火災保険詐欺で相次ぐ逮捕者|リフォーム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2022.03.07

火災保険詐欺で相次ぐ逮捕者

火災保険詐欺で相次ぐ逮捕者
千葉県、福岡県で悪質リフォーム業者が摘発

 本紙でもたびたび取り上げているように、火災保険の中には、火災だけでなく、台風や豪雨、大雪といった自然災害が原因の自宅破損も補償してくれる商品がある。もちろん、補償範囲が広がればそれだけ保険料も上がるが、各地で大雨や大雪による被害が頻発している昨今の状況を考えれば、補償の範囲が広いに越したことはない。実際、火災保険のおかげで自己負担なしで自宅の破損を修理できたという方も多い。
 ところが最近、これを逆手に取った詐欺行為が全国で横行している。昨年末にも、千葉県船橋市のリフォーム会社がシエルトの社長、大塚伊織容疑者を含む3名が、保険会社から保険金を騙し取ったとして、詐欺の容疑で警視庁に逮捕された。
 報道によると、大塚容疑者らは2018年の秋に、知人が所有する神奈川県内のマンションの屋上の一部を、台風の被害を受けたように装うために故意に破壊した上で、保険金の請求を代行して行ったとされる。その際、台風と無関係の破損部分も同様に「台風によるものだ」と偽って申告し、火災保険会社から約320万円を騙し取った。
 しかも、大塚容疑者らにかけられている容疑はこの一件だけではない。調べによると、容疑者らが不正請求詐欺を始めたのは2018年頃。そこから2019年にかけて、70件で合計約2億円を搾取した疑いがもたれている。
 なぜ、これだけ大胆な犯行にもかかわらず、大塚容疑者らは約4年近くも野放しにされていたのか。その根本的な原因についてある専門家は、

「2000年以降、全国各地で自然災害が多発しています。豪雨、大雪、洪水など、数え上げたらキリがありません。おそらく、この数年の保険金の請求件数は、保険会社の想定を大きく上回っているはずです。それでも本来であれば、保険会社は1件1件、請求に問題がないかを確認しなければなりません。しかし、調査対象が家だけに、時間をかけ過ぎると、加入者の生活に支障が出る恐れがあります。結局、形式的な確認作業しか行うことができず、そこを悪徳業者につけ込まれたのだと思います」

と指摘する。
 一方で、調査員不足を指摘する声もある。中には現場経験が少ないまま、現場に赴いている調査員もいるようだ。別の専門家は、

「被害が自然災害によるものなのか、そうでないのかを素人が見て判断することはほとんど不可能です。結局、リフォーム会社の言うことを鵜呑みにするしかありません。つまり、不正請求しようと思えば、いくらでもできてしまうのが今の仕組みなんです」

と話す。
 また、この問題の根深さは、不正行為を行うのがリフォーム業者だけではない点にもある。それこそ、家の所有者が業者とグルになって詐欺行為を働くことも不可能ではない。騙し取った保険金を業者と山分けということもできるはずだ。実際、そういった行為を指南する悪質な情報サイトもネット上には存在する。
 頻発する火災保険詐欺。今年1月にも、福岡県で総額1億6000万円を騙し取った容疑で、リフォーム業者と自宅を提供した会社員が逮捕された。リフォーム業界の健全化のためにも、こうした悪質業者が一刻も早く駆逐されることを願うばかりだ。