エレベータメンテナンスの裏事情(後編)|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.05.10

エレベータメンテナンスの裏事情(後編)

エレベータメンテナンスの裏事情(後編)
エレベータメンテナンスの2つの契約方法

 エレベータのメンテナンスにかかる費用は、依頼する会社や契約内容によって大きく異なります。そのため、契約先を変えるだけで、保守にかかるコストが数十万単位で削減できることもあります。前号では、メンテナンス会社の種類について解説しました。今回は、少し複雑な契約形態について解説します。

 みなさんは、エレベータのメンテナンス会社との間でどのような契約をされていますか?

「どんな契約って、ただ点検してくれるだけじゃないの?詳しいことは分からないよ」

中には、こういう方もおられるのではないでしょうか?
 実は、エレベータのメンテナンス契約には、大きく分けて2つの種類があります。一つは「POG契約」、もう一つは「フルメンテナンス契約」と呼ばれています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
 「POG契約」とは、「PARTS(パーツ)」、「OIL(オイル)」、「GREASE(グリス)」、それぞれの頭文字を組み合わせた造語で、その名が表す通り、部品とオイル、グリスの3つの点検だけを行う契約です。あくまでも点検がメーンの契約のため、結果的に故障や不具合が発見された場合は、別途費用を支払って対応してもらう必要があります。
 メリットは、作業内容が最低限の点検だけに絞られている分、費用が抑えられていることです。エレベータが故障することは滅多にないので、少しでも運営経費を削減したいと思う方には、こちらがおススメです。また、修理や交換にかかった費用が明確に分かる点も、「POG契約」ならではのメリットです。
 デメリットを挙げるとすると、修理や交換が発生した場合にかかる費用総額が、「フルメンテナンス契約」と比べると割高になってしまうことです。
 次に「フルメンテナンス契約」について詳しく見ていきましょう。こちらはメンテナンス費用の中に、異常や故障が見つかった際に必要な部品や交換作業の代金が、すべて含まれた契約になります。「POG契約」のように、修理を行うたびに、別途費用を支払う必要がありません。もちろん、高額な修理が発生した場合も、追加料金は発生しません。定期的に必要なロープ交換は、エレベータ保守関連の工事の中でもっとも高額な部類に入りますが、これについてももちろん、追加で費用を請求されるようなことはありません。常に料金が一定で予算が組みやすい点は、「フルメンテナンス契約」の最大のメリットだと言えるでしょう。ちろん、すべて込々になっている分、点検だけを行う「POG契約」と比べると、金額は少々高めです。一般的には、2割から3割増しというのが相場のようです。何もなければ、多めに支払っている分は掛け捨てとなります。
 どちらの契約を選ぶかは、個々の判断によりますが、新築や築浅のビルやマンションであれば、異常や故障が発生することは滅多にないでしょうから、無理に「フルメンテナンス契約」にする必要はないかと思います。逆に20年、30年クラスの建物は、エレベータ設備もそれなりに老朽化しているはずです。故障のリスクを考えれば、フルメンテナンス契約にしておいた方が良いかもしれません。
 最後に、両者の点検作業の質についてですが、この点は基本的にどちらも同じだと考えて良いと思います。

「『POG契約』の方が月々の支払いが安いため、点検作業が雑だ」

という方もおられるようですが、実際にはそんなことはありません。もちろん、業者ごとにスキルの違いはありますが、同じ業者が、契約内容が違うからと言って、点検作業に差を付けることはまずありません。そもそも、エレベータの点検作業は、法律に則って行われるものなので、差を付けること自体おかしいのです。エレベータメンテナスに関するお悩みは、全国優良リフォーム会員まで。