闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第19回)|対談|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.07.12

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第19回)

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第19回)
09 天才と凡人①

 商売と言うのは面白い。勉強のできる人が儲かるとも限らない。
次々と新しい発想が出てくる社長がいる。一つの分野に特化して仕事ができるということであれば分かるのだが、スポーツジム、不動産、エステ、保育園、農園、etc…、次々といろいろなものを手掛ける。勉強ができるのではない。商売ができるのだ。
いつも思う。楽しそうに仕事をしていると、きっと商売にはお金儲けとは違う魅力があるのかもしれない。

-監督の話を聞いていると、心理学に近いようなことが多々あるように感じるのですが、そういう本を読んだり勉強されたりしているのですか?

野村 心理学の本は大好き。

-結構、いろいろな本を読まれてきたのですか?

野村 無知無学という自覚があるから。やっぱり知識がまったくないし、野球バカの典型だから。草柳大蔵(※)という東大を首席で卒業された評論家の奥さん当地の女房が友達だったの。俺が評論家を始めたときに女房に「評論家って何だろうね?」という話をしたら、「いい人がいるわよ!」って紹介してくれたのが草柳さんだったの。これから評論家で生きていかないといけないから「先生、評論って何ですか?」と訊ねたら、「野球で言えば審判のようなものかな」って。善悪の審議判定を下すのが評論だと。
 それは一つの予備知識としてあれば大事だよね。世の中には頭のいい人っているんだなと思って。草柳さんってすごい知識人。

※草柳大蔵(1924年7月18日-2002年7月22日)
 評論家・ノンフィクション作家・ジャーナリスト。野村監督が評論家を始めるときに沙知代夫人から紹介を受ける。野村監督の座右の銘である「生涯一捕手」は、沙知代さんとの結婚が問題視され、現役を続けるか辞めるか悩んでいた42歳のとき、「『禅に生涯一書生』という言葉があります。人間は生涯勉強です」という言葉を教えられた。野村監督は気に入り、「生涯一捕手」と当てはめて好んで使うようになった。1977年に南海の監督を解任された後も、「生涯一捕手」という言葉があったから現役を続けられたと語っている。
現役引退後、草柳さんに何を勉強するべきかと聞いた際に、「本をたくさん読み、人間学を学びなさい」と言われたことから、野村監督の読書の習慣は始まった。
野村監督の話は、野球論であっても人間論であり、そこには決してブレない理念がある。草柳さんとの出会いが、野村監督のその後の常勝軍団を作る指導に役立ったことは言うまでもない。