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2022.07.04

やり過ぎた節税に国税局が「待った!」

やり過ぎた節税に国税局が「待った!」
タワマン裁判で相続人の敗訴が決定!!!

「億単位で節税ができると聞いたから金融機関で多額の借入までしてタワーマンションを買ったのに・・・。これじゃ節税どころか、高い相続税を支払わされる羽目になるかもしれない。一体どうすればいいんだ・・・」

 節税目的でタワーマンションを購入した投資家たちは今頃、戦々恐々としているのではないだろうか?4月19日、約3億円の追徴課税を課された相続人が国税局を相手取って起こした通称「タワマン裁判」で、最高裁は相続人側の上告を却下し、国税側の勝訴が確定した。これによりタワーマンションを利用した節税に、一定の制約が設けられることになった。高い人気を誇ってきたタワーマンションだが、今後の販売に影響が出ることは必至だ。
 そもそも「タワーマンション節税」とはどんな仕組みの節税方法なのか?一般的にマンションは低層階よりも高層階の方が、眺望が良い点などが付加価値となり高値で取引される。タワーマンションのようであれば低層階と高層階では販売価格にかなりの差がある。高層階が低層階の4倍、5倍するというケースも珍しくない。
 一方で相続税評価は、土地と建物の両面から評価される。土地は「路線価方式」ないし、路線価が定められていない土地については固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する「倍率方式」で、建物は固定資産税評価額をベースに評価される。このときマンションは、階数等は一切考慮されず、全戸等しく同じ価値のものとして評価される。実際の販売価格は部屋ごとに異なるにもかかわらず、高層階であっても低層階であっても、相続税や固定資産税は同じなのだ。つまり高層階の住戸ほど、税金が安く済むわけだ。この購入価額(時価)と、相続税評価額とのギャップを利用するのは、タワーマンション節税の大まかな仕組みだ。しかも、住宅として利用していた場合は、相続時に小規模宅地等の特例を利用し、最大80%の減額の適用を受けることができ、さらに節税効果が高まる。
 「タワマン裁判」の原告は3年前に、亡くなった父親が2009年に金融機関から借り入れした約10億円を含む計13億8700万円で購入したマンション2棟を相続。その際にこの仕組みを利用した。建物については路線価を、土地については固定資産税評価額を基にして評価額を算出。結果は約3億3000万円となり、購入時の借入金と相殺し、相続税を0円と申告した。しかしこれを国税局は見逃さなかった。
 なぜ、通常通りの評価法で相続税を申告したにもかかわらず、国税局は待ったをかけたのか?ポイントとなったのは、国税庁が例外規定として定めている「路線価と実勢価格が大きく乖離している場合、独自に再評価できる」という項目だ。これに基づき国税局が不動産価格の再評価を行ったところ、約12億7300万円という結果が出た。改めて言うまでもなく、原告が当初算出した3億3000万円という評価とはかけ離れている。結果、国税局は過少申告加算税を含め、約3億3000万円を追徴課税した。
 当然原告はこれに納得するはずがなかった。更正処分を不服として国税局を相手取り裁判を起こした。しかし、2019年8月の第1審、2020年6月の2審ともに国税局側が勝訴。相続人側は最高裁に上告したものの、今回も国税側が勝訴する結果となった。
 今回、一貫して相続人側が敗訴し続けた要因は何だったのか?相続税に詳しい専門家は、「タワーマンションを購入した際に金融機関から調達した借入金が節税を主な目的としていた」こと、さらに「十分な資産を相続したにもかかわらず、相続税を0円で申告した」ことが裁判官に対して相当悪い印象を与えたのではないかと分析する。実際、判決は5名の裁判官全一致の結論だったという。
 現在、「タワマン節税」に対しては国も本腰を入れて対策に乗り出している。段階的に行われてきた税制変更はもちろん、今回、相続人に対して行われた更正処分も、その一環だったと考えられる。そもそも一部の資産家だけが節税できる方法を、国がいつまでも放置しておくはずがない。しかも、その金額が億を超える場合があるとなるとなおさらだ。「資産家による必要以上の節税は認めない」という国あるいは国税庁の覚悟が感じられる一件だったと言えよう。