建物管理の『嘘』を見極める~キュービクル点検の価格編~|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.01.25

建物管理の『嘘』を見極める~キュービクル点検の価格編~

建物管理の『嘘』を見極める~キュービクル点検の価格編~
安くなるのには訳がある!悪徳商法に騙されるな!

-利益を増やすために、運営にかかるコストを削減したい-賃貸経営に携わる方であれば、誰でも思うことです。ところが、こうした心理を逆手にとって儲けようとする悪徳業者がいます。卑怯なやり口に引っかからないためにはどうすれば良いのでしょうか?

「エレベーターや日常清掃の値段は何となく分かるけれども、他の建物管理費用は、一体いくらくらいが相場なの?」

 あるオーナー様から、こんな相談を受けました。マンションやビルの経営には、いろいろなコストがかかります。その一つ一つの相場をすべて把握しているという方は、意外と少ないのではないでしょうか?
 今回は、「変電設備保守点検(キュービクル点検)」の適正金額についてまとめてみたいと思います。たまに、オーナー様と変電設備保守点検の話をすると、「それって値段は一律じゃないの?」という返事が返ってくることがあります。意外にも、定価が決まっているものだと思いこんでいらっしゃる方は多いようです。
 実際、他の経費に比べて、「変電設備保守点検」にかかる費用は見落とされがちです。でも、見直ししてみると、相場よりも多めに払っていたなんてことはよくあります。ひと月で見たら数千程度多めに払って頂けと思うかもしれませんが、年間だと10万円、10年だと百万単位で変わることもあります。
先日、事務所ビルを所有されているオーナー様から「『変電設備保守点検の事務代行をします。お得になるので当社に点検業務を切り替ええませんか?』という営業が来たのですが、変えても大丈夫でしょうか?」という問合せがありました。オーナー様の会社も、そのビルに入居していました。詳しく聞いてみいてみたところ、オーナー様には

・現在、支払っている電気代が2割くらい安くなる
・入居者への請求業務もすべて引き継いで代行してくれる
・電力会社への支払いも、その会社が窓口になってやってくれる
・オーナー様は電気代が安くなることに加え、請求にかけていた手間や負担も一切なくなる

というようなメリットがあるということでした。
これを聞いただけだと、オーナー様にとってはものすごくお得な提案のように思えます。ところが、ここにはからくりがありました。
 通常、変電設備保守点検等は、一定の電気料金を上乗せしてテナントに請求するのが一般的です。今回のケースでは、その管理会社が、その上乗せ分を自分たちの利益にして、その一部でオーナーの事務所の電気代を下げるというものでした。
 仮に、そのオーナー様がその会社に変電設備保守点検を任せた場合、もともと9万円近くあった電気代利ザヤ収入がなくなり、それと引き換えに電気代が4万円程度下がります。ひと月当たり5万円、年間で60万円収入がなくなったことになります。冷静になって考えてみればすぐに分かることですが、こうした会社は、メリットばかりを強調して言う、デメリットについては一切話さないため、コロッと騙されてしまう方が意外と多いのが実情です。
 今回、オーナー様が、なぜその会社が怪しいと思ったのか聞いてみました。すると、最初に飛び込みで来た後、訪問2回、上司との同行1回、合計4回も提案に訪れたことが分かりました。中には「熱心な営業マンだな」と感心される方もおられるかもしれませんが、そのオーナー様は、

「こちらがメリットあるはずなのに、何度も営業に来て提案資料を置いていく。営業マンの費用を払ったら儲からないはずなのに・・・なんでこんなに積極的に営業に来るのだろう」

という疑問に思ったそうです。それで当社に相談に来られたということでした。
今回の手口は、よくある悪徳商法ですが、騙されないように気を付けて下さい。安くなるのには、必ず理由があります。安くなる代わりに長いリースを組まされたり、修理代金が高くなることはよくあります。少しでも不安があったら、その場ですぐに決めずに、一度、専門家に相談してみることをお勧めします。

一般社団法人 消費者建物管理協会(消管協)
全国1,200店を超える不動産会社、管理会社、メンテナンス会社、オーナー様が利用する団体です。消費者よりわかり難い建物の管理料金や修理代金の適正金額のアドバイスをしてほしいという声から生まれました。消費者がよりわかり易く、利用しやすい業界にすることを目的としております。  代表理事 北嶋英之