闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第23回)|対談|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2021.11.15

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第23回)

闘将野村~弱小企業を一流へと導く新経営理論(第23回)
10 中小企業が大企業に勝つための採用とは③

 野村監督がヤクルトスワローズの監督に就任したのは、チームが毎年のようにBクラスに低迷していた時期だ。当時の人気球団と言えばもちろん巨人。わざわざ弱いチームに入団しようと考える即戦力ルーキーなど、いるはずがなかった。それでも野村監督率いるヤクルトは、瞬く間にセ・リーグの頂点へと上り詰めた。そこには、野村監督ならではのチーム育成理論があった。

 景気の良いときであれば、社員教育に先輩社員が付きっきりで、研修施設で1カ月という時代もあった。私のときも1カ月間、無人島での研修があった。
 その後も先輩と同行をしたり、仕事後も先輩の部屋で夜な夜なロープレをしたのを覚えている。
 現在は、以前ほど景気が良いわけではないから、バブルの時のように新人教育にお金をかけられない。また、終身雇用を考えて人を雇う企業も少なくなっていて、中には即戦力でなければ雇用しないという会社もある。しかし、中小企業には、即戦力の人間などなかなか採用できない。でも、当時の野村さんのような無名だが、やる気のある人間なら採用できるかもしれない。
 私は思う。中小企業の採用基準が学習能力であれば、上場企業よりも優秀な人材は採りにくい。それではいつまで経っても、大手には敵わない。
 だが、学習能力は未知数でも、やる気のある人間ならば、少なくとも伸びしろはあるはずだ。弱小球団の監督は、現有戦力で勝てないのであれば、強くなる可能性のある選手に投資するべきなのである。
 対談はすでに3時間近くなろうとしている。監督の目は、力強く遠くを見ていた。