燃料価格、ウクライナ侵攻で一般家庭の電気代も値上がりか?|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2022.05.02

燃料価格、ウクライナ侵攻で一般家庭の電気代も値上がりか?

燃料価格、ウクライナ侵攻で一般家庭の電気代も値上がりか?
「事業をやめることになった」と電力会社から突然の連絡

 3月中旬、福岡市内のある管理会社から、本紙編集記者に次のような電話が入った。

「電気の契約をしていたホープエナジーから『事業を停止することになったので、御社の管理物件の入居者に電力会社を変更するよう案内して下さい』という通達が来た。『電気代が安くなる』ということで入居者に勧めていたのに、まさかこんなことになるなんて・・・。そちらには何か情報が入っていませんか?」

 コメントに出てくるとホープエナジーとは、東証マザーズに上場するホープ(福岡市中央区)の子会社で、新電力事業を手掛ける会社だ。3月28日、約300億円もの負債を背負って経営破綻した
 実は電力業界では、一昨年末から大変なことが起こっている。新電力と呼ばれる、2016年の電力自由化を機に電力小売に参入した事業者たちを取り巻く環境が悪化し、経営危機に陥る企業が続出しているのだ。最近になってメディアでも盛んに報道されるようになったため、ご存知の方も多いのではないだろうか。今を遡ること1年前の3月には、当時業界最大手といわれていたF-Power(東京都港区)が約243億円の負債を背負って会社更生法を適用した。また、同年12月には、電力ベンチャーのパネイル(東京都中央区)傘下にあった東日本電力(東京都中央区)や西日本電力(東京都渋谷区)など7社も揃って倒産した。一部報道で昨年1月から3月の間だけで、新電力15社が事業から撤退したとされる。さらに今年になっても状況は改善せず、前述のホープエナジーだけでなく、エルピオでんき(千葉県市川市)も4月末をもって事業を停止した。
 一体、新電力会社の周りで何が起きているのか。経済産業省は「寒波の到来による電力需要のひっ迫、および火力発電所の燃料となるLNGの不足により、電力の市場価格が高騰したため」というコメントを発表している。
 実は、新電力で自前の発電設備を持っているのは一部の事業者に限られ、ほとんどは発電設備をもつ別の事業者や電力の取引所であるJEPXを通じて電気を購入し、契約先である一般家庭や法人などに届けている。購入価格は常に一定ではなく、電力需要や燃料の仕入れ原価、消費量によって変動する。基本的に消費量が増える夏や冬は、価格が高騰する傾向にあるといわれている。今回の危機は、まさにこれが引き金になったようだ。
 その証拠に、電力卸売価格は2020年の冬から上昇の一途を辿っている。当初は断続的な寒波による電力需要の大幅な増加や、液化天然ガスの在庫不足による価格高騰及びLNG火力の稼働抑制が主な原因だったため、電力消費が落ち着く春辺りには、価格上昇に歯止めがかかるのではないかといわれていた。しかし、予想に反して価格は一向に落ち着く気配を見せず、そのまま冬を迎えてしまった。しかも今冬も寒波で電力需要が急激に増え、価格は高騰。昨年11月のスポット平均価格は、JEPXで取引が始まった2005年以降の最高額を更新し、1年前の約3.3倍となる1kWhあたり18.5円の値を付けた。
 ここまでなら、昨年の状況とそれほど変わらないように見える。もしかしたら、

「前回の教訓が生かされていないことに問題があるのではないか」

という意見も出てくるかもしれない。しかし、今回はここにロシアによるウクライナ侵攻が加わった。これにより天然ガスの価格はさらに急騰し、電力の調達コストもさらに上がる可能性が高まった。しかも戦争終結の兆しはまったく見えない。このような状況では、さすがに「事業の継続が不可能だ」と判断する新電力が出てくるのは仕方のないことだといえる。
 だが一方で、この状況について「自業自得だ」とする声も少なくない。電力小売り自由化が始まった2016年4月以降、事業に参入する企業は年々増え続けてきた。当然、プレイヤーの数が増えれば増えるほど、価格競争も熾烈になる。電力の調達コストが急騰する中、逆ザヤ覚悟で契約獲得に動いていた事業者もかなりいたはずだ。いうまでもなく、過度な価格競争の末の採算度外視の事業に将来はない。待っているのは経営破綻だけだ。昨年から続く新電力事業の倒産劇は、起こるべくして起こったものだという見方もできる。
 新電力を取り巻く環境がいつ改善に向かうのかは分からない。状況いかんでは、今後も新電力の経営破綻が続く可能性がある。消費者としてもっとも恐れるのは、電気代の値上がりだろう。法人関係では、この点がすでに大きな問題となっている。安心・快適な暮らしを続けるためにも、今のうちのご契約されている電力会社を見直してみてはいかがだろうか。電気に関するご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。