです。佐藤さん宅だけでなく他の現場でも発注ミスなどが立て続けに発生していました。しかし、それはあくまでもリフォーム会社側の事情であり、佐藤さん宅には関係のない話です。もしも手が足りず、現場を回すことができないというのであればはじめから仕事を引き受けなければ良かったのです。結局、社長が何度も頭を下げたため、佐藤さんは「工事を3日以内に終わらせる」ことと「追加で発生した床下の補修工事については代金を請求しない」ことを条件に、引き続き工事を継続してもらうことにしました。
 そして3日後、何とか工事は完了しました。その間、佐藤夫妻はお風呂もトイレもない家で生活するわけにはいかないので、奥さんの実家で過ごしました。引き渡しには社長が立ち会い、担当者は最後まで顔を出さなかったそうです。佐藤さんは納品書にサインをしながら、「せめて本人が来て、一言謝罪するのが筋だろう・・・」と心の中でつぶやいたそうです。
 リフォーム業界は今、人手不足が深刻化しています。今回のケースのように、一人で多くの現場を担当しなければならないというケースも珍しくありません。もちろん、だからといって仕事を疎かにして良いはずがありませんし、いったん引き受けた以上は、最後まで責任をもって担当するべきです。施主側ができるトラブル回避策を上げて挙げるとすれば、担当者とできるだけ綿密にコミュニケーションを取ることかもしれません。佐藤さんの場合、工期中に担当者と話したのはトイレの改修に関する2回の相談のときだけ。もっと積極的に、佐藤さんの方から担当者に確認の電話を入れていたら、多少は状況が変わっていたかもしれません。リフォームトラブルでお困りの方は、お近くのリフォーム取引販売士にご相談下さい。