真説 賃貸業界史 第43回「 賃貸仲介の現場を彩る数々のソフト・システム」|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
豆知識

2021.10.18

真説 賃貸業界史 第43回「 賃貸仲介の現場を彩る数々のソフト・システム」

真説 賃貸業界史 第43回「 賃貸仲介の現場を彩る数々のソフト・システム」
累計販売本数3000本を超すヒット商品も

 他の業種と比べてIT化が遅れたと言われる賃貸仲介の現場。もちろん、インターネットが世の中に広がり始めた頃から、アナログ体質の業界に革新をもたらそうと、先進的なITシステムの開発に注力してきたメーカーも少なくない。今回は、賃貸仲介業務支援システムの系譜について辿った。
 賃貸仲介業務の現場で“IT”といえば、真っ先に頭に思い浮かぶのはポータルサイトだ。インターネットで「部屋探し」と入力すれば、「suumo」「LIFULL」「at home」などの大手を筆頭に、数多くのポータルサイトがヒットする。特徴もさまざまで、特定の地域に特化したものや物件の特色を絞ったものなど、見ているだけでもそこそこ楽しむことができる。今や、部屋探しにポータルサイトは不可欠だと言っても過言ではないだろう。そんなポータルサイトが世の中に普及し始めたのは1990年代の後半のこと。消費者が日常的に利用するようになるのは、一般家庭にインターネットが定着してからだが、いずれにせよ、賃貸仲介の現場における最初のIT化の波だった。
 仲介業務でITが利用されるようになったのは、精密製品事業の設計開発などを本業とするリングアンドリンク(埼玉県所沢市)が2002年に「@dream(アットドリーム)」を世に送り出してからだ。なぜ、不動産業界では無名だった同社の製品が世に広まったのか。それは、キャノン傘下でソリューション機器のセールスを手掛けるキャノンシステムアンドサポート(東京都港区)が販売に乗り出したことが大きかったように思われる。もともと他のITソリューションの販売を通じて不動産業界にもコネクションを持っていた同社の力もあり「@dream」は、賃貸仲介業務用のソフトとして高い評価を得ることに成功した。2018年には累計販売本数が3000本を突破。押しも押されぬ、賃貸仲介業務用ソフトの大定番となった。
 「@dream」と比較される賃貸仲介業務用ソフトとして頻繁に名前が挙がるのは、ドリームワン(東京都三鷹市)が2000年に販売を開始した「ドリームX」だ。両者ともホームページを軸にした集客ツールで、さらに製品名も類似していることから、混同してしまう人も少なくないが、実際の中身を見てみると似て非なるものだということが分かる。「@dream」はどちらかといえば従来型のオーソドックスな仕組みのホームページ作成ソフトであるのに対し、「ドリームX」はマーケティングに重きを置いた集客特化型のホームページ作成ソフトだという印象を受ける。「@dream」に比べれば「ドリームX」の導入実績はまだまだ少ないものの、使い勝手に関してはかなり高い評価を得ているようだ。これは、ドリームワンの親会社である賃貸仲介会社アメリカンドリーム(東京都三鷹市)の現場の声が、大いに生かされているためだと考えられる。「ドリームX」は、賃貸仲介会社が作った賃貸仲介会社のためのホームページ作成ソフトだと言えるわけだ。
 業務面のサポートに比重を置いたシステムについても取り上げておく。この分野で圧倒的な知名度を誇るのはミオソフト(大阪市吹田市)の「ミオキューブ」だ。その特徴は何と言っても、カウンターでの店頭接客業務支援を中核システムとしていることだ。“賃貸仲介業務のIT化”といえば、集客のためのポータルサイトやホームページにばかり目が行きがちだが、同社はあえて接客にスポットを当ててシステムを開発した。おそらく同社がシステムをリリースした当時、他に店頭接客をサポートする製品を提供していたシステム会社はなかったのではないだろうか。リリース以降、「ミオキューブ」は進化を続け、今日ではホームページやチラシ類を作成する機能なども搭載されている。まさに唯一無二の存在だと言えるだろう。
 他にも賃貸仲介業務のサポートを目的としたソフトやシステムはさまざま存在する。そちらについてはまた別の機会に取り上げたいと思う。